13 / 16
13.本の包みを開封しましょう
しおりを挟む
こんこん。
ドアをノックされたので、するりとユリアがそちらに向かいました。この部屋に来てノックをするのは、ダーヴィド様かハッリでしょう。ですから、ユリアが応答するので良いのです。
まだわたくしは、この家の住人ではありませんから。応答することも出来かねます。
「ダーヴィド様がお迎えにいらっしゃいました」
ユリアが戻ってきて、そっと教えてくれます。
「わかりました」
お出かけから戻ってきたときに着替えた部屋着は、確かに少し楽なものですけれど。それでも実家にいた時ほど気楽なものではありません。わたくしの中ではお出かけ着に含まれる程度にはちゃんとしたものです。
ですから、そのまま、ダーヴィド様のエスコートを受けてお夕飯の席まで行っても問題がありません。
最初の日、わたくしの持ってきたこの部屋着に、ユリアたちは驚いておりました。アハマニエミ伯爵家では、これが部屋着なのかと。
フィルップラ侯爵家には女児がおりませんでしたから、分からなかったようで。こっそりと、新しく部屋着ということにして卸したお出かけ着であるとお伝えしましたら、ほっとされていました。
それは、そうでしょう。お出かけ着であっても良い仕立てのものを部屋着とするとなると、お金のとてもかかる奥様になってしまいますもの。
けれど伯爵家の娘が。侯爵家にお見合いに来ているのですから。こういったものを部屋着とすることになるのは、致し方のない事なのです。もっとも、侯爵家に仕えるもの達は下級とはいえ貴族の出も多いので、わかって頂けましたけれど。
ダーヴィド様にエスコートされて、一階の食堂に参ります。贈って頂いたご本は、わたくしたちが夕食をいただいている間に、一階の応接室にユリアたちが運んでおいてくれることでしょう。
お夕飯は貝のオムレツに、兎のお肉のパイ。
ダーヴィド様とは、舞台のお話をしたりして、楽しく夕食の時間は過ぎていきました。
応接室の一つへ移動して。勿論、たとえ短距離であっても、ダーヴィド様にエスコートしていただきます。
わたくしも、ダーヴィド様も。エスコートするのもされるのも、慣れなければいけませんから。たとえ相手が誰であっても、勿論できますけれど。そうではなくて。
夫婦ですとか、婚約者ですとか。そういうのが一番、丁度よくエスコートできるべき、という風潮があります。ですから、お披露目の時のための練習ですね。最短は明後日ですけれど、それはお披露目式で身内しか来ないので数えなくてもよろしいでしょう。次は、王宮の夜会かしら。
腕の位置ですとか、歩幅ですとか。今は意識しないと丁度良く、出来ませんけれど。いつか両親のように、丁度よくできるようになりたい、というのが、貴族子女のちょっとした憧れだったりします。
ローテーブルの上には、買っていただいた本の包みが二つ。ハッリとその奥方、それからユリアと、興味のあるメイドたち。顔も知らぬ方もいらっしゃいますけれど、わたくしはおすまし顔です。
食後のお茶の類は、ハッリの奥方のそばのワゴンに置いてあります。まだカップには淹れられておらず、きっと、ポットにも入れていないでしょう。だって渋くなってしまいますもの。
ダーヴィド様はゆったりと向かいのソファに深く腰掛けています。開けるのは、わたくしにゆだねて下さっているのでしょう。
「皆も楽しみにしていることだし、開けてから、明日について話そうか」
「ええ、そういたしましょう」
ここで明日の事を先に相談、となったら、メイドたちからブーイングが起きそうですもの。私がメイドでも、文句を言いたくなりますわ。
わたくしはそう言って、一つ目の包みに手を伸ばします。包装してある布は赤。小さく、店名が刺してあるきりです。寡聞にして知りませんでしたけれど、こんなことが出来る程度には、有名店なのでしょう。
包まれていたのは、イラリの書いた三作目の脚本の、第二版でした。この回が大ヒットをし、超ロングランになったのです。少しずつ手を加え、確か八年ほど上演されていたはずです。
「まあ! この回、お祖母様のお気に入りだったの!」
