神々の依頼、面倒なんですけどっ!

はなを

文字の大きさ
166 / 173
第6章 新しい国

145.やっぱりチートみたいです

しおりを挟む
昼になり、食堂兼酒場からピザの焼ける匂いと賑やかな笑い声が風に乗って聞こえてくる。ハジメが楽しそうな声に聞き入っていると、書斎のドアをノックする音がする。扉の方を見ると、

「旦那様、お昼の準備が出来ました」

とウィリアムが告げる。ハジメは「今行く」と言い、食堂へ向かった。ハジメ的には一緒に食堂で摂りたかったのだが、そうすると皆が緊張するだろうと思い、家で摂ることにしたのだ。上司的な人が一緒のお昼休憩だとやはり気を使ってしまうのはどの世界でも当然だろう。

食堂に入ると既にオーダとイッチーは椅子に座っていた。ハジメがその間に座ると、料理人のセロが焼きたてのピザを3枚運んできた。トマトソースとチーズを乗せて焼いたピザの上にサラダを後乗せした「生野菜ピザ」である。暫くは皆の野菜不足を補うために野菜中心の食事を提供するようにお願いしている。

「ありがとう、セロ」

ハジメが礼を言うと、頭を軽く下げウィリアムとパトリシアの横へと立つ。30分ほどで食事を済ませると、

「父上ー。ジャイルたちと学校で遊んでくる」

そう言ってオーダは立ち上がったので、「気を付けて遊んでおいで」と注意すると「はーい」と言って食堂から出て行った。

「それにしても旦那様。ピザはこういう食べ方もあるのでございますね」

執事のウィリアムが声を掛けてくる。ハジメの隣でイッチーもうんうんと頷いていた。

「うん。そうだね。ピザには何乗せても大抵美味しくなるよ。焼く前に半分に折って焼いたらカルツォーネって呼ばれるものにもなるよ。それだと具材の温度が下がりにくいから時間をおいても熱々で食べれるからパーティーとかではいいかもね」

神々に作った食事を思い出しながらハジメが告げる。

「・・・・なんと、そんな食べ方が!早速作ってみないと」

セロが呟く。ハジメは笑って、

「ウィリアムやパトリシアたちメイドさんはこれからご飯でしょ。僕も手伝うから作ろうか」

そう言うとセロは嬉しそうに目を輝かせた。30分後には使用人たちの前にカルツォーネが並び、その10分後にはそれは皿の上から姿を消していた。ハジメと一緒に朝ごはんを食べたイッチーさえもあっという間にカルツォーネを同じ時間で完食していたのには驚いた。ピザを半分に折っただけなのにと思ったが、ハジメ的には皆満足そうな顔をしているのでそれで充分だった。

「ウィリアム。今晩来る人たちの家ってどうしようか・・・。孤児は孤児院に入ってもらうけど・・・」

ハジメが執事長に声を掛けると一瞬にして仕事モードに戻ったウィリアムは、

「そうでございますね。孤児たちはそれで良いかと思います。女子棟で空いているのは20室、男子棟が15室ですね。家族棟が20室ほど空いて居りますが、内訳が分からないのでなんとも言えませんね・・・」

と考え込む。その時ハジメの脳裏にアナトの声がする。

『ハジメ。子供が24、男の奴隷が20、女の奴隷が34。そのうち家族が14で、孤児は10人だ』

それをハジメが執事に伝えると、

「では孤児院に10人、男子棟に6人、女子棟に20人、家族棟に14組ですね。それならば問題はないでしょう」

と整理してハジメに伝えてくれる。

「・・・ところで旦那様。神像の近くであるとは言え教会ではない場所で神様とお話が出来るのですか?」

「そうだね。声をかけられたら出来るけど、こっちから声をかけれるかはわからないよ」

ハジメがそう答えるとウィリアムはパトリシアと視線を合わせため息を吐いた。

「「「・・・旦那様(ハジメさん)ですから・・・」」」

常識人2人とイッチーは同時にそう呟いたのだった。一般的に神と交信するためには信仰する神の加護を受けたものが長年神に仕えら末に、人柄を認められた人物のうちの1%くらいが神の声を聴くことが出来ると言われている。全世界に1人いるかいないかくらいである。その選ばれた人物でさえも聖地で神像に年単位で祈りを捧げてようやく5秒程度である。容易く神から情報を得たり、会話したり、神に頼られたりするハジメがいかにチートなのかがよく分かるだろう。ハジメ的にはいつもいつも面倒事を持ち込まれるため敬う気持ちも少しずつ薄れているのだが・・・。

「ウィリアム。男子棟、女子棟、家族棟のリーダーとサブリーダーに伝えておいて貰える?あ、それと、今から家を建てるから、ハロルド一家と農家の3家族にはそちらに移って貰えるように聞いてみるから」

