神々の依頼、面倒なんですけどっ!

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第3章 航路

66.街を設計するみたいです

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ハジメが役場から出て、ウォールに教えて貰ったエルムの事務所に向かう。後1時間くらいすれば夕方になるだろう。彼の事務所は街の北東の方角であり、そこが近くになるにつれ、子供たちの楽しそうな声がどんどん大きくなっていった。
エルムの事務所の隣は公園のようになっており、広場となっていた。そこには多くの子どもたちが元気よく走り回っている。ハジメは元気な子供たちの様子に笑顔になっていた。元の世界では危ない人だと通報されるのかもしれない。ハジメは暫くその姿を眺めた後、エルムの事務所のドアをノックする。

「はい。開いてますよ」

と入室の許可が出たのでハジメは中へ入る。

「こんにちは、エルムさん」

「こんにちは、ハジメさん。どうしたんです?何か不具合でもありました?」

と設計をしている手を止めて顔を上げたエルムが椅子を勧めてくる。ハジメは腰をかけ

「すみません、お仕事中なのに。実はお願いがあってきたんですが・・・」

と申し訳なさそうに彼を見るとエルムは笑顔で

「いえいえ、これは趣味みたいなものなので、気にしないでください。今は閑散期なので時間は割とあるんですよ」

と答える。

「実は・・・」

とハジメは自分がマコンの街を貰う事、ウォールから来月まではその事を外部に漏らさないように指示されていることを伝える。その土地を貰うことになった事情に関しては話すのは止めておく。

「えぇぇぇぇ、そんなことになってるんですか。なるほど・・・・ということはその土地に家を建てるって依頼なんですね。明日から役場で働くことになっているんですが・・・・」

と嬉しそうに言った後、申し訳なさそうに言う。

「あぁ、それは大丈夫です。ウォールさんから許可を貰っています。今まで教えて貰ったのでなんとかなりますって言ってました」

と伝えると嬉しそうな顔になる。この人自分の仕事大好きなんだろうなと感じた。自分がしている仕事に愛着を持っている人は丁寧な仕事をしてくれるのだ。

「わかりました。では建てるための設計図を書きましょう。それで土地の大きさはどれくらいなんですか?」

とワクワクしたような顔で言う。

「えっと、先ほどもお伝えした通り、貰いました・・・・」

「えぇぇぇぇぇ??」

「えぇ、全部です・・・・」

エルムは驚愕で止まる。ハジメは自分も全部って聞いた時同じような反応したなぁと思いつつ、エルムの再起動を待つ。数分後、彼は再起動を終えた。危なく10分超えるところであった。彼の瞳に光が戻ったのを確認して

「まぁ、そういう反応になりますよね・・・」

「・・・・あの・・・・どういった家を建てるんですか?あまり大きいと重さに耐えられないんですが・・・・」

とエルムが言う。

「あの、良ければ都合の良い日にマコンの街へ行きませんか?実際に目にしてもらった方がいいでしょうし」

とハジメが提案すると、

「・・・そうですね・・・。ハジメさんが良ければ明日でもいいですか?出来ればソラも一緒に連れていきたいんですが・・・」

とエルムが言う。明日は休みではないが、既に店はハジメが居なくても回るようになっている。商談はひかりが行うなえるし、コウとリナリーに店番任せても問題はない。重い物はジェフが手伝ってくれる。最近息子のキルト君が回復しているので、ジェフは1日働けるようになっている。家に一人には出来ないので、落ち着く午後からは彼は店に来て、遊んでいる。コウかリナリーのどちらかが相手をしているが、2人とも楽しそうにしている。特にコウは弟的な存在と認識しているようで、かなり可愛がっている。2人の情操教育としてもこちらとしてはかなり良い影響を与えているようだった。