黒い革の装丁に、銀の飾り文字。ちょっとかすれてしまっている所もありますけれど、それは風合いがあってよいと思います。
お祖母様がとてもお好きで、実家の書庫に数冊御座います。これは、フィルップラ侯爵家の書庫にないのであれば、こちらの蔵書にいたしましょう。
「それでは、ご実家に持って行かれる?」
「いいえ、実家は書庫にありますわ。お祖母様、何度か興業掛けられましたのよ」
お願いをすれば、劇団の皆さんがこの演目をやってくださるのです。領地でのお祭りの際、良くかけられておりました。ですから、アハマニエミ伯爵領では、みんなよく知っています。
ですからフィルップラ侯爵家の書庫に、とお伝えしたら、メイドさんたちが喜んでおりました。どうぞ皆様でお読みになってね。
それとも、わたくしが読書会を開くべきなのかしら? 後でユリアたちに相談してみましょう。
フィルップラ侯爵家ではどうかわかりませんけれど、メイドが書庫の本に触れるのを嫌がる家もあります。別に彼女たちが、現在勤めている彼女たちが何か粗相をする、というわけではないのですけれど。大体そう言うお家は過去に何かあって皆が過敏になっているのです。
それに、この革の装丁の本を自室に持って帰るのは、ちょっと勇気がいりますしね。
もう一冊は、緑色の光沢ある布に包まれています。こちらに入っていたのは、先ほどと比べると小さい本。そういえば気にしませんでしたけれど。戯曲も詩集も、厚さや大きさ、装丁などが違うはずです。そういったところで、わかる方もいるのではないでしょうか。
わたくしは、お店の方に選んでもらってしまいましたけれど。
この本は、詩集でした。そうです。アーダ・ヤコイラの! 『赤い薔薇には棘があるが』です。
表紙に描かれているのは棘のある枝を持った赤い薔薇です。もしかしないでこれは、初版ではないかしら?
「ねえどなたか。どなたかわたくしの代わりに確認してくださらない?」
どなたか、といっていますけれど、視線はハッリの奥方に向かっているのは否めません。ダーヴィド様が分かるのでしたら、ダーヴィド様に確認していただいてもよいのですけれど。
「ではわたくしが」
ウキウキと、という表現がぴったりと当てはまるように、ハッリの奥方がこちらへやってきてくれました。メイドさん達も、目をキラキラさせて見ています。多分、わたくしも同じようになっているでしょう。
「失礼して」
「ええ、お願い」
ハッリの奥方に本を手渡して。彼女はぺらりと、表紙をめくりました。
「ああ!」
そうしてその唇から飛び出すのは感嘆。
「おめでとうございます、お嬢様! 初版ですわ、これは初版です!」
「まあ! ダーヴィド様、ありがとうございます!」
これが結婚後であったのなら、抱き着いてキスの一つでも、母が父にやっているように、するくらいの喜びです。けれどまだわたくしたちは婚約者ですらないのですから、お礼を口にするにとどめるしかできません。
ハッリの奥方はそっとテーブルに本を置くと、元居た場所に静かに戻っていかれました。
「喜んでいただけたようで何よりだ。贈り物で喜んでもらえるのは、なんとも嬉しいものだね」
ダーヴィド様は穏やかにほほ笑んで、こちらを見ておられます。ちょっと、気恥しいですね。
気を取り直して、明日のお話です。
ローテーブルの上に置いてあった本をユリアが恭しくわたくしの部屋と持ち帰り、ハッリの奥方がわたくしたちにお茶を供してくださいました。今夜よく眠れるようにと、ハーブティーだそうです。
明日は、ダーヴィド様のご両親がこちらのお屋敷にやってきます。そして、さらに翌日に、フィルップラ侯爵家にてお披露目式を行うとの事です。
わたくしはてっきり、明後日ではなく、もう一日後にお披露目式だと思っておりました。明後日は自宅に帰って、その翌日にこちらに伺ってお披露目式だとばかり。
「明日、私と一緒に両親を出迎えて貰いたい」
「承りました」
王命とはいえ、年頃の男女が一つ屋根の下でお目付け役であるご両親がいらっしゃらない状態ですもの。フィルップラ侯爵様は気が気ではないでしょう。それとも、ダーヴィド様の事を信頼しているからお気になさっていないかしら?
