薔薇の溺愛~黒き吸血鬼は愛に沈む~

天岸 あおい

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三章 バラの香に囚われて

●愛のある行為

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 先端のくびれに指を引っかけながら、ミカルが的確に俺を追い詰めてくる。

 この男の手で達するなんて……と思うのに、快感はどこまでも膨れ上がり、生々しい手の感触と体温を確実に覚えていく。

 ただ楽になりたい。そう思った刹那、理性では絶対に逆らえぬ衝動が込み上げてきた。

「……ぅ……ぁ……っ……ン……ッ……」

 ミカルの手で俺の昂りが、淫らに弾ける。
 思わず息を詰めて体を強張らせた後、目を固く閉じた俺自身の息遣いがやけに大きく聞こえた。

 乱れた息を必死に整えながら薄くまぶたを開いてみれば、ミカルは目を蕩かせて俺のぐったりした姿を眺めていた。

「ありがとうございます。私に身を委ねてくれて……次は一緒に……」

 頭が軽く朦朧となる俺の回復を待たずに、ミカルの手が乱れた穿き物を下穿きごと脱がしにかかる。正気に戻る前に攻めてしまおうという狙いが、嫌というほど伝わってくる。

 完全に力の抜けた体を立て直すことなど、もうできない。
 後孔へミカルの手が触れてきたと分かっても、反応できずに秘所へ指が埋まるのを待つ。

 くに、くに、と状態を確かめると、ミカルは黒い穿き物のポケットから小さな瓶を取り出す。そして蓋を開けて白濁の軟膏を指ですくい取ると、再び俺の後孔へ触れ、塗り込んできた。

「ぁ……っ……ぅぅ……」

「風呂でも解しましたが、もう少し念入りにしておきますね。痛みをできる限り与えたくありませんから」

 言いながらミカルは指を蠢かせながら、中程へと沈めていく。
 指の腹が何度も突き上げるように俺の中を押し、決まった律動を繰り返す。今の俺の心音に近い速さ。次第にムズムズとした疼きが生まれ、腰の奥が溶けていくのを感じてしまう。

 駆け引きなく、やだ、やめろ、と言えるなら、どれだけ心が救われるだろうか。
 拒絶の言葉を口に出しても、結局は最後まで抱かれてしまうことには変わりはない。

 それでも口に出せたなら、心を削られることを多少は軽減できる。
 だが今は言えない。口に出して興が醒めたと、俺から目を離すような事態は避けたい。

 結果、俺は最小限に喘いで快感を享受するしかなかった。

「アッ……ぁ……くぅ……」

「中も、しっかり感じているようですね……カナイ、嬉しいです……」

 ミカルが首を伸ばして俺の唇を深く奪い、中の指と同じように口内を舌で弄る。
 グチュ、グチャ、と絡み合う音が上からなのか、下からなのか、分からなくなっていく。

 こんなに人の反応を見ながら、丁寧に解されたことはない。
 奴隷だった時は無理やり捻じ込まれ、気持ち良さの欠片もなかった。

 吸血鬼となってからは、数えるほどしか関係を持っていない――先代の吸血鬼の王と何度か交わったことはある。同胞にされる前は吸血の快楽で激しく乱れたが、同じ体になった後はむしろ淡白で呆気なかった。

 よくよく思い返してみれば、しっかり愛を与えられる目的で抱かれるのは初めてだ。
 俺の心は一切この男へ向いていないはずなのに、ミカルからの刺激は快楽に紛れて送られてくる想いに揺れてしまう。
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