「はい。大丈夫ですよ。では明日朝門が開く時間に東門集合でいいですか?」

と提案するとそれで大丈夫と答えた。それで外に出ると陽が傾き、赤い空になり始めていた。

そして翌日、チャーターした馬車にハジメとエルム、ソラが乗り込み、馬車の上にはわたるあいまいが居る。

「あ、城壁の前まで馬車で行ってそこから歩きですから。帰りはイブの街の門が閉まる前に着ける頃にまた馬車が同じ場所に来てくれるようになってますので」

とハジメが言うと、2人は「わかりました」と答える。そして馬車に揺られて2時間後、3人は元マコンの街の入り口をくぐった。平坦に整地された土地がそこにあった。

「・・・・こ、これは・・・・」

ソラが驚いている。

「えぇ、整地だけしておきました」

「・・・ハジメさん、整地ってレベルじゃないですよ・・・・」

エルムが呆れたように言う。ハジメは額に一筋の汗が流れていた。

「・・・もう大通りも出来ているじゃないですか・・・。これ、加工するのがかなり難しい紅石こうせきですよね。この硬くて丈夫な石がびっしりと綺麗に並べられて・・・・」

2人は驚きつつもハジメの後を付いてくる。10分程行くと北へ直角に曲がる。そこまで来るとエルムが

「・・・・ハ、ハジメさん。あれ、私が設計した防波堤ですよね?????」

と叫びながらハジメに顔を近づけ、防波堤を指さす。

「えぇ、前に書いて頂いたものを参考に作ってみました。かなり頑張りました。ローマンコンクリートを使ってみました」

と顔を引きつつ冷静にハジメが体を反らしながら言う。

「「・・・ローマンコクンリート???」」

ハジメはしまったと思った。コンクリートなんてこの世界にはなかったのだ。しかしもう自分が言ってしまったのだからしょうがない。

「・・・えぇ、火山灰とか石灰石を炎の魔法で焼いて、砂のように細かく砕くんですよ。それに水を入れて混ぜて乾燥させたら固まるんです。一応強固にするために砂利を入れてますけど。それをローマンコンクリートと名付けました・・・」

自分で試行錯誤して作ったわけじゃなく、古代ローマ人が考え時間を掛けて作り出したのに・・・・。ハジメは顔から火が出るほど恥ずかしく思った。ここは異世界で著作権などは関係しない。あったとしてももう古代の事であるか関係はしないだろうが・・・・。

因みにこのローマンコンクリートは塩害にはべらぼうに強い。ある資料によると塩分がコンクリートの中で結晶化することによりひび割れが起きにくくなっており、結合力が年々強まるとまで言われている。実際ハジメが居た頃、現代コンクリートと呼ばれていたモノは50-100年くらいが寿命と言われていたが、ローマンコンクリートに至っては既に1000年以上前のものなのに、現存していたのだ。それが様々な理由で作られなくなったとされている。宗教だったり、その建物の目的に似合わなかったりといった理由からであったらしい。

「取りあえずあの防波堤に行って下を見下ろしましょうか」

とハジメは提案し、3人は階段を上って行く。その間にエルムとソラはコンクリート叩いたりしていた。

「これはレンガよりもかなり硬い・・・・」

「それに飛び跳ねても跳ね返される感じ・・・」

ハジメはするっと見なかったことにして、上まで来ると街を見下ろした。そして街の北側を指さす。

「えっと、北側の山の麓あたりに市場マーケットを作ろうかと思っています。私の家は北西の城壁の端にとは考えているんですが・・・今決まってるのはこれくらいなんですが。何か案は無いですかねぇ?」

とハジメが言う。マコンの街の北は中国の崋山かざんのような山がそびえており、侵入者が入れないようになっている。その山の西にはかなり深い渓谷があり、街の西の城壁の1/10がその渓谷に沿って建っている。この部分は侵入者を阻害するというよりは街の人が落ちないようにという意味合いが強い。ハジメは家をその部分に建てようと思っているのだ。隅が好きというのもあったが、危険な箇所に人が入らないようにという意味合いもあった。