それらもすべて、明日会えばわかりますわね。
ドアをノックされたので、するりとユリアがそちらに向かいました。この部屋に来てノックをするのは、ダーヴィド様かハッリでしょう。ですから、ユリアが応答するので良いのです。
まだわたくしは、この家の住人ではありませんから。応答することも出来かねます。
「ダーヴィド様がお迎えにいらっしゃいました」
ユリアが戻ってきて、そっと教えてくれます。
「わかりました」
お出かけから戻ってきたときに着替えた部屋着は、確かに少し楽なものですけれど。それでも実家にいた時ほど気楽なものではありません。わたくしの中ではお出かけ着に含まれる程度にはちゃんとしたものです。
ですから、そのまま、ダーヴィド様のエスコートを受けてお夕飯の席まで行っても問題がありません。
最初の日、わたくしの持ってきたこの部屋着に、ユリアたちは驚いておりました。アハマニエミ伯爵家では、これが部屋着なのかと。
フィルップラ侯爵家には女児がおりませんでしたから、分からなかったようで。こっそりと、新しく部屋着ということにして卸したお出かけ着であるとお伝えしましたら、ほっとされていました。
それは、そうでしょう。お出かけ着であっても良い仕立てのものを部屋着とするとなると、お金のとてもかかる奥様になってしまいますもの。
けれど伯爵家の娘が。侯爵家にお見合いに来ているのですから。こういったものを部屋着とすることになるのは、致し方のない事なのです。もっとも、侯爵家に仕えるもの達は下級とはいえ貴族の出も多いので、わかって頂けましたけれど。
ダーヴィド様にエスコートされて、一階の食堂に参ります。贈って頂いたご本は、わたくしたちが夕食をいただいている間に、一階の応接室にユリアたちが運んでおいてくれることでしょう。
お夕飯は貝のオムレツに、兎のお肉のパイ。
ダーヴィド様とは、舞台のお話をしたりして、楽しく夕食の時間は過ぎていきました。
応接室の一つへ移動して。勿論、たとえ短距離であっても、ダーヴィド様にエスコートしていただきます。
わたくしも、ダーヴィド様も。エスコートするのもされるのも、慣れなければいけませんから。たとえ相手が誰であっても、勿論できますけれど。そうではなくて。
夫婦ですとか、婚約者ですとか。そういうのが一番、丁度よくエスコートできるべき、という風潮があります。ですから、お披露目の時のための練習ですね。最短は明後日ですけれど、それはお披露目式で身内しか来ないので数えなくてもよろしいでしょう。次は、王宮の夜会かしら。
腕の位置ですとか、歩幅ですとか。今は意識しないと丁度良く、出来ませんけれど。いつか両親のように、丁度よくできるようになりたい、というのが、貴族子女のちょっとした憧れだったりします。
ローテーブルの上には、買っていただいた本の包みが二つ。ハッリとその奥方、それからユリアと、興味のあるメイドたち。顔も知らぬ方もいらっしゃいますけれど、わたくしはおすまし顔です。
食後のお茶の類は、ハッリの奥方のそばのワゴンに置いてあります。まだカップには淹れられておらず、きっと、ポットにも入れていないでしょう。だって渋くなってしまいますもの。
ダーヴィド様はゆったりと向かいのソファに深く腰掛けています。開けるのは、わたくしにゆだねて下さっているのでしょう。
「皆も楽しみにしていることだし、開けてから、明日について話そうか」
「ええ、そういたしましょう」
ここで明日の事を先に相談、となったら、メイドたちからブーイングが起きそうですもの。私がメイドでも、文句を言いたくなりますわ。
わたくしはそう言って、一つ目の包みに手を伸ばします。包装してある布は赤。小さく、店名が刺してあるきりです。寡聞にして知りませんでしたけれど、こんなことが出来る程度には、有名店なのでしょう。
包まれていたのは、イラリの書いた三作目の脚本の、第二版でした。この回が大ヒットをし、超ロングランになったのです。少しずつ手を加え、確か八年ほど上演されていたはずです。
「まあ! この回、お祖母様のお気に入りだったの!」
黒い革の装丁に、銀の飾り文字。ちょっとかすれてしまっている所もありますけれど、それは風合いがあってよいと思います。
お祖母様がとてもお好きで、実家の書庫に数冊御座います。これは、フィルップラ侯爵家の書庫にないのであれば、こちらの蔵書にいたしましょう。
「それでは、ご実家に持って行かれる?」
「いいえ、実家は書庫にありますわ。お祖母様、何度か興業掛けられましたのよ」
