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Chapter2〈4 クラスの王様〉
ep42 学級委員は、修学旅行も忙しい。②
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その後、部屋の中は大いに盛り上がった。女子たちが他のカードゲームやポケット式のボードゲームをもってきていたおかげで、就寝時間を過ぎ、ようやく女子たちが部屋を出た頃には夜中の3時近くになっていた。
悠真たちも大人しく布団にもぐった。それでもまだ遊び足りない小林や中川たちが、お菓子の袋を開けながらこそこそ話しては笑っている。咲乃はどっと疲れがやってきて、時々話しかけられてちょっかいを出されても、がんとして寝たふりをした。
翌日、咲乃は朝の6時には起き出して、シャワーを済ませると身支度を整えた。朝の7時から学級委員のみの朝礼と、食堂の受付の仕事がある。名簿で、来たグループをチェックして、テーブルの番号札を渡すのだ。
朝礼は簡単に済まされた。怪我人が出ないように再三注意喚起がされた後、各自仕事に入った。咲乃は副委員長と一緒に受付に立って、やってきたグループに番号札を渡して席の案内をする。朝食はバイキング式で、自分で好きな料理を好きなだけとっていいことになっている。
悠真たちも、時間通りにちゃんとやってきた。昨晩騒ぎすぎたのが影響して若干元気がないが、咲乃が人数を確認してチェックをすると「後でな」と、それぞれ一言声をかけてバイキングの列に加わった。
一通り全クラスのグループがそろい、咲乃たちは担任に報告を済ませて自分たちの朝食を取りに行く。そのときだった。食堂に女子の悲鳴が起こった。咲乃が騒ぎに駆け付けると、女子達が一人の女子を取り囲んで、心配そうに声をかけていた。その少し離れた場所で、西田は床にひっくり返った料理とお盆を、青い顔で呆然と眺めていた。
「大丈夫?」
西田の落とした料理が、女子の手に掛ったのだ。やけどしたらしく、痛そうに赤くなった手を押さえている。クラスメイトたちが騒然とする中、咲乃は清潔な冷たい布巾を女子生徒の手に巻き付けた。
「笹本さん、戸塚さんを養護教諭の先生のところへ連れて行ってくれる?」
咲乃が副委員長に頼むと、副委員長は「わかった」とうなずいて火傷した女子生徒を養護教諭まで連れて行った。
「西田最低」
「戸塚さん可哀想」
「謝れよ」
咲乃が雑巾を取りに戻ると、女子達が声を潜めて話しているのを聞いた。西田は白い顔で突っ立っていた。頭が真っ白になって正常な判断ができないのだ。自分がしたことに理解が追い付いていない様子で固まっている。
「西田くん、床拭くの一緒に手伝ってくれる?」
咲乃が西田に雑巾を手渡すと、西田は震える手で雑巾を受け取った。
咲乃が床の汚れを片付けようとしていると、女子達が慌てて咲乃を止めた。
「篠原くんはやらなくていいよ、私たちがやるから!」
「学級委員のお仕事だけでも大変なんだから、私たちのことも頼って!」
「……うん、ありがとう」
数名の女子達は咲乃から雑巾を取り上げると、自分たちでせっせと雑巾がけを始めた。
「清水達がやってるんだからすぐに終わるよ。ここは清水たちに任せて、朝食取りに行けば?」
咲乃が心配して様子を窺っていると、悠真がバイキングの列を指さした。もうほとんどのグループは席に着いたようだ。バイキングの列も、最後尾が見えている。
女子達が手際よく床にこぼした料理をふき取っている横で、西田はうまくふき取れずに悪銭苦闘していた。周囲の視線と罪悪感で緊張しているらしかった。ただ拭くだけなのに、床を汚すだけで全く作業が進まない。
「西田くん、邪魔なんだけど。ろくに掃除もできないわけ?」
「……ご、ごめ――」
女子の一人が、西田を無理やりどかせた。小さな謝罪の言葉も、どかされた拍子に途切れてしまった。
咲乃は、途方に暮れたように立っている西田の肩を叩いた。
「西田くんも、朝食を取りに行こう。清水さん、あとはお願いね」
咲乃が女子達に声をかけ、西田と一緒にバイキングの列の最後尾に並んだ。
それぞれがテーブルに着き、朝食にありついていたころ、咲乃は西田の方を見た。西田のいるグループはクラスでも大人しい子ばかりが集まっていて、和やかに喋っているという雰囲気ではない。その中でも西田の顔色は青ざめ、見るからに具合の悪そうな顔をしていた。食欲も起こらないらしく、食事も進んでいない。
「気にすんなって」
咲乃の視線の先に気づいて、悠真が言った。
「篠原は委員長だからって他人の事気にしすぎ。せっかくの修学旅行なのに、人の世話で終わらせるつもり?」
