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第3章 航路
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マコンの街から帰ってきた日の夜、ハジメは陽と舞にゾロア教について調べて欲しいことを伝える。2人はすぐにその姿を消した。そして土精霊の航には成形できる白い石を探して欲しいことを伝えると、元気に『はーい』と言って姿を消した。そして残った水精霊の藍と一緒に裏庭に向かう。
東屋まで来ると藍に
「たぶん、近々ここから引っ越すことになるんだけど、この池とか、精霊の木とかどうしようかと思ってるんだ」
と伝える。藍は
「ハジメさん、それは大丈夫ですよ。ね、ユドル様」
と言うとハジメの右隣りを見て言う。そちらに視線をやると精霊王のユドルが立っていた。
「久しぶりじゃの、ハジメ殿」
とユドルが右手を挙げてやぁと挨拶をしていた。ハジメは東屋にあるテーブルセットの椅子に座るように勧め、着席するとマジックバックから出したティーセットに魔法で作ったお湯でお茶を入れる。藍はペン太と一緒に花畑で遊んでいて、その周囲にカラフルな色の光の珠がふわふわと浮かんでいる。
「あれは精霊の卵のようなもんじゃて。生まれては数日で消えていくのじゃ。そして消える瞬間にこの世界に小さな小さな祝福を与えるのじゃ。今は精霊の木の中にほぼ消えていっているのじゃがな。それでもこの辺りに薬草や魔素草、色々な動物たちが増えているはずじゃて」
とふぉっふぉっふぉと好々爺のように笑いお茶を一口啜る。
「あぁ、それでの。この庭を移すのはワシに任せて貰ってよい。引っ越す頃に来るでの。あぁ、これはワシのお礼なんでな、気にせんでよいのじゃ。本来なら消えていくはずだったワシの子の精霊たちも楽しそうにこの世界を楽しんでおる。あ、それとこれは4大精霊の感謝の気持ちじゃ」
と言いながら4つのコインを手渡してくる。それを受け取りハジメは透明なコインを1枚掌に載せ、
「ありがとうございます。それでこのコインは一体・・・?」
とユドルに顔を向けると悪戯っぽく笑って、
「藍、ペン太殿こちらにおいで」
と2人を手招きする。2人は藍が凍らせた精霊の湖でスケートを楽しんでいた。いつの間に・・・・。とハジメが思ったが後回しにした。
2人が返事をしてこちらに来た。ユドルは藍に向かって
「藍、そろそろどうじゃ?」
と聞く。
「ユドル様。私もそろそろハジメさんをお手伝いしたいと思っていました」
と頷き、テーブルに置かれていたコインを1枚右手に掴み胸に当てる。
『水精霊アンディーンの契約を精霊王ユドルが許す』
と声ではなく空気がそう震えると藍が水の花蕾に包まれる。そして数分後、花弁が1枚1枚開き、なかからは高校生くらいに成長した藍が裸で胎児のように中央に浮かんでいる。ゆっくりと両目を開けた藍が足を地に着けるとハジメに突進してきて抱きつく。
「あ、藍。裸だから服きて!」
とアイテムボックスにあった洗ったばかりのシーツを藍に巻き付ける。
「あぁ、体があるの忘れてました・・・」
と舌をちょろっと出して言い、右手の人差し指をさっと振る。藍がシーツを取るとそこにはメイド服があった。そして藍は頭にホワイトブリムを着ける。
「ハジメ様、私藍は清水の精霊へと昇華させていただきました。今後はメイドとしてお仕えさせて頂きます」
と陽のように綺麗なお辞儀をすると、すぐにテーブルまで来て
「お茶が冷めてしまったようです。入れ直しいたしますね」
と告げ、お茶を煎れなおし始めた。
「さて、次はペン太殿だの」
とユドルがペン太に視線を落とすと
「えー。ペン太今のままでいいよ?」
と言いながらぴょんとハジメの右肩に上る。
「そうか、困ったのぉ。これは精霊かそれに属する者にしか使えんの・・・じゃ・・・・」