お願いをすれば、劇団の皆さんがこの演目をやってくださるのです。領地でのお祭りの際、良くかけられておりました。ですから、アハマニエミ伯爵領では、みんなよく知っています。
ですからフィルップラ侯爵家の書庫に、とお伝えしたら、メイドさんたちが喜んでおりました。どうぞ皆様でお読みになってね。
それとも、わたくしが読書会を開くべきなのかしら? 後でユリアたちに相談してみましょう。
フィルップラ侯爵家ではどうかわかりませんけれど、メイドが書庫の本に触れるのを嫌がる家もあります。別に彼女たちが、現在勤めている彼女たちが何か粗相をする、というわけではないのですけれど。大体そう言うお家は過去に何かあって皆が過敏になっているのです。
それに、この革の装丁の本を自室に持って帰るのは、ちょっと勇気がいりますしね。
もう一冊は、緑色の光沢ある布に包まれています。こちらに入っていたのは、先ほどと比べると小さい本。そういえば気にしませんでしたけれど。戯曲も詩集も、厚さや大きさ、装丁などが違うはずです。そういったところで、わかる方もいるのではないでしょうか。
わたくしは、お店の方に選んでもらってしまいましたけれど。
この本は、詩集でした。そうです。アーダ・ヤコイラの! 『赤い薔薇には棘があるが』です。
表紙に描かれているのは棘のある枝を持った赤い薔薇です。もしかしないでこれは、初版ではないかしら?
「ねえどなたか。どなたかわたくしの代わりに確認してくださらない?」
どなたか、といっていますけれど、視線はハッリの奥方に向かっているのは否めません。ダーヴィド様が分かるのでしたら、ダーヴィド様に確認していただいてもよいのですけれど。
「ではわたくしが」
ウキウキと、という表現がぴったりと当てはまるように、ハッリの奥方がこちらへやってきてくれました。メイドさん達も、目をキラキラさせて見ています。多分、わたくしも同じようになっているでしょう。
「失礼して」
「ええ、お願い」
ハッリの奥方に本を手渡して。彼女はぺらりと、表紙をめくりました。
「ああ!」
そうしてその唇から飛び出すのは感嘆。
「おめでとうございます、お嬢様! 初版ですわ、これは初版です!」
「まあ! ダーヴィド様、ありがとうございます!」
これが結婚後であったのなら、抱き着いてキスの一つでも、母が父にやっているように、するくらいの喜びです。けれどまだわたくしたちは婚約者ですらないのですから、お礼を口にするにとどめるしかできません。
ハッリの奥方はそっとテーブルに本を置くと、元居た場所に静かに戻っていかれました。
「喜んでいただけたようで何よりだ。贈り物で喜んでもらえるのは、なんとも嬉しいものだね」
ダーヴィド様は穏やかにほほ笑んで、こちらを見ておられます。ちょっと、気恥しいですね。
気を取り直して、明日のお話です。
ローテーブルの上に置いてあった本をユリアが恭しくわたくしの部屋と持ち帰り、ハッリの奥方がわたくしたちにお茶を供してくださいました。今夜よく眠れるようにと、ハーブティーだそうです。
明日は、ダーヴィド様のご両親がこちらのお屋敷にやってきます。そして、さらに翌日に、フィルップラ侯爵家にてお披露目式を行うとの事です。
わたくしはてっきり、明後日ではなく、もう一日後にお披露目式だと思っておりました。明後日は自宅に帰って、その翌日にこちらに伺ってお披露目式だとばかり。
「明日、私と一緒に両親を出迎えて貰いたい」
「承りました」
王命とはいえ、年頃の男女が一つ屋根の下でお目付け役であるご両親がいらっしゃらない状態ですもの。フィルップラ侯爵様は気が気ではないでしょう。それとも、ダーヴィド様の事を信頼しているからお気になさっていないかしら?
それらもすべて、明日会えばわかりますわね。
23
あなたにおすすめの小説
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
婚約破棄されましたが、辺境で最強の旦那様に溺愛されています
鷹 綾
恋愛
婚約者である王太子ユリウスに、
「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄を告げられた
公爵令嬢アイシス・フローレス。
――しかし本人は、内心大喜びしていた。
「これで、自由な生活ができますわ!」
ところが王都を離れた彼女を待っていたのは、
“冷酷”と噂される辺境伯ライナルトとの 契約結婚 だった。
ところがこの旦那様、噂とは真逆で——
誰より不器用で、誰よりまっすぐ、そして圧倒的に強い男で……?
