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第1章 旅立つ
20.チンピラに絡まれるようです
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商人ギルドから帰ってきて半月経った。今日は午後からギルドに行くことになっている。ハジメは朝早く起きると裏庭に出る。裏庭には大小の2つの畑があり、大きな方に薬草を小さな方に魔素草を植えていたが見事に畑一面に生えそろっている。初めてこの光景を見た時はとても驚いた。たった2日で2株の薬草と魔素草が畑一面に生えそろっているのだから。
ハジメは畑を鑑定すると薬草は枯れるまで7日、魔素草は枯れるまで10日であり、現在薬草は150株、魔素草は50株生えていることが分かった。取りあえず2種類をそれぞれ2株残して採取しアイテムボックスに入れ、地下へと降りて行った。
地下の棚には空のポーション瓶が並んでおり使われるのを待っている。余談であるがポーション瓶の蓋は金具で出来ており回して閉めることができ、しっかりと密封されるようになっている。クララのGJな作品である。
ハジメは魔力ポーションを3時間弱で作り上げポーション瓶に詰め終えた。アイテムボックスに魔力ポーション用の瓶と液体が存在すると魔力ポーションを取り出そうとすると『瓶に詰め替えますか?』とコマンドが出たことは僥倖だった。試してみたら一瞬で魔力ポーションが瓶に詰めらていたのだ。勿論体力ポーションも出来た。これによりハジメの作業工程はかなり向上した。ハジメが作業しているとコウから声が掛かった。
「ご主人様朝食が出来てます」
パンとシチューにサラダで代り映えしなかったが、最近ではコウが朝食を作ってくれるようになっており、ハジメ好みの味付けになっていた。2人は一緒に食事を摂り、コウが食器を片付け始めたのでハジメはオースティンの店に体力ポーションを卸すために向かうことにした。コウが家事全般良くやってくれるのでハジメは時間的な余裕がさらに生まれつつあった。コウが初めてすることは教えたが2,3回教えるとコウはすぐ出来るようになっていた。真面目な子だった。
オースティンの店に体力ポーションを卸した後ハジメは地下に行き、残った薬草と魔素草でポーションを多く作りアイテムボックスに入れ、コウの作ったお昼ご飯を食べ商人ギルドへ向かった。
ギルドに着き、受付に
「第二秘書の仕事をさせていただきますハジメです」
と告げると、エヴァの部屋へと案内されたので、人目がなくなるとハジメは魔力ポーションを100本納品した。
「それで3時間何をすればいいですか?私に手伝えることがありますか?」
と出されたお茶を飲みながら話す。働き蟻と揶揄される日本人である。
「んー特にないんですよ。そうだ。片づけ得意です?」
「まぁ人並み程度ですが」
と言うとエヴァの顔は明るくなり、ハジメの両手を持ちぶんぶんと振った。エヴァの仕事部屋は扉を開けると応接室(今2人が居るところ)があり、その奥の扉を開けると押印や陳情書などを読む執務室があるらしい。ハジメはまだ通されたことはなかったが。エヴァは執務室に案内すると正面に立派な机があり、その両サイドに大きな本棚が2つずつあった。本はぐちゃぐちゃに入っているのに気づいた。床は綺麗である(エヴァの為に伝えておく)。ハジメは大きなため息をつき、
「これを片づけた良いんですね」
「そうなの。お願い。私片付けどうしてもできなくて、ベスパ以外この部屋には入れることができないのよ。床は埃除去の魔法が掛かっているから綺麗なんだけどね・・・。本棚がだからいちいち応接室まで行かなきゃいけないし、ベスパも忙しいし。ベスパ以外の人に頼むにはギルド長のイメージが邪魔するしー」
と盛大な自己弁明をした。ハジメはエヴァに仕事をしてもらい、その間に本棚の片づけを始める。先ずはパッと見ると目につく両奥の本棚から片づけることにする。
「私にとって手前の本棚は良く使う本なのよ。出入口に近い本棚は必要だけど月に1回使う程度のものが一応入っているの」