と不意に言葉に詰まる。ハジメが不思議そうにユドルに視線をやると1枚のコインがハジメの視線まで浮かびあがっている。そして不意に白い光の珠が現れコインに吸い込まれ光ったかと思うとハジメの体目掛けて飛んできた。ハジメは慌てて身を固くした瞬間
『日の本の3柱が1つ、ツクヨミの名において言祝ぐ』
と澄んだどことなく神々しい声が頭に静かに響く。それを見ていた、ユドルが
『・・・承知いたしました。ではそのように・・・』
と何かと話していたが頭を下げるとハジメの顔をまっすぐに見て、
「ハジメ殿。自分自身を鑑定してみると良いじゃろうて」
と言うのでその指示に従う。
『<鑑定>』
名前:ハジメ
種族:人
職種:道具師 Lv.10 (7↑up)→ 錬金術師 Lv.2
副職:なし
年齢:19歳
性別:男
体力:Lv.4 (2↑up)
耐久:Lv.4 (2↑up)
敏捷:Lv.4 (2↑up)
器用:Lv.7 (2↑up)
魔力:Lv.8 (3↑up)
魔抗:Lv.8 (5↑up)
幸運:Lv.9 (3↑up)
スキル:言語理解 Lv.∞
四百四病耐性 Lv.10(3↑up)
魔法全属性 Lv.10 (5↑up)
道具投擲 Lv.10
匠石運斤 Lv.7(1↑up)
アイテムボックス
称号:神々の代行者
精霊の解放者
精霊王の友
スクナヒコの加護
神器を使う者
異世界の神々の加護
「・・・錬金術師?・・・」
「えぇ、道具師の上位職ですね。神様からは人間でこのランクになったのはハジメさんで3人目のようですよ。
今の世界にはハジメさんだけです。あぁ、錬金術師と言っても石を金に代えるとかは出来ないそうです。あくまで道具師の力が上がると言った程度とのことです」
とユドルが言う。ハジメは錬金術師を意識して鑑定すると
錬金術師Lv.2:使用した道具の効果が10倍になる。当たるかどうかは本人の器用に依存。モノを作る場合の補正値が10倍に跳ね上がる。また鑑定によりその商品の品質が10段階で知ることが出来る。
ハジメは思わず土下座の恰好になる。
「・・・また、人に言えないことが増えた・・・・」
思わず穴を掘って叫びそうになったハジメであったが今は夜。ぐっと堪えた。これからはすごく手抜きでポーション作らないとかなり危険なものが出来てしまう。いや、手抜きしてもかなりものが出来る可能性があるのだ。道具師の力が上がるといった簡単なものではない。これからは違う品物を考えなければならなくなるかもしれない。
「いや、そもそも俺の店はポーションの店というわけではないじゃないか。ギルドへの登録は雑貨屋で提出していたはず・・・。ポーション以外を売っても問題はない。そうだ、輸入雑貨店というおしゃれな名目で各国の品物を売ってもいいのかもしれない。よし、そうしよう」
とハジメの気持ちが少し落ち着きを取り戻したとき、そこへ航と舞、陽が帰ってきていた。
「旦那様。諦めが肝心かと存じます・・・」
ユドルから話を聞いた陽が慰めのようなことを呟き、そっと肩に手を置き、テーブルの向こうに視線をやった。ハジメがその視線を追うとそこにはコインを持った航と舞が居た。
『大地の精霊グノームの契約を精霊王ユドルが許す』
『風精霊シルフィードの契約を精霊王ユドルが許す』
航は大岩に包まれ、舞は風の繭に包まれる。そして藍と同じように全裸の彼らが居た。舞の方は藍に任せ、ハジメは航にシーツを掛け、今裸であることを告げる。
そしてすぐに、緑のとんがり帽子、深緑色のローブ、緑の靴を履いた舞と、冒険者風の恰好をした航がハジメに挨拶をする。
「ハジメー。神風の精霊に昇華しちゃったー。えへへー」
と嬉しそうにその場でくるくると回っている。
「主様。拙者、浄土の精霊に昇華し申した」
一人時代が古い寡黙そうな男となった航が満面の笑みで立っている。それは嬉しそうにユドルは見ている。
「ふむ。これで上位精霊が4人となったのじゃな。これなら、2つ3つの国くらいすぐに落とせるじゃろうて。ふぉっふぉっふぉ」
と愉快そうに笑う。