「畏まりました。もう1棟建てられるのですか?」

ウィリアムが問うと、

「いや、ハロルド一家には食堂の管理を任せたいからね。今挙げた4家族は朝早くから活動するだろうから、一軒家の方が他の人に気を遣わずに生活できるかと思って」

「確かにそうでございますね。朝ごはんの準備もあるでしょうし、食材も搬入しないといけませんから。畜産のトニーとトビーはどうしましょう?」

この世界で朝ごはんにはトニーとトビーのソーセージ、ハム・ベーコン、卵は欠かせない重要なタンパク質である。

「それは大丈夫。冷蔵庫を学校の地下に作ってるからそこから、鮮度は問題ないよ。それにあの2人が一軒家を使うとなると、アセナの負担が大きくなりそうだし」

そう言って戦闘メイドの彼女に視線をやれば、頭を下げるアセナが居た。表情は変わらないがやはり負担が大きいのだろう。

「イッチーさんは今日はどうされますか?」

「そうですな。ハジメさんが宜しければ、街を見て回りたいと思っております」

イッチーが目を輝かせながら言った。彼は既に街の人々にその存在を認知されているため、彼が街の中を歩き回っても住人たちに不安は広がらない。

「えぇ。良かったら見て回って頂いて、修正した方がいい場所があれば教えて頂けたらと思います。よろしくお願いします」

とハジメが彼に言うと、彼はバッグからノートを取り出し、街へ向かっていった。ハジメとはくはハロルドたちと3農家を連れて一軒家の場所を決めに空き地がある学校の裏あたりにきた。4家族で話し合った結果場所も決まった。順番に家を建てて行くので、完成し次第順次引っ越しをしてもらうことになった。やっぱり朝は音を立てないようにかなり気を使っていたようでとても喜んでもらえたのだった。

「あ、そう言えば旦那様。トニーとトビーが畜産場のことで相談したいって言ってましたよ」

とジェフに言われたので訪れてみると、カプリンブリントコッコンを放牧する場所が狭いと言われたので、これからのことも考え50倍まで拡張しておいた。食料的には今の数で問題はないだろうが、余剰分をイッチーを通して販売することも可能になるだろう。

そして夕方になり、皆が教会へと集まったのだった。丁度いいと思い、オーダとプリモたちを紹介したのだった。そして10分ほどして神像が光り、その場に88名のにえに選ばれた者たちが突如として現れたのであった。

「ここが楽園・・・・?」

一人のずんぐりむっくりの男が言葉を発する。

「楽園?なんのことかは分かりませんが、ここは私たちが住む町ですよ。神様から話は聞いていますので、取り敢えず皆さんには家へと案内させていただきますね。その後食事にしますのでその時色々お話をさせていただきます」

ハジメをそう言ってウィリアム、パトリシア、アセナとミミに目配せをすると彼らは贄にされた人々と住民たちを連れて教会を出て行った。

『ハジメ。贄にされた者たちには説明をしておいた。既に奴隷の立場ではないようにしている。申し訳ないがよろしく頼む。これはバアルの神器『風の竪琴』。奏でれば雨雲をよんだり散らしたりできる。今回のこと本当に感謝する』

そう言って声は聞こえなくなり、祭壇には一台の竪琴が緑の光を帯びて置かれていた。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安
ファンタジー
ごく普通のフリーター・岩倉運命は謎の少年に刺され、命を落としてしまう。そんな岩倉運命だったが、サダメ・レールステンとして転生を果たす…

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界異話 天使降臨

yahimoti
ファンタジー
空から天使が降って来た。 落ちたんだよ。転生かと思ったらいきなりゲームの世界「ロストヒストリーワールド」の設定をもとにしたような剣と魔法の世界にね。 それも面白がってちょっとだけ設定してみたキャラメイクのせいで天使族って。こんなのどうすんの?なんの目的もなければ何をしていいかわからないまま、巻き込まれるままにストーリーは進んでいく。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

ヤンデレ女神と征く開拓スローライフ。

山椒
ファンタジー
両親に、友達に、恋人に、嫁に裏切られ続けた男、神室千照は絶望して自ら命を絶った。 すべてが終わるという安堵感であったが次に目覚めた時には女神が目の前にいた。 千照のことをずっと見ていた女神、アマテラスは千照に異世界転生を提案する。 まだ人生に未練があった千照はそれを受け入れ、二度目の人生を送ることになる。 だが千照は知らなかった。千照にはとてつもない才能が秘められていることを。 千照は知らなかった。アマテラスがヤンデレであることを。 千照は知らなかった。彼を裏切らないものはとてつもない人格の持ち主であることを。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

処理中です...