とエヴァが言った。ハジメは本の棚移動はしないようにした。先ずは右奥のから本を全て床に出し大きさや似たような表紙のものに分類した。本棚の一番上の棚からもエヴァは本を取り出せるとのことだったので、分かりやすく、見やすく使いやすくを中心に整理していくことにした。ハジメは看護師であったこともあり、片付けは業務の一環であったし、元来整頓好きというのものあり、片付けは得意分野であった。
まずは厚く重い本を下から入れていくことで地震などの際倒れにくくなるのだ。ハジメは地震ってあるのかと思った。ここに来てから地震には遭っていないが、まぁ自分なりの片付けで許してもらうこととした。本棚には紙の資料も多く含まれていたため、本棚の下から4段目に引き出し式の小さなタンスを入れ紙資料を分類して入れていった。右側の棚が片付いたとき丁度バイトの時間が終わった。
ハジメは書類と本の場所を説明し次回は左の奥の片づけることとした。そしてエヴァに右の棚の本使ったら元の位置に戻すように念を押し、帰宅することにした。
「あぁ、たぶん半年くらいで価格は落ち着くだろうから一応その時まで臨時秘書ってことにしておいたからね」
と帰り際にエヴァが笑って言うので
「片付け係では?」
と返しておいた。随分慣れた関係になったものだ。
ギルドでアルバイトを始め半年が過ぎた。ハジメは店舗代金全て支払い終わり、貯蓄も割と出来ている。魔力ポーションの価格も1本1万Sまで下降しており、商人ギルド長のエヴァからはそろそろ販売しても大丈夫だと言われている。その為バイトの契約も終わるのだが、エヴァとベスパから誰も来なくなれば誰が本棚を整頓してくれるのかと涙を流して止められた。2人いるんだからなんとかして欲しいものだ。仕方ないためハジメのバイトが終わればコウが1週間に1度4時間掃除に行ってもらうことにすると万歳三唱をされた。掃除しろよ。
遂にハジメの店でも魔力ポーションを9000Sで販売されるようになった。販売も出来るようになったがここまでずっと働き詰めであったため、コウに2日ほど休みを取らないか提案してみると
「ご主人様は働き過ぎですからゆっくりしてください」
と言われ、コウは店を開けると言うのだ。彼の言い分は店番しているだけだから疲れていないとのこと。まして奴隷としての労働環境は恐ろしく良いとのことであった。1日に3回食事をし仕事は店番と掃除程度。命の危険もないし、何より無理難題を言われない、これが大きいとコウは話す。ご主人様によってはモンスターから守れとか、不機嫌なことがあれば殴る蹴るは当たり前なのだそうだ。それがないということがどれだけ恵まれているかとコウは笑って言った。取りあえず休みを取るかどうかは一時保留しておくことにした。
週に1回のコウのアルバイトの日は店はお休みにしているため、いつもポーションばかり作っているので気分転換になるかと思い、ハジメはなんとなく臨時で店を開けることにした。
そしてその日、午後からコウは商人ギルドへ掃除に行き、ハジメはカウンターにお茶と椅子を持ち込みまったりと店番をしていた。そろそろコウが帰ってくるであろう時間になると、急に外が騒がしくなる。ハジメは何事かと思い店の外に出ると、コウが剣を抜いた冒険者風の男2人に因縁をつけられていた。
「奴隷の分際で俺たちにぶつかっておいて何もなしかよ。持ってる金を寄越せよ」
と叫んでいた。とんだ893である。
「きちんと謝りました。このお金はご主人様のものです。渡すわけにはいきません」
とコウはおどおどしたような顔で袋をしっかりと握り抵抗している。周囲からは「きちんと謝ったじゃないか。何を言っているんだ」と言う援護もあったが、剣を抜いている2人に近づけていない様子だった。ハジメが助け出ようとすると、
「阿保ガキが。何を粋がってやがる。剣を持って調子に乗ったか?」
と柄の悪いバリトン声が響き、今まで見たどんな人物より一際大きいドワーフが赤髪を怒髪天のように立たせて立っていた。
「なんだ。さっき俺の店で剣を買ったやつらか」
