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三章 バラの香に囚われて
何をしても喜ばせる
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勝っても負けても、一晩俺に目を向けさせるという目的は果たせる。
できればコイツに勝って、この身を明け渡す事態は避けたいところだが……。
口を開きミカルの首筋へと食らいつく。
少しでも時間を稼ぐため、俺は味わう素振りを見せながら、ゆっくりと血を吸い出していく。
相変わらずバラの香りを含んだ血。舌の上へ乗せて軽く転がせば、その風味に頭が痛みを覚えてしまう。だが吐き出したいほどではなくなった。
次第に覚えていく脱力感は、激しく動いた後に訪れる気だるさに似ていて、気を抜くと息をつきたくなってしまう。入浴した直後に息を吐きたくなるのと同じだ。
まるでそれはミカルの血に気を許しているようで、やってしまわぬよう堪えている。もし一度でもやらかせば、私が気を許したとこの男に勘違いさせてしまう。
どうしても息を吐きたくなって、私は小さくささやかに鼻で息をつく。そうやって誤魔化しながら血を吸い続けていると、ミカルの腕が私の背へ回された。
「ふふ……貴方が手に入るかもしれないと思うと、どうしても頭が浮かれそうになりますね。ずっと夢見ていましたから」
「いつからだ? 俺に懸想していたのは」
「初めて貴方とお会いした時、ですね。一瞬で心を奪われてしまいました」
……分からない。どう考えても一目見て欲情を覚える顔ではないだろう、俺は。
呆れからのため息は別物だ。一度口を離して大きく息を吐き出していると、
「神秘的な黒髪に、強い意志を宿した黒曜の瞳。華のある顔ではないかもしれませんが、涼しげで潔さを感じさせる顔立ち……十分に魅力的ですよ、貴方は」
人の横顔を覗き込んだかと思えば、すかさず頬へキスを刻んでくる。
手が自由でさえれば、瞬時に殴り飛ばしてやるものを……。
じろり、とミカルを睨んで牽制してから俺は再び血を吸う。貧血にでもなってしまえと思いながら、いつもより多く吸ってやった。
ミカルが小さく「ぅ……」と苦しげに唸る。それでも怒るどころか、嬉しげに一笑を溢す。
「そうやって我慢せず、私に苛立ちをぶつけて下さると……少しは心を許してくれている感じがして良いですね」
何をしてもおかしな方向に取られてしまう。何もしなければ隙が作れない。
結局は何かしてやらないと気が済まなくて、俺はミカルの手に己の手を重ねて爪を立てる。
俺からの反応に、ミカルは喜びを噛み締めたような息をつく。
「そろそろ終わりましょうか……今すぐ準備しますから、待っていて下さいね」
俺の手をやんわりと掴み、引っ掻いた爪を宥めるようにミカルが口づけた。
「逃がしませんから、絶対に」
不敵に笑いながら俺を見つめるミカルの目はひどく真剣だ。
腰の奥がぞわりと疼いて、思わず目を逸らしかける。
だが、これでいい。俺に夢中になればなるだけ、クウェルク様から目を逸らせることができる。
俺は敢えて視線を合わせ、フン、と鼻で笑ってやった。
できればコイツに勝って、この身を明け渡す事態は避けたいところだが……。
口を開きミカルの首筋へと食らいつく。
少しでも時間を稼ぐため、俺は味わう素振りを見せながら、ゆっくりと血を吸い出していく。
相変わらずバラの香りを含んだ血。舌の上へ乗せて軽く転がせば、その風味に頭が痛みを覚えてしまう。だが吐き出したいほどではなくなった。
次第に覚えていく脱力感は、激しく動いた後に訪れる気だるさに似ていて、気を抜くと息をつきたくなってしまう。入浴した直後に息を吐きたくなるのと同じだ。
まるでそれはミカルの血に気を許しているようで、やってしまわぬよう堪えている。もし一度でもやらかせば、私が気を許したとこの男に勘違いさせてしまう。
どうしても息を吐きたくなって、私は小さくささやかに鼻で息をつく。そうやって誤魔化しながら血を吸い続けていると、ミカルの腕が私の背へ回された。
「ふふ……貴方が手に入るかもしれないと思うと、どうしても頭が浮かれそうになりますね。ずっと夢見ていましたから」
「いつからだ? 俺に懸想していたのは」
「初めて貴方とお会いした時、ですね。一瞬で心を奪われてしまいました」
……分からない。どう考えても一目見て欲情を覚える顔ではないだろう、俺は。
呆れからのため息は別物だ。一度口を離して大きく息を吐き出していると、
「神秘的な黒髪に、強い意志を宿した黒曜の瞳。華のある顔ではないかもしれませんが、涼しげで潔さを感じさせる顔立ち……十分に魅力的ですよ、貴方は」
人の横顔を覗き込んだかと思えば、すかさず頬へキスを刻んでくる。
手が自由でさえれば、瞬時に殴り飛ばしてやるものを……。
じろり、とミカルを睨んで牽制してから俺は再び血を吸う。貧血にでもなってしまえと思いながら、いつもより多く吸ってやった。
ミカルが小さく「ぅ……」と苦しげに唸る。それでも怒るどころか、嬉しげに一笑を溢す。
「そうやって我慢せず、私に苛立ちをぶつけて下さると……少しは心を許してくれている感じがして良いですね」
何をしてもおかしな方向に取られてしまう。何もしなければ隙が作れない。
結局は何かしてやらないと気が済まなくて、俺はミカルの手に己の手を重ねて爪を立てる。
俺からの反応に、ミカルは喜びを噛み締めたような息をつく。
「そろそろ終わりましょうか……今すぐ準備しますから、待っていて下さいね」
俺の手をやんわりと掴み、引っ掻いた爪を宥めるようにミカルが口づけた。
「逃がしませんから、絶対に」
不敵に笑いながら俺を見つめるミカルの目はひどく真剣だ。
腰の奥がぞわりと疼いて、思わず目を逸らしかける。
だが、これでいい。俺に夢中になればなるだけ、クウェルク様から目を逸らせることができる。
俺は敢えて視線を合わせ、フン、と鼻で笑ってやった。
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