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15 キッチンの甘い誘惑
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大学から帰ってきて、琴葉と一緒に夕飯の準備。
キッチンのカウンターにトマトとバジルが並んで、夕陽のオレンジ色の光が差し込んで、温かい雰囲気が醸し出されていた。
琴葉はエプロンをかけて、ソースをかき混ぜている。彼女の黒髪がポニーテールから少しはらりと落ちて、首筋がチラチラ見えるたび、ドキッとする。
琴葉は、いつも本の匂いがするんだけど、当たり前だが、今はトマトの酸味が混ざって、特別な良い香りがしていた。
「綾、味見して。塩加減、どうかな?」
琴葉がスプーンにソースをすくって、私の口元にそっと差し出す。
彼女の指が少し震えているのが可愛くて、思わず笑みがこぼれる。
昨日、ベッドで琴葉が「綾の笑顔が、私の太陽」って囁いてくれたのを思い出すと、胸がじんわり温かくなる。
よくそんな恥ずかしい言葉を真顔で言えるのがすごい。
多分私はそんな言葉は言えないと思う。
私は素直に口を開けて、ソースを味わう。
トマトの鮮やかな酸味に、バジルの爽やかさが絡まって、ほんのり甘い。
私の好みを完全に把握していて、褒め言葉がすぐに出てくる。
「うん、いいよ。トマトの味が生きてる。でも……もう少し甘くてもいいかもね」
私は悪戯っぽく目を細めて、琴葉の指先に残ったソースを、そっと舐め取る。
彼女の肌は柔らかくて、かすかな塩味がソースと混ざって、なんだかクセになる味。
琴葉の目がぱっと大きく見開かれて、頬がぽっと桜色に染まる。
いつもこうやって、琴葉をからかうのが楽しくてたまらない。
「綾っ……! そんな、急に何よ……キッチンで、だめだってば」
彼女の声が上ずって、慌てて手を引くけど、目は全然怒ってなくて、むしろ輝いてる。
照れ隠しに琴葉は私の鼻を軽くつまんで、くすくす笑う。
私はその勢いで彼女の腰に腕を回して、カウンターに寄りかからせる。キッチンの空気が急に甘く重くなって、
ソースの湯気が私たちを包み込んでいた。
琴葉の息が私の耳にかかって、ゾクゾクする。
彼女の体温が、エプロン越しに伝わってきて、心臓の音が聞こえそう。
「だって、琴葉の味が一番美味しいんだもん。仕方ないよね」
私は耳元で囁いて、彼女の唇に軽くキスを落とす。
琴葉は一瞬固まって、それから私の首に腕を絡めて、返事のキスをくれる。
柔らかくて、トマトの香りがほのかに混ざって、まるでこのソースみたいに、酸味と甘さが絶妙。
キスが深くなるにつれて、琴葉の指が私の背中を優しく撫でて、時間が止まったみたい。
外の通りから、誰かの自転車のベルが遠く聞こえてくるけど、そんなの関係ない。
このキッチンが、私たちの小さな世界だった。
ようやく唇を離して、琴葉が息を弾ませながら、私の額に自分の額をくっつける。
彼女の眼鏡が少しずれていて、慌てて直す仕草がまた可愛い。
「もう、夕飯が焦げちゃうよ。綾のせいだからね。罰として、パスタ茹でて」
「はーい、ご主人様。じゃあ、琴葉はデザート担当ね。アイスにソースかけて、特別メニューで」
私は笑いながら、鍋にお湯を沸かし始める。
琴葉は頬を膨らませて、でもすぐに笑顔になって、私の横で野菜を切る。
包丁の音がリズムよく響いて、二人でハミングするような、ゆるい時間が流れる。
パスタが茹で上がって、ソースを絡めて、テーブルに運ぶ頃には、外がすっかり暮れている。
窓から街灯の光が差し込んで、部屋を柔らかく照らしていた。
食事が終わって、ソファに並んで座る。
琴葉が私の膝に頭を乗せて、スマホで今日の大学の話を聞くふりして、ただくっついてくる。
私は彼女の髪を指で梳きながら、昨日の本の続きを少し読んであげる。
村上春樹の短編で、雨の日の恋の話。
琴葉は目を閉じて、静かに聞いてる。
時々、彼女の指が私の手に絡まって、温かさが伝わるのを感じて。
「綾の声、好き。もっと読んで」
「じゃあ、続きはベッドでね。おやすみの子守唄に」
琴葉がくすっと笑って、私の頰にキスを返す。
夜の静けさの中で、この日常が続く限り、どんな夕飯も、どんな味見も、特別になる。