「ユドル様、ご冗談を。旦那様はそんなことしませんよ。ね?」
と陽が言う。
「当たり前。そんなことしても面倒臭いだけです。俺は気ままで居たいんですっ」
半ば八つ当たりのようにユドルにハジメは言った。
「まぁ、ハジメ殿じゃから、変な事はするまいと思うておるのじゃがな。さて、わしはそろそろ帰るでの。では引っ越しの時にの」
とユドルは消えていった。ハジメは椅子に腰かけ、
「もう調べ終わったの?3人とも」
と声を掛けると、航が白い塊をドシンドシンと20個ほど地面に置いた。ハジメはそれをアイテムボックスに仕舞う。
「ありがとう、航」
今までの癖でつい頭を撫でまわす。今まで坊主頭であったが今ではソフトモヒカンのような髪型になっている。それでも彼は嬉しそうに眼を細める。
「旦那様。これは光の石の様です」
航が石を置いた時に欠けた石をつまみ上げて陽が言う。
「光の石?」
「えぇ。4属性の魔力が溶け込むことでその色を白に代えて結界の属性を持つ石の事です。これを設置するだけである程度の魔物が近づきたくなるという効果があります。その昔には街に置くというのが主流だったのですが、人工的に作ることはできないため、現在は使われなくなっています。それから数千年経っていますしこの石の存在を知っている人はいないでしょう」
とハジメの問いに陽が答える。これは丁度いいかもしれないとハジメは思った。頭を撫でられている航に対抗意識を発揮したのか、舞が
「えっと、ゾロア教は子供連れて街を出た後、首都?だっけ?そこから来た奴隷商会に途中で渡して、お金を受け取っていたわ。途中でこの服からこの服に着替えていたわ」
と司祭服から商人風の服に一瞬にして衣装替えして教えてくれる。
「ゾロア教の司祭服ですね。私の方からも合わせてお伝えします。ゾロア教は10年ほど前に始まったようです。当初から孤児を預かり育ておりました。初代は温厚で真面目な方だったようです。それまで孤児を奴隷とすることが当たり前でしたが、彼はそのような考えにはなれなかったようです。そして子供たちが成人すると彼ら彼女らの希望する職種に就けるよう様々なギルドへ斡旋していたようです。しかし彼も裕福ではなかったため、寄付を募ったそうですが、集まらなかったそうです。そのため、年を追うごとにその活動資金は減って行き、ついに3年目に行き詰ったそうです。そしてその年に成人した子供の数名が奴隷商に身売りをし、資金調達を提案したそうです。勿論彼は拒否しましたが、これから自分たちのような子供を助けて欲しいと説得されたそうです。しかし彼はそれを悔やみ、その子達への贖罪の為にゾロア教を立ち上げたようです。今から5年前彼は亡くなりその意志を継いだ息子が活動していましたが、3年前に何者かによって殺され、今はその時補佐していた者が教祖となっているようです」
「なるほど・・・。子供の希望を聞くより手間なく確実に高値で売れると言うことか・・・。でもそれで得たお金で残った子供を育ててるんじゃ、悪いことではないんじゃ?」
ハジメは呟きながら難しい顔をする。
「いえ、そうではないようです。売り上げと寄付金は一度教会本部に納められ、2か月に1回1か月分のお金が入ってるようです。不足分のお金はその街の修道士や修道女が教会とは別で働いて得た給金で補填されているようです。あ、勿論彼ら彼女らには教会からの給料はありません。その為どの街の教会も火の車のようです」
「でも子どもを奴隷として売っている・・・・」
「旦那様。首都から来た司祭一行に成人した子供たちは連れていかれるので、孤児院の彼ら彼女らは知らないのです」
ハジメはため息を付きながら呟く。
「タチの悪いことだ。教会の上だけが潤っているということか・・・。ということは土地の利用料金を下げて貰っても意味がないってことか・・・」
ハンドブック 12項目目
12-3.精霊を進化させよう:Clear!
12-4.水上位精霊と契約しよう:Clear!