と言うと、剣を抜いていた1人が
「うるせぇ、もう剣は買った俺たちのもんだ。クソ鍛冶屋は消えろ」
どうやら鍛冶屋らしい。そう言えばごつごつとした丈夫そうな革の服に分厚い白い前掛けをしている。ハジメがそう観察していた時、ドワーフの右足が叫んだ男の鳩尾にめり込んだ。剣士らしい冒険者は「ぶっ」と呻き剣を地面に落とした。それをもう一人同じ格好をした鍛冶屋が右手に持っていたハンマーで男の剣を叩き折っていた。見事な連携プレイであった。その隙にハジメはコウの手を引き、自分の後ろに隠した。そして観察を続ける。当事者であるハジメはこそっと逃げることは出来なかった。頭にタオルを巻き、左手に持っている厚手の手袋。ハジメの想像する通りのザ・鍛冶屋スタイルであった。残りの冒険者2人と睨み合っている鍛冶屋2人はややこの展開を楽しんでいるような顔つきをしていた。
「おやおや、カドスさんとルドルフさん、そしてドルトさんですか」
少しこの場にそぐわないゆったりとした声で冒険者3人の名を告げた。ハジメは声のした方を向くとセバスチャンが立っていた。
「奴隷だから持っているお金を徴収しても構わないと思ったのですか?悲しいことです。そもそも奴隷の持っているものは主人の物です。貴方がたは強盗犯ということになるんですよ」
とゆったりの口調で続ける。
「冒険者ギルド長としてお三方のギルドの登録を抹消しますね。冒険者ではない人に武器は不要です。アベルさん、もう2本も折ってしまってはどうですか?」
と鍛冶屋のおっさんに声を掛ける。アベルと呼ばれた鍛冶屋はにやりと笑ったと思うともう一人の元冒険者の剣を同じように折り、最後に逃げようとした魔術師風の男を後ろから蹴り倒し、杖を踏みつけて折っていた。そして3人の元冒険者は縄でそれぞれが縛られており、騒動に駆け付けた衛兵に引き渡された。
「あ、後で彼らのギルド証を私どもが取りに伺います」
とセバスチャンは衛兵に告げ、3人が居なくなると野次馬で集まった人々も散り散りになった。ハジメはアベルともう一人の鍛冶屋、セバスチャンの前に行き、
「うちのコウが絡まれているのを助けていただきありがとうございました。お陰で怪我をさせずにすみました。本当にありがとうございます」
それぞれに礼を述べた。アベルとは別の鍛冶屋が
「気にするな。同じ商店街にある店だ。時々うちの弟子たちがポーションを買いに行かせてもらっている。お前のところのポーションは治りが早くて効果がピカイチだ。店番しているそこのがきんちょも愛想が良くて、ここらのちょっとしたアイドルだぜ。鉄の物が欲しくなったらうちの店に来い。少しくらいなら値引いてやれるぜ。あぁ、俺か?俺はアベルの弟のセドルって言うんだ」
とがははと笑った。セバスチャンは
「ハジメさん、本当にご迷惑をおかけしました。今回の事は私たちギルドの監督不行き届きです。でも今回の事はいつかまた起こりえるものです。ハジメさんが誰からも攻撃されないほど強くなるか、地位を得るか。そして戦闘の出来る奴隷を買うか、と言ったところでしょうか。少し考えておいた方がよろしいかと思います」
と言った。
「それにしてもセバスチャンさんてギルド長さんだったんですね。受付にいつもいらっしゃるイメージがあるから受付の方かとおもってました。すみません」
「あぁ、受付が忙しい時間帯と自分の仕事が空いた時は受付に座っているんですよ。その方が見えることもあるのですよ。先ほど私が言った事早めに考えてくださいね」
とハジメが謝るとそう言って笑った。確かにセバスチャンの言う通りだった。ハジメはコウと一緒にいる時間が長いが今回のように別々に行動することも少なくない。コウの安全を確保するためにも今ハジメが出来ることと言えば戦闘の出来る奴隷を買い求めることだけである。幸いにも費用はある程度あった。しかし奴隷という存在に抵抗があるのは事実だった。そんなハジメにペン太は彼の右耳をそっと甘噛みして慰めてくれていた。
ハンドブック 6項目目
6-10.魔力ポーションの価格を下げよう:Clear!
