薔薇の溺愛~黒き吸血鬼は愛に沈む~

天岸 あおい

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二章 駆け引き

協会の内情

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 カチャリ、と。ミカルがきれいに飲み干し終えたカップを皿へ置く。
 話し疲れたのか小さく息をつく。それから襟元を緩めて喉元を露わにした。

「話の途中ですが、お預けを食らい続けるのは面白くないでしょう。どうぞ、この血で飢えを満たして下さい。吸われながらでも話はできますから」

 大抵の者はあまりの快楽に脱力し、気絶するものなのだが……。
 吸血鬼に血を吸われても、意識を保ちながら会話できるというのが異常すぎる。

 しかし、確かにこの男は血を吸われながら俺と会話している。
 生半可な精神力ではない――だが裏を返せば、それだけ無理をしているということ。隙が生まれて、言う気がないことも思わず漏らしてしまうかもしれない。

 ミカルがそれを望んでいるのだ。もし余計なことを口走ったとしても、それはコイツの落ち度。俺は使える機会は使わせてもらう。馬鹿にするなと突っぱねられるほど、俺には選べる手段がないのだから。

「いいだろう。言った以上は話を続けろよ? お前の狙いが退魔師を無くすことなら、それを面白く思わない者も少なからずいるだろう。どうなのだ?」

 尋ねながら牙を刺せば、ミカルの体が一瞬硬直する。そして物憂げな息をついた後、さっきよりも鈍い声で話を続ける。

「当然、おりますよ。むしろそんな者が多数ですから……。

 未だに魔の者のせいにして、悪事を働く者もいれば、純粋に魔の者を憎み、根絶したいと願う者もいて、こちらは一枚岩ではないですね。今は私の力で押さえつけていますが、いつ私を厄介払いするか……気が抜けませんよ。

 本当のことを言うと、いっそ魔の者と手を組んで、ともに協会を壊してしまいたいほどなんです。
 人と同様に、魔の者にも色々な者がいることは知っています。人を憎んで復讐したがる者もいれば、困っている人間を助けようとする者もいる……できればそんな方と、協力できたら……。

 カナイは知りませんか? そんな考えを持つ、力ある魔の者を……」

 ミカルの問いかけに俺は即答できなかった。

 俺が知る限り、クウェルク様は人を進んで困らせようとはしない。ただし積極的に助けようともしない。

 おそらく人を助けようとする者というのは、魔の者になったばかりの者だろう。
 まだ自分が人だという感覚が残っているから、見過ごすことができない。だが時が経ち、己が魔の者であることを自覚し、人からの理不尽な扱いが積み重なっていくと、大半の者は諦めていく。理解し合えない現実を突きつけられて――俺も昔はそうだった。

 そしてこの問いかけ自体が、ミカルの罠だという可能性もある。
 安易に魔の者の誰かの名を口にすることなどできなかった。
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