清純Domの献身~純潔は狂犬Subに貪られて~

天岸 あおい

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清純Domはすべてを捧げる

契約

 ――楽にしてあげたい。

 またどうしようもなく強い衝動に突き動かされ、僕は彼の顔を覗き込みながら告げる。

「僕にできることはありませんか? ここまで逃げ切った貴方を、どうすれば幸せにできますか?」

 自分でも不自然に入れ込んでいるのは分かっている。でも抑えられない。

 何をしてでも彼を救いたい。
 そして幸せを教えてあげたい。
 もし僕にそれを許してくれるなら、何をされても構わない。

 様子がおかしくなっている僕を、アグーガルさんはじっと見つめる。

 しばらくして、ボソリと呟いた。

「……契約……」

「え……?」

「俺と、契約しろ……」

「契約って、どういう……」

「お前はDom、俺はSub……契約をすれば、お前は俺を使役する義務と褒美を与える義務が生まれる。そして俺はお前からの行為を受け入れる義務が発生する」

 使役、褒美……対等とは言えない単語が並び、僕は思わず首を横に振る。

「そんな扱い、僕には――」

「俺の本能がそれを求めている。どれだけ嫌でも、その本能を紛らわせないと最悪俺は死ぬ。俺を幸せにしたいなら、俺を背負え」

 本当は嫌なのに、それをしないと生きられない。
 こんな本能が存在するなんてと頭では嘆くのに、胸の奥から別の感情が滲み出てくる。

 彼のすべてを得られるという悦びが。

 ゴクリ、と大きく唾を飲み込んでから僕は口を開いた。

「どうすれば契約できますか?」

「簡単だ。確認し合った後、お前が俺に首輪を付けさせればいい。Domのお前は俺に命令し、実行した俺を褒め認め、褒美を与えろ。だが俺が『馬鹿が』と言ったら命令を中断しろ」

「わ、分かりました」

「まあ俺は従わされる行為は嫌だ。他愛のないお願いなら聞いてやらんこともないが、抑えつけようとはするな」

「もちろんです。そんな酷いこと、したくありません」

 僕の声を聞いてアグーガルさんが目を点にする。そしてニヤリと笑った。

「だが俺は、お前を従わせるがな」

「え……?」

「俺が望んだ時、お前はいつであっても従え……それが俺への褒美だ」

「分かりました。仕事があるので、それを考慮してくれるなら……」

「フン、金は必要だからな。受け入れてやる。じゃあ契約の証を……首輪を寄こせ」

 アグーガルさんに手を差し出され、僕は首を横に振る。

「首輪は勘弁して下さい。せめて別の物を……」

 僕は慌ただしく立ち上がり、クローゼットの隅に置いてある小箱の中から金の細い鎖を取り出す。

 光沢が眩い金のコインを飾りにぶら下げた首飾り。
 僕が学生の頃、修学旅行のお土産に母へ贈ったものだった。

「これを首輪代わりにできませんか?」

「良いだろう。さあ、その手で俺にかけろ。それで契約成立だ」

 言われるままに僕は手を伸ばし、首飾りをアグーガルさんに着ける。

 留め具をかけた瞬間、彼の目がやけに歓喜で色めいたように見えた。
 Domに何かされるのをあれだけ嫌がっていたのに――。
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