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二章 駆け引き
必死に堪えながら
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◇ ◇ ◇
紅茶の香りに今日も目覚めを促される。
昨日のものよりも甘い香りだ。もしかすると乾燥させた果実が入っているのかもしれない。
今の俺に甘い匂いを好ましいと思う余裕はない。
むしろ関係を作れと強要され、無理に背中を押されている気がして胸やけする。
まぶたを開ければミカルの姿を見ることになる。
できれば俺の視界に入れたくない――そんなワガママが通らないことは、百も承知だが。
ゆっくりと上体を起こして俺は目を開く。
視線の先にはテーブルと、紅茶の湯気が立ち昇るティーカップ。
なぜか紅茶を淹れた張本人の姿が見当たらない。
思わず目を瞬かせていると、
「おはようございます、カナイ。よく眠れましたか?」
真横からミカルの声がして、俺の肩が大きく跳ねる。
勢いよく隣へ振り向けば、いつの間にか俺の枕元へ腰かけたミカルが微笑みを浮かべていた。
「……っ」
気配にまったく気づかなかった。完全に虚を突かれ、俺は息を引いて顔を強張らせていまう。
なんとも情けない反応を晒した俺へミカルは手を伸ばし、頬へ触れてくる。
「顔色が悪いですね。大丈夫ですか?」
微笑が消え、ミカルに心配そうな色合いが滲む。
一気に俺の背筋がゾワゾワと悪寒が広がる。触るな、と手を払いたいところだが、クウェルク様の指示を思い出してどうにか堪えた。
「……問題ない。まだ寝起きで体がしっかりと起きていないだけだ」
「それなら良いのですが……でも本当に具合が悪いなら、いつでも言って下さい。貴方を苦しめたくない」
ミカルの語尾が強い。どうやら本気でそう考えているらしい。
この男の考えがよく分からない。私を容赦なく追い詰めて捕らえておきながら、扱いはやけに優しい。
ああ、落ち着かなくて今すぐここから消えてしまいたくなる。
逃げの姿勢を取りたがる己の情けなさを自覚しながら、俺はゆっくりとミカルの手を取る。
「腹が空いた。先に血をもらう」
「分かりましたカナイ、どうぞお好きなだけ……」
襟を緩めて首筋を露わにすると、ミカルは身を乗り出して俺に差し出す。
瑞々しい白い肌。俺の体を蝕むものが混ざっていると分かっていても、その下に流れるものを口にしたくてたまらない。
俺は顔を近づけ、ミカルの首筋に歯を立てる。
とろり、と溢れた熱をすすれば、もう吸血鬼の本能を止められなかった。
この体は人と違い、胃を満たせば腹が膨れる訳ではない。
頭の奥底――喉の底にも近いところが、どうしようもなく飢える。それを鎮めたくて血を啜っていく。
だが、今はこれだけが目的ではない。
血を吸われている人間は、濃密な快楽に酔いしれる。
ここへさらなる快感を与えれば、人相手では味わえないものに抗えず、行為へ溺れていく。
俺は自ら体を寄せ、ミカルの太腿へと手を伸ばす。
そっとひと撫ですれば、その身が小さく跳ねた。
紅茶の香りに今日も目覚めを促される。
昨日のものよりも甘い香りだ。もしかすると乾燥させた果実が入っているのかもしれない。
今の俺に甘い匂いを好ましいと思う余裕はない。
むしろ関係を作れと強要され、無理に背中を押されている気がして胸やけする。
まぶたを開ければミカルの姿を見ることになる。
できれば俺の視界に入れたくない――そんなワガママが通らないことは、百も承知だが。
ゆっくりと上体を起こして俺は目を開く。
視線の先にはテーブルと、紅茶の湯気が立ち昇るティーカップ。
なぜか紅茶を淹れた張本人の姿が見当たらない。
思わず目を瞬かせていると、
「おはようございます、カナイ。よく眠れましたか?」
真横からミカルの声がして、俺の肩が大きく跳ねる。
勢いよく隣へ振り向けば、いつの間にか俺の枕元へ腰かけたミカルが微笑みを浮かべていた。
「……っ」
気配にまったく気づかなかった。完全に虚を突かれ、俺は息を引いて顔を強張らせていまう。
なんとも情けない反応を晒した俺へミカルは手を伸ばし、頬へ触れてくる。
「顔色が悪いですね。大丈夫ですか?」
微笑が消え、ミカルに心配そうな色合いが滲む。
一気に俺の背筋がゾワゾワと悪寒が広がる。触るな、と手を払いたいところだが、クウェルク様の指示を思い出してどうにか堪えた。
「……問題ない。まだ寝起きで体がしっかりと起きていないだけだ」
「それなら良いのですが……でも本当に具合が悪いなら、いつでも言って下さい。貴方を苦しめたくない」
ミカルの語尾が強い。どうやら本気でそう考えているらしい。
この男の考えがよく分からない。私を容赦なく追い詰めて捕らえておきながら、扱いはやけに優しい。
ああ、落ち着かなくて今すぐここから消えてしまいたくなる。
逃げの姿勢を取りたがる己の情けなさを自覚しながら、俺はゆっくりとミカルの手を取る。
「腹が空いた。先に血をもらう」
「分かりましたカナイ、どうぞお好きなだけ……」
襟を緩めて首筋を露わにすると、ミカルは身を乗り出して俺に差し出す。
瑞々しい白い肌。俺の体を蝕むものが混ざっていると分かっていても、その下に流れるものを口にしたくてたまらない。
俺は顔を近づけ、ミカルの首筋に歯を立てる。
とろり、と溢れた熱をすすれば、もう吸血鬼の本能を止められなかった。
この体は人と違い、胃を満たせば腹が膨れる訳ではない。
頭の奥底――喉の底にも近いところが、どうしようもなく飢える。それを鎮めたくて血を啜っていく。
だが、今はこれだけが目的ではない。
血を吸われている人間は、濃密な快楽に酔いしれる。
ここへさらなる快感を与えれば、人相手では味わえないものに抗えず、行為へ溺れていく。
俺は自ら体を寄せ、ミカルの太腿へと手を伸ばす。
そっとひと撫ですれば、その身が小さく跳ねた。
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