神々の依頼、面倒なんですけどっ!

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第5章 塔

90.女性と男性が会うみたいです

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周囲は木々で鬱蒼としており、足元には濁った水が流れ、カビなのか下水なのか分からないようなえた臭いが辺りを支配していた。太陽の陽は葉で遮られ、昼間なのにランプが必要なほどであるがとても蒸し暑い。風は淀み幾年も吹いていないようであった。踏みしめる大地は腐っているのか歩を進めるたびに足が埋もれていく。まるで泥沼を進んでいるかのようであった。そこを歩いていた男は顔をしかめ、マントで体を包みなおす。

「空気も淀んでいるなここは」

と独り言を呟いた。周囲には男以外に誰もいなかった。その発せられた声は誰かに向けられたものではなくただの恐怖を隠すためだったのかもしれない。

「本当に、ここにあるというのか・・・・」

男は呟き手元のコンパスを覗き込み、方角を確認した後、周囲を見渡す。虫や鳥の声も聞こえず、光も差さない。下手をすれば迷ってしまいそうであった。そう思った瞬間男の隣に気配が生まれる。男はとっさに口元以外を覆ったマスクを確認する。ずれてはいないようだった。

男の隣にいつの間にかいた女が

「うふふ。ここは相変わらずといったところですわね。いつもこんな感じでございますし」

と笑いながら言う。男は「ふん」と鼻を鳴らしマントで体を隠した。

「聞いていた通りここの住人は趣味が悪いな」

と言うと女は更に笑い声をあげた後

「ここに用があるから貴方様はいらっしゃったのでしょう?この教会へ」

と男の前に立ちふさがり聖女のような満面の笑みを浮かべて男を歓迎したのだった。

「そうだな。我が望みのためにな」

男の右口角が上がった。

「えぇ。そうでしょうとも。この園はその為にあるようなものでございますから。それであなた様の望みはなんでございましょうか?テーマを頂ければ、序奏から奏でさせていただきますわ」

と黒い司祭服を着た女がそう怪しく微笑み頭を垂れた。

「・・・・テーマはアヴァ王の失墜。演奏開始は1年後」

男がためらいもなくはっきりと言った。

「・・・あらあら、大層なテーマですわね。精一杯奏でさせて頂かないと。うふふ」

と女は野菜売って欲しいと言われたかのように笑って言った。

「かまわんさ。金額は先払いしておく」

そういって皮袋を女の足元へ放り投げる。しかし女がどうやったのか分からなかったがそれを手に持って立っていた。

「あらあら、白金貨100枚ですか・・・」

「それだけあれば十分だろう」

と男が言うと、女司祭は

「そうですわね。わりとふんだんなオプションをつけれますわ」

と変わらぬ笑みで答えた。

「そこは任せる」

と男は言い、きびすを返して元来た道を帰って行った。

「あらあら。そんなに慌てなくても宜しいのに。貴方と罪深き教会シンフルチャーチの御加護がありますように」

男の背に女司祭の声が降りかかった。まるで呪いを掛けているかのように。


男が森を抜け陽の下に戻ると肺の中の薄汚れた空気を吐き出すように深い呼吸を繰り返す。

「・・・気味の悪いものだ・・・。我が主の依頼でなければこんなところには来なくて済んだものを・・・」

そう吐き捨てるように言って仮面を外し、今しがた出て来たばかりの森へ投げ捨てた。切れ長の美しい目で軽蔑した視線を森へと、女司祭へと送った。吐いた息は白くなり、背中に掻いた汗が凍りそうであった。

男は入り口の木に留めていた綱を外し馬に乗り、小一時間ほどの場所にあるアヴァ国の王都へと帰って行った。


~とある場所~


俺はもうどれくらいここにいるのだろうか・・・。目を開けても閉じても同じ。ここは漆黒。一筋の光さえない場所。

俺が俺として意識し始めてからいったいどれくらいの時間が流れたのか。

でも近頃何か暖かい気持ちになる。何かがもうすぐ俺をここから連れ出してくれるようなそんな気がする。

・・・・あぁ、また来た。嫌な奴らだ・・・・。俺の心をざわつかせる・・・・。

消えて欲しいが、まだ力が足りない。あいつらは知らないのだろう。漆黒と闇は違うということを。あぁ、鬱陶しい・・・・。もう一度眠ってしまおう・・・・。

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