12-5.土上位精霊と契約しよう:Clear!
12-6.風上位精霊と契約しよう:Clear!
12-7.上位職へ転職しよう:Clear!
東屋まで来ると藍に
「たぶん、近々ここから引っ越すことになるんだけど、この池とか、精霊の木とかどうしようかと思ってるんだ」
と伝える。藍は
「ハジメさん、それは大丈夫ですよ。ね、ユドル様」
と言うとハジメの右隣りを見て言う。そちらに視線をやると精霊王のユドルが立っていた。
「久しぶりじゃの、ハジメ殿」
とユドルが右手を挙げてやぁと挨拶をしていた。ハジメは東屋にあるテーブルセットの椅子に座るように勧め、着席するとマジックバックから出したティーセットに魔法で作ったお湯でお茶を入れる。藍はペン太と一緒に花畑で遊んでいて、その周囲にカラフルな色の光の珠がふわふわと浮かんでいる。
「あれは精霊の卵のようなもんじゃて。生まれては数日で消えていくのじゃ。そして消える瞬間にこの世界に小さな小さな祝福を与えるのじゃ。今は精霊の木の中にほぼ消えていっているのじゃがな。それでもこの辺りに薬草や魔素草、色々な動物たちが増えているはずじゃて」
とふぉっふぉっふぉと好々爺のように笑いお茶を一口啜る。
「あぁ、それでの。この庭を移すのはワシに任せて貰ってよい。引っ越す頃に来るでの。あぁ、これはワシのお礼なんでな、気にせんでよいのじゃ。本来なら消えていくはずだったワシの子の精霊たちも楽しそうにこの世界を楽しんでおる。あ、それとこれは4大精霊の感謝の気持ちじゃ」
と言いながら4つのコインを手渡してくる。それを受け取りハジメは透明なコインを1枚掌に載せ、
「ありがとうございます。それでこのコインは一体・・・?」
とユドルに顔を向けると悪戯っぽく笑って、
「藍、ペン太殿こちらにおいで」
と2人を手招きする。2人は藍が凍らせた精霊の湖でスケートを楽しんでいた。いつの間に・・・・。とハジメが思ったが後回しにした。
2人が返事をしてこちらに来た。ユドルは藍に向かって
「藍、そろそろどうじゃ?」
と聞く。
「ユドル様。私もそろそろハジメさんをお手伝いしたいと思っていました」
と頷き、テーブルに置かれていたコインを1枚右手に掴み胸に当てる。
『水精霊アンディーンの契約を精霊王ユドルが許す』
と声ではなく空気がそう震えると藍が水の花蕾に包まれる。そして数分後、花弁が1枚1枚開き、なかからは高校生くらいに成長した藍が裸で胎児のように中央に浮かんでいる。ゆっくりと両目を開けた藍が足を地に着けるとハジメに突進してきて抱きつく。
「あ、藍。裸だから服きて!」
とアイテムボックスにあった洗ったばかりのシーツを藍に巻き付ける。
「あぁ、体があるの忘れてました・・・」
と舌をちょろっと出して言い、右手の人差し指をさっと振る。藍がシーツを取るとそこにはメイド服があった。そして藍は頭にホワイトブリムを着ける。
「ハジメ様、私藍は清水の精霊へと昇華させていただきました。今後はメイドとしてお仕えさせて頂きます」
と陽のように綺麗なお辞儀をすると、すぐにテーブルまで来て
「お茶が冷めてしまったようです。入れ直しいたしますね」
と告げ、お茶を煎れなおし始めた。
「さて、次はペン太殿だの」
とユドルがペン太に視線を落とすと
「えー。ペン太今のままでいいよ?」
と言いながらぴょんとハジメの右肩に上る。
「そうか、困ったのぉ。これは精霊かそれに属する者にしか使えんの・・・じゃ・・・・」
と不意に言葉に詰まる。ハジメが不思議そうにユドルに視線をやると1枚のコインがハジメの視線まで浮かびあがっている。そして不意に白い光の珠が現れコインに吸い込まれ光ったかと思うとハジメの体目掛けて飛んできた。ハジメは慌てて身を固くした瞬間
『日の本の3柱が1つ、ツクヨミの名において言祝ぐ』
と澄んだどことなく神々しい声が頭に静かに響く。それを見ていた、ユドルが