琴葉がいれば、それで十分。
明日も、きっとこんな風に、二人で笑い合えるはず。
キッチンのカウンターにトマトとバジルが並んで、夕陽のオレンジ色の光が差し込んで、温かい雰囲気が醸し出されていた。
琴葉はエプロンをかけて、ソースをかき混ぜている。彼女の黒髪がポニーテールから少しはらりと落ちて、首筋がチラチラ見えるたび、ドキッとする。
琴葉は、いつも本の匂いがするんだけど、当たり前だが、今はトマトの酸味が混ざって、特別な良い香りがしていた。
「綾、味見して。塩加減、どうかな?」
琴葉がスプーンにソースをすくって、私の口元にそっと差し出す。
彼女の指が少し震えているのが可愛くて、思わず笑みがこぼれる。
昨日、ベッドで琴葉が「綾の笑顔が、私の太陽」って囁いてくれたのを思い出すと、胸がじんわり温かくなる。
よくそんな恥ずかしい言葉を真顔で言えるのがすごい。
多分私はそんな言葉は言えないと思う。
私は素直に口を開けて、ソースを味わう。
トマトの鮮やかな酸味に、バジルの爽やかさが絡まって、ほんのり甘い。
私の好みを完全に把握していて、褒め言葉がすぐに出てくる。
「うん、いいよ。トマトの味が生きてる。でも……もう少し甘くてもいいかもね」
私は悪戯っぽく目を細めて、琴葉の指先に残ったソースを、そっと舐め取る。
彼女の肌は柔らかくて、かすかな塩味がソースと混ざって、なんだかクセになる味。
琴葉の目がぱっと大きく見開かれて、頬がぽっと桜色に染まる。
いつもこうやって、琴葉をからかうのが楽しくてたまらない。
「綾っ……! そんな、急に何よ……キッチンで、だめだってば」
彼女の声が上ずって、慌てて手を引くけど、目は全然怒ってなくて、むしろ輝いてる。
照れ隠しに琴葉は私の鼻を軽くつまんで、くすくす笑う。
私はその勢いで彼女の腰に腕を回して、カウンターに寄りかからせる。キッチンの空気が急に甘く重くなって、
ソースの湯気が私たちを包み込んでいた。
琴葉の息が私の耳にかかって、ゾクゾクする。
彼女の体温が、エプロン越しに伝わってきて、心臓の音が聞こえそう。
「だって、琴葉の味が一番美味しいんだもん。仕方ないよね」
私は耳元で囁いて、彼女の唇に軽くキスを落とす。
琴葉は一瞬固まって、それから私の首に腕を絡めて、返事のキスをくれる。
柔らかくて、トマトの香りがほのかに混ざって、まるでこのソースみたいに、酸味と甘さが絶妙。
キスが深くなるにつれて、琴葉の指が私の背中を優しく撫でて、時間が止まったみたい。
外の通りから、誰かの自転車のベルが遠く聞こえてくるけど、そんなの関係ない。
このキッチンが、私たちの小さな世界だった。
ようやく唇を離して、琴葉が息を弾ませながら、私の額に自分の額をくっつける。
彼女の眼鏡が少しずれていて、慌てて直す仕草がまた可愛い。
「もう、夕飯が焦げちゃうよ。綾のせいだからね。罰として、パスタ茹でて」
「はーい、ご主人様。じゃあ、琴葉はデザート担当ね。アイスにソースかけて、特別メニューで」
私は笑いながら、鍋にお湯を沸かし始める。
琴葉は頬を膨らませて、でもすぐに笑顔になって、私の横で野菜を切る。
包丁の音がリズムよく響いて、二人でハミングするような、ゆるい時間が流れる。
パスタが茹で上がって、ソースを絡めて、テーブルに運ぶ頃には、外がすっかり暮れている。
窓から街灯の光が差し込んで、部屋を柔らかく照らしていた。
食事が終わって、ソファに並んで座る。
琴葉が私の膝に頭を乗せて、スマホで今日の大学の話を聞くふりして、ただくっついてくる。
私は彼女の髪を指で梳きながら、昨日の本の続きを少し読んであげる。
村上春樹の短編で、雨の日の恋の話。
琴葉は目を閉じて、静かに聞いてる。
時々、彼女の指が私の手に絡まって、温かさが伝わるのを感じて。
「綾の声、好き。もっと読んで」
「じゃあ、続きはベッドでね。おやすみの子守唄に」
琴葉がくすっと笑って、私の頰にキスを返す。
夜の静けさの中で、この日常が続く限り、どんな夕飯も、どんな味見も、特別になる。
琴葉がいれば、それで十分。
明日も、きっとこんな風に、二人で笑い合えるはず。
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