6-11.報酬:破裂草2株・鉄丸10個
ハンドブック 7項目目
7-1. チンピラを撃退しよう:Clear!
7-2. 鍛冶職人と知り合いになろう:Clear!
ハジメは畑を鑑定すると薬草は枯れるまで7日、魔素草は枯れるまで10日であり、現在薬草は150株、魔素草は50株生えていることが分かった。取りあえず2種類をそれぞれ2株残して採取しアイテムボックスに入れ、地下へと降りて行った。
地下の棚には空のポーション瓶が並んでおり使われるのを待っている。余談であるがポーション瓶の蓋は金具で出来ており回して閉めることができ、しっかりと密封されるようになっている。クララのGJな作品である。
ハジメは魔力ポーションを3時間弱で作り上げポーション瓶に詰め終えた。アイテムボックスに魔力ポーション用の瓶と液体が存在すると魔力ポーションを取り出そうとすると『瓶に詰め替えますか?』とコマンドが出たことは僥倖だった。試してみたら一瞬で魔力ポーションが瓶に詰めらていたのだ。勿論体力ポーションも出来た。これによりハジメの作業工程はかなり向上した。ハジメが作業しているとコウから声が掛かった。
「ご主人様朝食が出来てます」
パンとシチューにサラダで代り映えしなかったが、最近ではコウが朝食を作ってくれるようになっており、ハジメ好みの味付けになっていた。2人は一緒に食事を摂り、コウが食器を片付け始めたのでハジメはオースティンの店に体力ポーションを卸すために向かうことにした。コウが家事全般良くやってくれるのでハジメは時間的な余裕がさらに生まれつつあった。コウが初めてすることは教えたが2,3回教えるとコウはすぐ出来るようになっていた。真面目な子だった。
オースティンの店に体力ポーションを卸した後ハジメは地下に行き、残った薬草と魔素草でポーションを多く作りアイテムボックスに入れ、コウの作ったお昼ご飯を食べ商人ギルドへ向かった。
ギルドに着き、受付に
「第二秘書の仕事をさせていただきますハジメです」
と告げると、エヴァの部屋へと案内されたので、人目がなくなるとハジメは魔力ポーションを100本納品した。
「それで3時間何をすればいいですか?私に手伝えることがありますか?」
と出されたお茶を飲みながら話す。働き蟻と揶揄される日本人である。
「んー特にないんですよ。そうだ。片づけ得意です?」
「まぁ人並み程度ですが」
と言うとエヴァの顔は明るくなり、ハジメの両手を持ちぶんぶんと振った。エヴァの仕事部屋は扉を開けると応接室(今2人が居るところ)があり、その奥の扉を開けると押印や陳情書などを読む執務室があるらしい。ハジメはまだ通されたことはなかったが。エヴァは執務室に案内すると正面に立派な机があり、その両サイドに大きな本棚が2つずつあった。本はぐちゃぐちゃに入っているのに気づいた。床は綺麗である(エヴァの為に伝えておく)。ハジメは大きなため息をつき、
「これを片づけた良いんですね」
「そうなの。お願い。私片付けどうしてもできなくて、ベスパ以外この部屋には入れることができないのよ。床は埃除去の魔法が掛かっているから綺麗なんだけどね・・・。本棚がだからいちいち応接室まで行かなきゃいけないし、ベスパも忙しいし。ベスパ以外の人に頼むにはギルド長のイメージが邪魔するしー」
と盛大な自己弁明をした。ハジメはエヴァに仕事をしてもらい、その間に本棚の片づけを始める。先ずはパッと見ると目につく両奥の本棚から片づけることにする。
「私にとって手前の本棚は良く使う本なのよ。出入口に近い本棚は必要だけど月に1回使う程度のものが一応入っているの」
とエヴァが言った。ハジメは本の棚移動はしないようにした。先ずは右奥のから本を全て床に出し大きさや似たような表紙のものに分類した。本棚の一番上の棚からもエヴァは本を取り出せるとのことだったので、分かりやすく、見やすく使いやすくを中心に整理していくことにした。ハジメは看護師であったこともあり、片付けは業務の一環であったし、元来整頓好きというのものあり、片付けは得意分野であった。