「……そうだね、気を付けるよ」
困っている生徒がいれば助けるのが委員長の役割だが、今、咲乃ができることは何もない。悠真の気遣いに、咲乃は素直に頷いた。
悠真たちも大人しく布団にもぐった。それでもまだ遊び足りない小林や中川たちが、お菓子の袋を開けながらこそこそ話しては笑っている。咲乃はどっと疲れがやってきて、時々話しかけられてちょっかいを出されても、がんとして寝たふりをした。
翌日、咲乃は朝の6時には起き出して、シャワーを済ませると身支度を整えた。朝の7時から学級委員のみの朝礼と、食堂の受付の仕事がある。名簿で、来たグループをチェックして、テーブルの番号札を渡すのだ。
朝礼は簡単に済まされた。怪我人が出ないように再三注意喚起がされた後、各自仕事に入った。咲乃は副委員長と一緒に受付に立って、やってきたグループに番号札を渡して席の案内をする。朝食はバイキング式で、自分で好きな料理を好きなだけとっていいことになっている。
悠真たちも、時間通りにちゃんとやってきた。昨晩騒ぎすぎたのが影響して若干元気がないが、咲乃が人数を確認してチェックをすると「後でな」と、それぞれ一言声をかけてバイキングの列に加わった。
一通り全クラスのグループがそろい、咲乃たちは担任に報告を済ませて自分たちの朝食を取りに行く。そのときだった。食堂に女子の悲鳴が起こった。咲乃が騒ぎに駆け付けると、女子達が一人の女子を取り囲んで、心配そうに声をかけていた。その少し離れた場所で、西田は床にひっくり返った料理とお盆を、青い顔で呆然と眺めていた。
「大丈夫?」
西田の落とした料理が、女子の手に掛ったのだ。やけどしたらしく、痛そうに赤くなった手を押さえている。クラスメイトたちが騒然とする中、咲乃は清潔な冷たい布巾を女子生徒の手に巻き付けた。
「笹本さん、戸塚さんを養護教諭の先生のところへ連れて行ってくれる?」
咲乃が副委員長に頼むと、副委員長は「わかった」とうなずいて火傷した女子生徒を養護教諭まで連れて行った。
「西田最低」
「戸塚さん可哀想」
「謝れよ」
咲乃が雑巾を取りに戻ると、女子達が声を潜めて話しているのを聞いた。西田は白い顔で突っ立っていた。頭が真っ白になって正常な判断ができないのだ。自分がしたことに理解が追い付いていない様子で固まっている。
「西田くん、床拭くの一緒に手伝ってくれる?」
咲乃が西田に雑巾を手渡すと、西田は震える手で雑巾を受け取った。
咲乃が床の汚れを片付けようとしていると、女子達が慌てて咲乃を止めた。
「篠原くんはやらなくていいよ、私たちがやるから!」
「学級委員のお仕事だけでも大変なんだから、私たちのことも頼って!」
「……うん、ありがとう」
数名の女子達は咲乃から雑巾を取り上げると、自分たちでせっせと雑巾がけを始めた。
「清水達がやってるんだからすぐに終わるよ。ここは清水たちに任せて、朝食取りに行けば?」
咲乃が心配して様子を窺っていると、悠真がバイキングの列を指さした。もうほとんどのグループは席に着いたようだ。バイキングの列も、最後尾が見えている。
女子達が手際よく床にこぼした料理をふき取っている横で、西田はうまくふき取れずに悪銭苦闘していた。周囲の視線と罪悪感で緊張しているらしかった。ただ拭くだけなのに、床を汚すだけで全く作業が進まない。
「西田くん、邪魔なんだけど。ろくに掃除もできないわけ?」
「……ご、ごめ――」
女子の一人が、西田を無理やりどかせた。小さな謝罪の言葉も、どかされた拍子に途切れてしまった。
咲乃は、途方に暮れたように立っている西田の肩を叩いた。
「西田くんも、朝食を取りに行こう。清水さん、あとはお願いね」
咲乃が女子達に声をかけ、西田と一緒にバイキングの列の最後尾に並んだ。
それぞれがテーブルに着き、朝食にありついていたころ、咲乃は西田の方を見た。西田のいるグループはクラスでも大人しい子ばかりが集まっていて、和やかに喋っているという雰囲気ではない。その中でも西田の顔色は青ざめ、見るからに具合の悪そうな顔をしていた。食欲も起こらないらしく、食事も進んでいない。
「気にすんなって」
咲乃の視線の先に気づいて、悠真が言った。
「篠原は委員長だからって他人の事気にしすぎ。せっかくの修学旅行なのに、人の世話で終わらせるつもり?」
「……そうだね、気を付けるよ」
困っている生徒がいれば助けるのが委員長の役割だが、今、咲乃ができることは何もない。悠真の気遣いに、咲乃は素直に頷いた。
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