薔薇の溺愛~黒き吸血鬼は愛に沈む~

天岸 あおい

文字の大きさ
12 / 82
一章 捕らわれた吸血鬼

早朝の来訪者

しおりを挟む
   ◇ ◇ ◇

「――だから、お前のやり方はぬるい――部屋へ入れさせろ――」

「駄目です――せめて、次の夜に――」

「そんな甘いこと――今すぐ会わせろ――」

 やけに騒々しい声が聞こえてきて、俺の意識が無理やり叩き起こされる。

 外がうっすらと白ばんでいる。早朝だ。
 人ならば朝の早くから現れる乱入者は困りものだろう。魔の者でもこの時間は眠りにつく時間。どちらにとってもこの時間の来訪者は、非常識で迷惑極まりない。

 どうやら誰かが俺に会いたがっているらしい。
 ミカルが頑張って食い止めようとしているが、来訪者の声は勢いが増すばかりで、扉を蹴破られるのも時間の問題だ。

 俺を翻弄するミカルが苦しむのは大いに構わないが、部屋の扉を失うことになっては、昼間に身動きが取りにくくなってしまう。

 仕方なく俺は起き上がり、寝台を抜けて扉の前へと立つ。

「こんな時間に騒がしいな。うるさくてかなわんから、さっさと要件を済ませて帰ってもらえ」

 なるべく声を大きくして伝えると、扉を挟んで向こう側の音が一瞬止む。

「まだ起きていたのですか、カナイ?」

「いいや、寝ていた。うるさくて品の無い声に起こされた」

 まだ顔も分からぬ無粋な相手に嫌味を込めて告げれば、わざとらしく「フンッ」と鼻を鳴らしてくる。

 少なくともミカルのような好意的な気配はない。
 むしろこれが普通だ。扉が開いた直後に襲われそうな気がして、俺は後ろへ下がって扉から距離を取る。

 ギィィ、と扉が開く。

 現れたのは疲れた様子のミカルと、背が大きい赤毛の男だった。
 厳つい顔立ちに、いくつか派手にやられて残ったであろう傷痕。退魔師の衣装をまとっているが、ごつい胸板や二の腕は戦士のものだ。術よりも素手で殴りつけたほうが手っ取り早そうな、力重視の面倒そうな奴――顔は見たことがある。名前は確か……。

「……ビクトル、だったな? 覚えがあるぞ」

 完全に扉が開き切った直後は、苛立ちをそのままにした険しい表情だったが、俺が名を呼んだ途端に勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

「ほう。俺のことを知っていたか。光栄だな」

「悪目立ちしているからな。お前の力は厄介ではあるが、単独で勝手に動いてくれるから俺としては扱いやすい。罠に誘導すれば素直にかかってくれるしな」

「フンッ、わざとに決まっているだろうが。お前らの攻撃など俺には効かんが、他の連中には効いてしまうからな。ひ弱なアイツらが被害に遭う前に、俺が潰しているだけだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜

中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」 仕事終わりの静かな執務室。 差し入れの食事と、ポーションの瓶。 信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、 ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

処理中です...