まずは厚く重い本を下から入れていくことで地震などの際倒れにくくなるのだ。ハジメは地震ってあるのかと思った。ここに来てから地震には遭っていないが、まぁ自分なりの片付けで許してもらうこととした。本棚には紙の資料も多く含まれていたため、本棚の下から4段目に引き出し式の小さなタンスを入れ紙資料を分類して入れていった。右側の棚が片付いたとき丁度バイトの時間が終わった。
ハジメは書類と本の場所を説明し次回は左の奥の片づけることとした。そしてエヴァに右の棚の本使ったら元の位置に戻すように念を押し、帰宅することにした。
「あぁ、たぶん半年くらいで価格は落ち着くだろうから一応その時まで臨時秘書ってことにしておいたからね」
と帰り際にエヴァが笑って言うので
「片付け係では?」
と返しておいた。随分慣れた関係になったものだ。
ギルドでアルバイトを始め半年が過ぎた。ハジメは店舗代金全て支払い終わり、貯蓄も割と出来ている。魔力ポーションの価格も1本1万Sまで下降しており、商人ギルド長のエヴァからはそろそろ販売しても大丈夫だと言われている。その為バイトの契約も終わるのだが、エヴァとベスパから誰も来なくなれば誰が本棚を整頓してくれるのかと涙を流して止められた。2人いるんだからなんとかして欲しいものだ。仕方ないためハジメのバイトが終わればコウが1週間に1度4時間掃除に行ってもらうことにすると万歳三唱をされた。掃除しろよ。
遂にハジメの店でも魔力ポーションを9000Sで販売されるようになった。販売も出来るようになったがここまでずっと働き詰めであったため、コウに2日ほど休みを取らないか提案してみると
「ご主人様は働き過ぎですからゆっくりしてください」
と言われ、コウは店を開けると言うのだ。彼の言い分は店番しているだけだから疲れていないとのこと。まして奴隷としての労働環境は恐ろしく良いとのことであった。1日に3回食事をし仕事は店番と掃除程度。命の危険もないし、何より無理難題を言われない、これが大きいとコウは話す。ご主人様によってはモンスターから守れとか、不機嫌なことがあれば殴る蹴るは当たり前なのだそうだ。それがないということがどれだけ恵まれているかとコウは笑って言った。取りあえず休みを取るかどうかは一時保留しておくことにした。
週に1回のコウのアルバイトの日は店はお休みにしているため、いつもポーションばかり作っているので気分転換になるかと思い、ハジメはなんとなく臨時で店を開けることにした。
そしてその日、午後からコウは商人ギルドへ掃除に行き、ハジメはカウンターにお茶と椅子を持ち込みまったりと店番をしていた。そろそろコウが帰ってくるであろう時間になると、急に外が騒がしくなる。ハジメは何事かと思い店の外に出ると、コウが剣を抜いた冒険者風の男2人に因縁をつけられていた。
「奴隷の分際で俺たちにぶつかっておいて何もなしかよ。持ってる金を寄越せよ」
と叫んでいた。とんだ893である。
「きちんと謝りました。このお金はご主人様のものです。渡すわけにはいきません」
とコウはおどおどしたような顔で袋をしっかりと握り抵抗している。周囲からは「きちんと謝ったじゃないか。何を言っているんだ」と言う援護もあったが、剣を抜いている2人に近づけていない様子だった。ハジメが助け出ようとすると、
「阿保ガキが。何を粋がってやがる。剣を持って調子に乗ったか?」
と柄の悪いバリトン声が響き、今まで見たどんな人物より一際大きいドワーフが赤髪を怒髪天のように立たせて立っていた。
「なんだ。さっき俺の店で剣を買ったやつらか」
と言うと、剣を抜いていた1人が
「うるせぇ、もう剣は買った俺たちのもんだ。クソ鍛冶屋は消えろ」