静かな辺境で始まったふたりの共同生活は、
やがて互いの心を少しずつ近づけていく。
そんな中、王太子が突然辺境へ乱入。
「君こそ私の真実の愛だ!」と勝手な宣言をし、
平民少女エミーラまで巻き込み、事態は大混乱に。
しかしアイシスは毅然と言い放つ。
「殿下、わたくしはもう“あなたの舞台装置”ではございません」
――婚約破棄のざまぁはここからが本番。
王都から逃げる王太子、
彼を裁く新王、
そして辺境で絆を深めるアイシスとライナルト。
契約から始まった関係は、
やがて“本物の夫婦”へと変わっていく――。
婚約破棄から始まる、
辺境スローライフ×最強旦那様の溺愛ラブストーリー!
『婚約破棄された令嬢、白い結婚で第二の人生始めます ~王太子ざまぁはご褒美です~』
鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがないから、婚約破棄する」――
王太子アルヴィスから突然告げられた、理不尽な言葉。
令嬢リオネッタは涙を流す……フリをして、内心ではこう叫んでいた。
(やった……! これで自由だわーーーッ!!)
実家では役立たずと罵られ、社交界では張り付いた笑顔を求められる毎日。
だけど婚約破棄された今、もう誰にも縛られない!
そんな彼女に手を差し伸べたのは、隣国の若き伯爵家――
「干渉なし・自由尊重・離縁もOK」の白い結婚を提案してくれた、令息クリスだった。
温かな屋敷、美味しいご飯、優しい人々。
自由な生活を満喫していたリオネッタだったが、
王都では元婚約者の評判がガタ落ち、ざまぁの嵐が吹き荒れる!?
さらに、“形式だけ”だったはずの婚約が、
次第に甘く優しいものへと変わっていって――?
「私はもう、王家とは関わりません」
凛と立つ令嬢が手に入れたのは、自由と愛と、真の幸福。
婚約破棄が人生の転機!? ざまぁ×溺愛×白い結婚から始まる、爽快ラブファンタジー!
---
敗戦国の元王子へ 〜私を追放したせいで貴国は我が帝国に負けました。私はもう「敵国の皇后」ですので、頭が高いのではないでしょうか?〜
六角
恋愛
「可愛げがないから婚約破棄だ」 王国の公爵令嬢コーデリアは、その有能さゆえに「鉄の女」と疎まれ、無邪気な聖女を選んだ王太子によって国外追放された。
極寒の国境で凍える彼女を拾ったのは、敵対する帝国の「氷の皇帝」ジークハルト。 「私が求めていたのは、その頭脳だ」 皇帝は彼女の才能を高く評価し、なんと皇后として迎え入れた!
コーデリアは得意の「物流管理」と「実務能力」で帝国を黄金時代へと導き、氷の皇帝から極上の溺愛を受けることに。 一方、彼女を失った王国はインフラが崩壊し、経済が破綻。焦った元婚約者は戦争を仕掛けてくるが、コーデリアの完璧な策の前に為す術なく敗北する。
和平交渉の席、泥まみれで土下座する元王子に対し、美しき皇后は冷ややかに言い放つ。 「頭が高いのではないでしょうか? 私はもう、貴国を支配する帝国の皇后ですので」
これは、捨てられた有能令嬢が、最強のパートナーと共に元祖国を「実務」で叩き潰し、世界一幸せになるまでの爽快な大逆転劇。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
《短編版》或る伯爵夫人が一人思い悩んだ末の事の顛末
桃井すもも
恋愛
誰もいない一人寝の寝台に横になりながら、サフィリアは、ほうと深く息を吐いた。一人切りになってようやく誰の目も気にせず溜め息がつける。
誰もいない宵闇の世界だけが、サフィリアにありのままの姿でいることを許してくれる。
サフィリアの夫、ルクスは出来た人だ。だから決して口には出さないが、心の中ではサフィリアよりも余程深い溜め息を吐いている筈だ。
夫はサフィリアに愛情を抱いている訳ではない。
彼は、仕方なくサフィリアを娶ったのだから。
*こちらの作品は「或る伯爵家が一人思い悩んだ末の事の顛末」の短編版です。
もう一つの伯爵夫人の物語としてお楽しみ下さい。
❇他サイトで別名義にて「或る伯爵夫人の話」として公開しております。
完結済です。サクッとお読み頂けます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる