薔薇の溺愛~黒き吸血鬼は愛に沈む~

天岸 あおい

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三章 バラの香に囚われて

援軍

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「クク……できれば目を閉じて、耳を塞いで、俺の見苦しい姿を見ないで欲しい。頼む」

 俺の願いにククは体を横たえたまま、涙目でコクコクと頷く。だが、

「ちゃんと見てもらわないと困るなあ。俺たちに逆らったらどうなるか……おい、目を閉じるなよガキ。お前らの王がどれだけいやらしい生き物か、しっかり見てやれ」

 見逃すどころか、さらなる羞恥を与えようとしてくる退魔師たちに、怒りで俺の頭の中が焼き切れそうだ。

 心の中で憎悪と嫌悪をぶつけるが、何も気づかず彼らは嘲笑を浮かべるばかり。
 そして俺の下半身を陣取ったままの若い退魔師が、俺の腰へと手をかけ、衣服を脱がしにかかる。

 ずり……と下半身の肌が露わになりかけたその時――。

 ――バンッ!
 荒々しく扉が開く音がした。

 一斉に退魔師たちが振り返り、その姿を見た瞬間。
 彼らの喉や胸から血が飛び散り、呆気なく倒れていく。

 血の香りに混じって鼻へ伝わる、よく馴染んだ匂い。
 姿を視界に入れるよりも前に、俺は窮地を救ってくれた者の正体に気づいた。

「ヒューゴ……!」

「カナイ様! お待たせして申し訳ありません……っ」

 早急にククを抱き起して無事を確かめた後、ヒューゴが俺の元へと駆け付ける。

 何十年も離れずに苦楽を共にしてきた、この世の誰よりも俺のことを見知ってきた人狼の僕。
 ひと月ほど会わなかったせいで、いつになくヒューゴの顔が新鮮に思えてならない。

 ヒューゴは俺に触れようと手を伸ばす。だが俺の衣服に指先がついただけで、バチィッ、と小さな雷が生まれたかのような音と痺れが走る。

 ついさっきククを起こした時にはならなかった現象。それだけ俺へ念入りに術を施していたという証だ。
 忌々しげに舌打ちし、自らが傷つくのを恐れずにヒューゴは俺の結界石を外そうとする。慌てて俺は首を横に振った。

「慌てるな……っ、これには外し方がある。結界石の中で色が違う石を砕けば、それで解除できるはずだ」

 俺の話に一瞬ヒューゴは目を丸くした後、すぐ行動に移してくれる。
 先に手首を封じる結界石を壊し、その次に両足首も自由にしてくれ、俺はどうにか体を起こした。

「助かったヒューゴ……ありがとう」

「もったいないお言葉……もっと俺が強ければ、貴方をこんな目に合わせず済んだのに」

 苦々しい口調で顔を悔しげにしかめながら、ヒューゴが俺の背へ手を置いてくる。
 特に他意のない触れ合い。しかし薬を飲まされ、体の感覚を狂わさされた俺には淫らな刺激だった。

「……ッ」

「カナイ様? まさか、何かされたのですか?」
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