『・・・承知いたしました。ではそのように・・・』
と何かと話していたが頭を下げるとハジメの顔をまっすぐに見て、
「ハジメ殿。自分自身を鑑定してみると良いじゃろうて」
と言うのでその指示に従う。
『<鑑定>』
名前:ハジメ
種族:人
職種:道具師 Lv.10 (7↑up)→ 錬金術師 Lv.2
副職:なし
年齢:19歳
性別:男
体力:Lv.4 (2↑up)
耐久:Lv.4 (2↑up)
敏捷:Lv.4 (2↑up)
器用:Lv.7 (2↑up)
魔力:Lv.8 (3↑up)
魔抗:Lv.8 (5↑up)
幸運:Lv.9 (3↑up)
スキル:言語理解 Lv.∞
四百四病耐性 Lv.10(3↑up)
魔法全属性 Lv.10 (5↑up)
道具投擲 Lv.10
匠石運斤 Lv.7(1↑up)
アイテムボックス
称号:神々の代行者
精霊の解放者
精霊王の友
スクナヒコの加護
神器を使う者
異世界の神々の加護
「・・・錬金術師?・・・」
「えぇ、道具師の上位職ですね。神様からは人間でこのランクになったのはハジメさんで3人目のようですよ。
今の世界にはハジメさんだけです。あぁ、錬金術師と言っても石を金に代えるとかは出来ないそうです。あくまで道具師の力が上がると言った程度とのことです」
とユドルが言う。ハジメは錬金術師を意識して鑑定すると
錬金術師Lv.2:使用した道具の効果が10倍になる。当たるかどうかは本人の器用に依存。モノを作る場合の補正値が10倍に跳ね上がる。また鑑定によりその商品の品質が10段階で知ることが出来る。
ハジメは思わず土下座の恰好になる。
「・・・また、人に言えないことが増えた・・・・」
思わず穴を掘って叫びそうになったハジメであったが今は夜。ぐっと堪えた。これからはすごく手抜きでポーション作らないとかなり危険なものが出来てしまう。いや、手抜きしてもかなりものが出来る可能性があるのだ。道具師の力が上がるといった簡単なものではない。これからは違う品物を考えなければならなくなるかもしれない。
「いや、そもそも俺の店はポーションの店というわけではないじゃないか。ギルドへの登録は雑貨屋で提出していたはず・・・。ポーション以外を売っても問題はない。そうだ、輸入雑貨店というおしゃれな名目で各国の品物を売ってもいいのかもしれない。よし、そうしよう」
とハジメの気持ちが少し落ち着きを取り戻したとき、そこへ航と舞、陽が帰ってきていた。
「旦那様。諦めが肝心かと存じます・・・」
ユドルから話を聞いた陽が慰めのようなことを呟き、そっと肩に手を置き、テーブルの向こうに視線をやった。ハジメがその視線を追うとそこにはコインを持った航と舞が居た。
『大地の精霊グノームの契約を精霊王ユドルが許す』
『風精霊シルフィードの契約を精霊王ユドルが許す』
航は大岩に包まれ、舞は風の繭に包まれる。そして藍と同じように全裸の彼らが居た。舞の方は藍に任せ、ハジメは航にシーツを掛け、今裸であることを告げる。
そしてすぐに、緑のとんがり帽子、深緑色のローブ、緑の靴を履いた舞と、冒険者風の恰好をした航がハジメに挨拶をする。
「ハジメー。神風の精霊に昇華しちゃったー。えへへー」
と嬉しそうにその場でくるくると回っている。
「主様。拙者、浄土の精霊に昇華し申した」
一人時代が古い寡黙そうな男となった航が満面の笑みで立っている。それは嬉しそうにユドルは見ている。
「ふむ。これで上位精霊が4人となったのじゃな。これなら、2つ3つの国くらいすぐに落とせるじゃろうて。ふぉっふぉっふぉ」
と愉快そうに笑う。
「ユドル様、ご冗談を。旦那様はそんなことしませんよ。ね?」
と陽が言う。
「当たり前。そんなことしても面倒臭いだけです。俺は気ままで居たいんですっ」
半ば八つ当たりのようにユドルにハジメは言った。
「まぁ、ハジメ殿じゃから、変な事はするまいと思うておるのじゃがな。さて、わしはそろそろ帰るでの。では引っ越しの時にの」
