清純Domの献身~純潔は狂犬Subに貪られて~

天岸 あおい

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清純Domはすべてを捧げる

初めての命令

「さあ、俺に何か命じろ」

 顔を間近にしたままアグーガルさんが告げる。

 命じるなんて、どうすれば……従わせるのは嫌で、お願いなら受け入れる……じゃあ――。

「あの、僕の名前を呼んでくれますか?」

「……その程度でいいのか、守流」

 ちゃんと覚えてくれていたんだ!
 思わず僕は破願する。

「ありがとうございます、アグーガルさん! 別世界の名前なんて馴染みがないはずなのに、一回聞いて覚えられるなんてすごいです!」

「名前だけでここまで褒めるのか……調子が狂うな」

「少しも興味のない人の名前は頭に入りませんから。だから嬉しいです、アグーガルさん」

「……アグでいい」

「分かりました、アグ……えっと、こんな感じで褒めればいいんですか? 命令は慣れないですけど褒めるのは好きですから。僕も嬉しくなりますしね」

 笑いながら僕は思う。

 これからアグを好きなだけ褒めてもいいんだ。
 それがアグの幸せになるんだと思うだけで、頭の中がフワフワと浮かんでしまう。

 もし僕にも尻尾がついていたなら、嬉しさが抑えられなくて大きく振り回していると思う。

 妙に浮かれてしまう僕を見つめながら、アグは小さく舌なめずりをする。

「あとは俺をこの世界に合うよう躾けてくれ。駄目なものは駄目と言えばいい。そのほうが俺も助かるし、満足もできる」

「躾……言い方が引っかかるけれど、楽しく過ごせるように教えさせてもらいますね」

「俺が言うことを聞いた後は、褒めるのと同時に褒美も必要になる。さっき聞いた分、もらうぞ」

「良いですけど、何が欲しいですか? 高価なものじゃなければアグの好きなものを――」

 ――ぐるり。
 話している途中で僕の視界が揺れ、背中がベッドへ沈む。

 驚いて目を丸くする僕を、アグは愉悦の笑みを浮かべて見下ろしていた。

「守流、お前の体をもらう」

 何を言われたのか理解するより早く、アグが牙を覗かせながら顔を寄せ、僕の唇を貪る。

「ン……ッ」

 分厚い舌が口内で密に絡まる。
 体の自由どころか、息も、鼓動も、脈も、何もかもがアグに奪われる。

 まだお互いのことをよく知らないし、契約のことも理解し切れていない。そもそも、こういう行為自体が初めてで、何もかもが未知の塊だ。

 なのに、アグに奪われることが嬉しい。

 僕を貪る息遣いに生気が色濃くなっていく。
 元気になっている手応えが嬉しくて、思わずアグの頭を抱いて撫でる。

 何も知らないはずなのに体が勝手に動く。

 そんな僕の衝動をアグは嫌がることなく受け入れ、口付けを堪能し続ける。

 やっと唇が解放された時には、僕のすべてがアグに握られていた。

 このまま奪われるのかと思っていたけれど、アグは意地悪な笑みを浮かべ、僕から体を離した。

「腹が減った。早く食事を作れ」

「え……あ、分かりました。スーパーでお惣菜を買ってきましたから、すぐに準備しますね!」

 起き上がってベッドから離れようとしかけた時、アグが僕の手を掴む。

 振り向くと、獲物を狙うようにギラついたアグの視線が僕を突き刺した。

「これで足りたと思うなよ? ずっと耐えて苦しんできたんだ……もっと俺を満たせ。お前を支配させろ」

 本能がアグに呑まれる。
 抗えないまま僕は鼓動を走らせたまま、コクリと頷いた。
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