どうやら鍛冶屋らしい。そう言えばごつごつとした丈夫そうな革の服に分厚い白い前掛けをしている。ハジメがそう観察していた時、ドワーフの右足が叫んだ男の鳩尾にめり込んだ。剣士らしい冒険者は「ぶっ」と呻き剣を地面に落とした。それをもう一人同じ格好をした鍛冶屋が右手に持っていたハンマーで男の剣を叩き折っていた。見事な連携プレイであった。その隙にハジメはコウの手を引き、自分の後ろに隠した。そして観察を続ける。当事者であるハジメはこそっと逃げることは出来なかった。頭にタオルを巻き、左手に持っている厚手の手袋。ハジメの想像する通りのザ・鍛冶屋スタイルであった。残りの冒険者2人と睨み合っている鍛冶屋2人はややこの展開を楽しんでいるような顔つきをしていた。
「おやおや、カドスさんとルドルフさん、そしてドルトさんですか」
少しこの場にそぐわないゆったりとした声で冒険者3人の名を告げた。ハジメは声のした方を向くとセバスチャンが立っていた。
「奴隷だから持っているお金を徴収しても構わないと思ったのですか?悲しいことです。そもそも奴隷の持っているものは主人の物です。貴方がたは強盗犯ということになるんですよ」
とゆったりの口調で続ける。
「冒険者ギルド長としてお三方のギルドの登録を抹消しますね。冒険者ではない人に武器は不要です。アベルさん、もう2本も折ってしまってはどうですか?」
と鍛冶屋のおっさんに声を掛ける。アベルと呼ばれた鍛冶屋はにやりと笑ったと思うともう一人の元冒険者の剣を同じように折り、最後に逃げようとした魔術師風の男を後ろから蹴り倒し、杖を踏みつけて折っていた。そして3人の元冒険者は縄でそれぞれが縛られており、騒動に駆け付けた衛兵に引き渡された。
「あ、後で彼らのギルド証を私どもが取りに伺います」
とセバスチャンは衛兵に告げ、3人が居なくなると野次馬で集まった人々も散り散りになった。ハジメはアベルともう一人の鍛冶屋、セバスチャンの前に行き、
「うちのコウが絡まれているのを助けていただきありがとうございました。お陰で怪我をさせずにすみました。本当にありがとうございます」
それぞれに礼を述べた。アベルとは別の鍛冶屋が
「気にするな。同じ商店街にある店だ。時々うちの弟子たちがポーションを買いに行かせてもらっている。お前のところのポーションは治りが早くて効果がピカイチだ。店番しているそこのがきんちょも愛想が良くて、ここらのちょっとしたアイドルだぜ。鉄の物が欲しくなったらうちの店に来い。少しくらいなら値引いてやれるぜ。あぁ、俺か?俺はアベルの弟のセドルって言うんだ」
とがははと笑った。セバスチャンは
「ハジメさん、本当にご迷惑をおかけしました。今回の事は私たちギルドの監督不行き届きです。でも今回の事はいつかまた起こりえるものです。ハジメさんが誰からも攻撃されないほど強くなるか、地位を得るか。そして戦闘の出来る奴隷を買うか、と言ったところでしょうか。少し考えておいた方がよろしいかと思います」
と言った。
「それにしてもセバスチャンさんてギルド長さんだったんですね。受付にいつもいらっしゃるイメージがあるから受付の方かとおもってました。すみません」
「あぁ、受付が忙しい時間帯と自分の仕事が空いた時は受付に座っているんですよ。その方が見えることもあるのですよ。先ほど私が言った事早めに考えてくださいね」
とハジメが謝るとそう言って笑った。確かにセバスチャンの言う通りだった。ハジメはコウと一緒にいる時間が長いが今回のように別々に行動することも少なくない。コウの安全を確保するためにも今ハジメが出来ることと言えば戦闘の出来る奴隷を買い求めることだけである。幸いにも費用はある程度あった。しかし奴隷という存在に抵抗があるのは事実だった。そんなハジメにペン太は彼の右耳をそっと甘噛みして慰めてくれていた。
ハンドブック 6項目目
6-10.魔力ポーションの価格を下げよう:Clear!
6-11.報酬:破裂草2株・鉄丸10個
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7-1. チンピラを撃退しよう:Clear!
7-2. 鍛冶職人と知り合いになろう:Clear!
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