思い出のムーンライト 〜遠き過去の3年間〜

ゼムス侯爵🌉

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28歳

一時退院、そして失恋。

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1月下旬。私はクダをつけたまま退院した。

暗く寒い午前だった。

自由にはなれたが、ひどく寂しがっていることに自分で気づいた。

夜になり寂しさは増してきた。

「妹よ。車を貸してくれ。」

「うん。」

車内で大河ドラマ新選組の曲を流しコンビニへ向かった。

Hぴょんにメルアドを伝えよう。



私は喫茶店で源と会っていた。源は1つ年下の幼なじみだ。

「やせたね。」

「前半は絶食で点滴だけだったから。」

15㌔減った。

「Hさんとは?」

「会えた🎵メルアドを渡せた🎵」

「よかった🎵」

7年ぶりの友、平の言葉を思い出した。

「もう相手いるはずなんだからやめたほうがいいって🎵」

あいつは本当にうるさい奴だ。(笑)


Hぴょんからのメールは来なくなった。私は不安になった。

下船から3ヶ月近く経った。

お袋とは喧嘩をくり返し、親父は持病で弱っていた。

妹は家族全体のために内心悩んでいた。

明日は主治医の書いてくれた紹介状を取りに行き、そのまま日赤病院へそれを持っていくことになる。

今夜、Hぴょんにもう一度メールしよう。そろそろ決着だ。


15年来の親友、平の言葉をまた思い出した。

「どうせ、その新米ナースのコにはすでに恋人がいるんだから🎵」

やかまし。その確認をこれからするんだガヤ。(笑)

幼なじみ源の言葉を思い出した。

「Zちゃん。頑張って🎵」

お前は本当にいい奴だわさ。

メール着信音が鳴った。

Hぴょんからだった。


Hぴょんからのメールに安心したと同時にひどく緊張していた。

彼氏はいないと他の患者さんから聞いたことがあった。

[今度、食事へいこう🎵]

私にはラーメン屋しか思い浮かばなかった。

[Hぴょんさ、彼氏がいるんだ。彼氏はヤキモチ焼き屋さんだから。(T_T)]

なんだと??

一瞬だけ動揺した。だが、すぐに気を取り直した。

望みがうすいことは初めから分かっていたことだ。

[ヤキモチ焼きの気持ちはわかる🎵同じHぴょんを愛する者として🎵]

最後の悪あがき。私はブレーキが効かなくなった。

[愛するって。(⁠ᗒ⁠ᗩ⁠ᗕ⁠)]

かけひきなど興味はない。最後の悪あがきをするしかなかった。

[ヤキモチ焼きって(⁠ᗒ⁠ᗩ⁠ᗕ⁠)。私は頑固でワガママなんだよ!]

[知っとった🎵そんなこと。(笑)]

数回のメールのラリーは続いた。まるで卓球やテニスのように。

だが、

[Zさんの気持ち本当にうれしく思います。ごめんなさい。ありがとうございます。

まだ、私は未熟な看護師ですが色々と相談に乗らせてもらいます。]

こうして、Hぴょんとのメールは終わった。

「妹。車を貸してくれ。」

「うん。」

車で出かけた。車内にはトランス音楽をかけていた。

サークルKにはいつもの青年が店番だった。

「おお。兄ちゃん🎵今日も夜勤かね?タバコちょうだい🎵」

タバコを買いサークルKをでた。

Hぴょんと会うことはもうなくなった。しかし、いい出会いだった。

夜空を見上げた。星が多くきれいだった。


2005年2月。

市民病院の受付広場は人が多かった。私にはなぜかそれが穏やかな光景に思えた。

紹介状をもらった私は病院をでた。

別れの寂しさには幼少期からなれてきた。

私は車に乗り日赤のある名古屋へ向かった。

空はどこまでも青かった。

《この1年後。Hぴょんは結婚しご懐妊とのこと。》
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