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清純Domはすべてを捧げる
異常な食欲の理由
◇ ◇ ◇
夕食は案の定の食いっぷりだった。
大量に買ってきた冷食やお弁当を口にしながら、僕の料理が出来上がるのを待つという状況。
家にある一番大きな鍋でうどんすきを作って食卓へ並べる頃には、渡してあったお弁当はすべて空になっていた。
そして大鍋も僕と一緒に食べた。
五人分のうどんはもちろん、アグは汁まで残さず胃袋へ収めてしまった。
毎回こんなに食べられると、食費がすごいことに……。
内心困ったと思っていたけれど、食べ終えた後にアグが教えてくえた。
「今まではSubの本能が満たされないせいで食欲が止まらなかったが、これからは少なくて済む」
「本当ですか!」
「あのベントーとかいう物なら一、二個で十分足りる――どうした? そんな魂が抜けるようなため息をついて」
「はあぁぁ……家計が助かったぁぁ……」
僕は本音をため息に乗せて吐き出す。
ずっとあの食事量だったら、アグを養うために借金する羽目になっていた。
経済力が心もとなくて申し訳ない……と思っていると、アグは「ほう」と意外そうな声を出した。
「俺に稼いで来いとは言わんのか」
「そうしてもらえると助かりますけど、でも耳と尻尾があると働く以前に、みんな驚いて雇うどころじゃなくなるので……」
「隠せば済む話だ。用心棒ぐらいはできる」
「極道の世界はダメです! 下手したらアグが売られてしまいますから!」
「ゴクドー? よく分からんが厄介ならばやめておく。しかし、他にできることと言ったら、傭兵か暗殺か盗み――」
「全部ダメですから。今はこの世界に慣れて、それから一緒に考えていきましょう。アグが楽しくできる仕事を」
何に向いているか分からないけれど、ずっと家に閉じこもっている訳にはいかない。仕事で生きがいがあれば、きっとこの世界へ来て良かったと思える。
アグの幸せを考えればのこと。
……頭の片隅で、囲ってしまえばいいなんて考えが浮かんでいるけれど。
今まで考えもしなかった願望。
自分の中に別人が生まれてしまったような感覚。全身がザワついて落ち着かない。
これがアグの言うDomの感情なのかな?
内心首を傾げていると、アグが僕をジッと見つめてきた。
「どうかしましたか、アグ?」
「……早く寝たい」
「じゃあ今すぐ寝床を用意しますね。あ、その前にシャワーを――」
「それは命令か?」
アグの声が笑っている。
反射で「違う」と答えかけて、僕は契約を思い出す。
命令して、褒めて、褒美を与える。アグが望むこと。
――そして僕の本能がそうしたいと望むこと。
「……は、い。お願い、します」
硬い声で答えてしまった僕へ、アグはからかうような微笑を見せた。
夕食は案の定の食いっぷりだった。
大量に買ってきた冷食やお弁当を口にしながら、僕の料理が出来上がるのを待つという状況。
家にある一番大きな鍋でうどんすきを作って食卓へ並べる頃には、渡してあったお弁当はすべて空になっていた。
そして大鍋も僕と一緒に食べた。
五人分のうどんはもちろん、アグは汁まで残さず胃袋へ収めてしまった。
毎回こんなに食べられると、食費がすごいことに……。
内心困ったと思っていたけれど、食べ終えた後にアグが教えてくえた。
「今まではSubの本能が満たされないせいで食欲が止まらなかったが、これからは少なくて済む」
「本当ですか!」
「あのベントーとかいう物なら一、二個で十分足りる――どうした? そんな魂が抜けるようなため息をついて」
「はあぁぁ……家計が助かったぁぁ……」
僕は本音をため息に乗せて吐き出す。
ずっとあの食事量だったら、アグを養うために借金する羽目になっていた。
経済力が心もとなくて申し訳ない……と思っていると、アグは「ほう」と意外そうな声を出した。
「俺に稼いで来いとは言わんのか」
「そうしてもらえると助かりますけど、でも耳と尻尾があると働く以前に、みんな驚いて雇うどころじゃなくなるので……」
「隠せば済む話だ。用心棒ぐらいはできる」
「極道の世界はダメです! 下手したらアグが売られてしまいますから!」
「ゴクドー? よく分からんが厄介ならばやめておく。しかし、他にできることと言ったら、傭兵か暗殺か盗み――」
「全部ダメですから。今はこの世界に慣れて、それから一緒に考えていきましょう。アグが楽しくできる仕事を」
何に向いているか分からないけれど、ずっと家に閉じこもっている訳にはいかない。仕事で生きがいがあれば、きっとこの世界へ来て良かったと思える。
アグの幸せを考えればのこと。
……頭の片隅で、囲ってしまえばいいなんて考えが浮かんでいるけれど。
今まで考えもしなかった願望。
自分の中に別人が生まれてしまったような感覚。全身がザワついて落ち着かない。
これがアグの言うDomの感情なのかな?
内心首を傾げていると、アグが僕をジッと見つめてきた。
「どうかしましたか、アグ?」
「……早く寝たい」
「じゃあ今すぐ寝床を用意しますね。あ、その前にシャワーを――」
「それは命令か?」
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命令して、褒めて、褒美を与える。アグが望むこと。
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「……は、い。お願い、します」
硬い声で答えてしまった僕へ、アグはからかうような微笑を見せた。
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