とユドルは消えていった。ハジメは椅子に腰かけ、
「もう調べ終わったの?3人とも」
と声を掛けると、航が白い塊をドシンドシンと20個ほど地面に置いた。ハジメはそれをアイテムボックスに仕舞う。
「ありがとう、航」
今までの癖でつい頭を撫でまわす。今まで坊主頭であったが今ではソフトモヒカンのような髪型になっている。それでも彼は嬉しそうに眼を細める。
「旦那様。これは光の石の様です」
航が石を置いた時に欠けた石をつまみ上げて陽が言う。
「光の石?」
「えぇ。4属性の魔力が溶け込むことでその色を白に代えて結界の属性を持つ石の事です。これを設置するだけである程度の魔物が近づきたくなるという効果があります。その昔には街に置くというのが主流だったのですが、人工的に作ることはできないため、現在は使われなくなっています。それから数千年経っていますしこの石の存在を知っている人はいないでしょう」
とハジメの問いに陽が答える。これは丁度いいかもしれないとハジメは思った。頭を撫でられている航に対抗意識を発揮したのか、舞が
「えっと、ゾロア教は子供連れて街を出た後、首都?だっけ?そこから来た奴隷商会に途中で渡して、お金を受け取っていたわ。途中でこの服からこの服に着替えていたわ」
と司祭服から商人風の服に一瞬にして衣装替えして教えてくれる。
「ゾロア教の司祭服ですね。私の方からも合わせてお伝えします。ゾロア教は10年ほど前に始まったようです。当初から孤児を預かり育ておりました。初代は温厚で真面目な方だったようです。それまで孤児を奴隷とすることが当たり前でしたが、彼はそのような考えにはなれなかったようです。そして子供たちが成人すると彼ら彼女らの希望する職種に就けるよう様々なギルドへ斡旋していたようです。しかし彼も裕福ではなかったため、寄付を募ったそうですが、集まらなかったそうです。そのため、年を追うごとにその活動資金は減って行き、ついに3年目に行き詰ったそうです。そしてその年に成人した子供の数名が奴隷商に身売りをし、資金調達を提案したそうです。勿論彼は拒否しましたが、これから自分たちのような子供を助けて欲しいと説得されたそうです。しかし彼はそれを悔やみ、その子達への贖罪の為にゾロア教を立ち上げたようです。今から5年前彼は亡くなりその意志を継いだ息子が活動していましたが、3年前に何者かによって殺され、今はその時補佐していた者が教祖となっているようです」
「なるほど・・・。子供の希望を聞くより手間なく確実に高値で売れると言うことか・・・。でもそれで得たお金で残った子供を育ててるんじゃ、悪いことではないんじゃ?」
ハジメは呟きながら難しい顔をする。
「いえ、そうではないようです。売り上げと寄付金は一度教会本部に納められ、2か月に1回1か月分のお金が入ってるようです。不足分のお金はその街の修道士や修道女が教会とは別で働いて得た給金で補填されているようです。あ、勿論彼ら彼女らには教会からの給料はありません。その為どの街の教会も火の車のようです」
「でも子どもを奴隷として売っている・・・・」
「旦那様。首都から来た司祭一行に成人した子供たちは連れていかれるので、孤児院の彼ら彼女らは知らないのです」
ハジメはため息を付きながら呟く。
「タチの悪いことだ。教会の上だけが潤っているということか・・・。ということは土地の利用料金を下げて貰っても意味がないってことか・・・」
ハンドブック 12項目目
12-3.精霊を進化させよう:Clear!
12-4.水上位精霊と契約しよう:Clear!
12-5.土上位精霊と契約しよう:Clear!
12-6.風上位精霊と契約しよう:Clear!
12-7.上位職へ転職しよう:Clear!
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