「なるほど・・・。じゃぁ、家は今の家を広くする感じにするの?」

とソラが聞いてきた。

「いえ、店舗部分は要らないかなと。その為の市場マーケットですから。そこに行けば全部揃うっていうのがいいかなって。それにイブの街に住居兼店舗あるので・・・」

とハジメが答える。

「そのことで悩んでるんですよね・・・イブの街に家があるのにここにもって。かなり贅沢ですよねぇ。それに管理も大変ですし・・・・」

と困った様な顔で言う。そんなハジメを見てエルムが

「・・・あの、もし、土地が余っているなら、孤児院建てくれませんか?」

申し訳なさそうに言う。

「え?でもイブの街にあるんじゃ?」

とハジメが言う。もしかしたら定員以上に孤児が居るのかもしれない。

「えぇ、あるのはあるのですが・・・・。正直土地・建物利用料が馬鹿にならなくて・・・。国からの援助と寄付では充分とは言えないんです。だから今の人数以上は預かれないなくて、他の街の孤児院に、という事が起こっているのです・・・」

とエルムとソラは顔を伏せる。

「・・・なるほど。それで孤児院は教会管理なのですか?」

とハジメは問う。これは大切な事である。宗教とは人の心に平穏を与えることが出来るかもしれない。しかし、1つの宗教を厚遇するわけにもいかない。すれば要らぬトラブルを生むことになる。それならば各々が心の中で神に祈る方が良い。大抵孤児院は宗教が運営することが多いのだ。

「そうですね。ゾロア教が運営していますね」

「ゾロア教?」

アマテラス様からの知識にはなかったはずだが、ハジメが覚えていないだけかもしれない。

「えぇ。神ゾロア様を祀る宗教ですね。万物は全てゾロア様に捧げ、信徒は質素倹約に生きるって言う教えですね。それで得た寄付で孤児院を運営しているのでここ数年でこの国に広がったはずです」

ハジメはため息を1つ付き、

「そのような教義だと、献金する人が多いのでは?それなのに?」

「えぇ。皆生きていくことに必死なのかもしれませんね」

これは私服肥やしてるパターンかもなと思いつつ話を終える。取りあえず今晩にでもひかりをお使いに出して聞いてもらおうかと思っているとハジメの頭に声が響く。

『ハジメ、俺だ。工芸神ハシャル・ハシスだ。ゾロアって神は幽世かくりよ常世とこよにはいない。シャプシェからの情報だが、人が勝手に作り出した宗教だそうだ。お前の思っているように私腹を肥やしているみたいだな。あ、俺はお前の防波堤とローマンコンクリート?に興味を惹かれてな。たまたま見てたんで答えてみただけだからな。建築材といい、ポーションクリームといい・・・。やっぱりお前良い技術広めてくれたなぁっ。俺は嬉しいぜっ』

そなんセリフと共になにかしらの熱気を感じる。”漢”と書いて”男”と読むみたいな・・・。

『あの、ハシャル様。万物の書ありがとうございました。これから色々作って行こうと思っています。それからアーシラト様の名前使ってもいいですか?』

と頭で話しかけるようにしてみると

『んー。アーシラト様よりもアシュタロテの方がいいかもしれんな。様は割と忙しいし、その下のシャプシェ様も多忙だからな。アシュは豊穣の神だから、食うに困ることもないだろうし、多産も司どってるくらいだから、子供大好きだし丁度いいんじゃね?』

『なるほど、ありがとうございました』

頭の中でお礼を述べて頭を下げる。数年でこの国に広がったという急速な布教を考えると何かしらからくりがあるのかもしれない。しかもろくでもないことだろう。

「では、考えるようにしますね。どうなるかはわかりませんが」

答えを明確にしないでおいた。

「えぇ。本当にすみません。無理なお願いということはわかっているのですが・・・。考えて頂けるだけでもありがたいです」

とソラとエルムは頭を下げた。

「あぁ、そうだ。教会って2つ作れます?」

とハジメは爽やかに2人にそう言った。
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