【2部連載中】転生したら美少女冒険者に! ~おっさんの心が旅立つ異世界冒険記~

南條 綾

文字の大きさ
28 / 69
4章 古代遺跡の調査?

18話 こんなゴーレムいてたまるか

しおりを挟む
 俺は、地面に残った焼け焦げを見て、しばらく言葉を失った。
あれ、レーザーとかビームとか、そういう類じゃないのか?

「シ、シビさん……あれは何ですの?」

 さっきまで腕の中にいたエレナが、耳元でかすれた声を落とす。
その声にははっきりと恐怖が混じっていて、やけに近く感じた。

「魔力が通った感じが、いたしませんでしたわ」

「俺にもわからない」

 多分、あれは魔法じゃなくて科学兵器だ。
科学技術なんてないはずのこの世界に、何であんなものがあるんだ。
上の階で見たセンサーも、やっぱり赤外線センサーってやつなのかもしれない。

「もしかして……」

「何か知ってるのか?」

「話に聞く旧世界の魔法では、夜でも昼間のように明るく、空を飛び、どんな動物よりも早く地を走る乗り物があったと聞きます」

 そこで、俺はエレナを腕から降ろして敵に向き直る。
もしかしたら旧世界は科学が発展した世界だったのかもしれないが、調べるのはこの後だ。

「今そんなこと言っても、何の解決にもならない!」

 俺は盗賊技能、戦闘の奥義の一つ、闇夜の断罪《ヴェイル・リッパー》を発動する。
影走りで死角に滑り込み、気配を完全に殺したまま必殺の一撃を叩き込む。初手から最大火力をぶつけるための技だ。

「……決まったか?」

 言った瞬間、自分で自分のフラグを立てた気がして、心の中で頭を抱えた。
そう思った瞬間、ショートソードがまだゴーレムの体に刺さったままだったことに気づいた。
俺が剣を抜こうとした、その瞬間、体ごと横に吹っ飛ばされてしまった。

「きゃぁあああああ!」

 なんて声を出してるんだ、俺は。
相手の方を見ると、ゴーレムの上半身が回転していて、その動きのままハンマーみたいなパンチを食らって吹き飛ばされたらしい。
俺が動こうとした瞬間、あばらのあたりに鋭い痛みが走る。
多分、折れたのかも。

「シビさん、大丈夫ですか?」

「これぐらいわな……」

 強がって言ったものの、動くたびに痛みが走って、顔が勝手にゆがんでしまう。

「全然大丈夫そうには見えませんわよ」

 エレナが今にも泣きそうな顔で、俺の肩を支える。
鈴の音まで、さっきより不安定に揺れていた。

「少しだけ、じっとしていてくださいませ」

 エレナが胸元のペンダントに手を当て、短く祈りの言葉を紡ぐ。
治癒呪文の柔らかい光が、じわっとあばらに染み込んでいく感覚がした。

「……さっきよりはマシになったな」

 深く息を吸うと、さっきみたいな激痛はない。
ただ、動くたびに鈍い痛みが残っていて、とても全力で走り回れる感じじゃない。

「ひとまず、折れかけていたところは繋がりましたわ。でもこれ以上無茶をなさったら、またすぐにひびが入ってしまいます」

「贅沢言ってられんだろ」

 そう言いながらも、内心では本気で泣きたい。
うっかり笑っただけで痛いとか、冗談じゃない。
ゴーレムは、俺たちを吹き飛ばしたあとも、その場から一歩も動かない。
上半身だけをゆっくり回転させて、胸の奥を不気味に光らせていた。

「また撃ってきますわよ、シビさん!」

 エレナの声に合わせて、俺たちは近くの石柱の陰に転がり込む。
次の瞬間、さっきと同じ白い線が床をなぞり、さっきまでいた場所を容赦なく焼き切った。
石床が溶けて黒く抉れ、焦げた匂いが鼻を刺す。

「……今の、半歩でも遅れてたら、俺たちもああなってた」

 そう口にした瞬間、胸の奥がぞわっと冷えた。
手のひらの汗がじっとり張りついて、短剣の柄がやけに滑りやすく感じる。

「え? 嘘……こんなの、常識では考えられない威力ですわ……」

 俺は奥歯を噛みしめる。
このままあの光を眺めているだけじゃ、じわじわ追い詰められるだけだ。
どこまで斬撃が通るのか、一回は試さないと話にならない。
どこかに、こいつの通る場所があるはずだ。

「……どこまで通るか、一回は試すしかないか」
俺はショートソードを構え直し、一気に間合いを詰める。

「裂華《れっか》!」

 この身体で一番慣れ親しんだ技だ。
軽い踏み込みから斜めに一閃。続けざまに角度を変えて、二撃目、三撃目、四撃目を叩き込む。
素早い連撃で守りを崩して、相手に隙を生ませるはずの技だ。

 火花は散った。手にはしっかり手応えも返ってきた。
けれど銀色の装甲に走ったのは、薄い傷が数本増えただけ。
ゴーレムの動きは一ミリも鈍らない。

「嘘だろ」

「シビさん!?」

 ゴーレムが上半身をギギギと回転させ、拳をこちらに向けてくる。
俺は舌打ちして、慌てて距離を取った。

「今のが通らないって、マジかよ……」

 裂華は、防具ごと敵の体を断ち割るための技だ。
それが“かすり傷”程度にしかなっていない。

この硬さだと、牙衝《がしょう》でも表面を凹ませるくらいが関の山かもしれない。
コアを砕くどころか、たどり着けない可能性すらある。

「どうすれば……っていうか、何の金属なんだよ、これ?」

 一瞬だけ、胸の奥が冷たくなる。
ここまで来て、ただ硬いから無理でした、なんてオチは本気でごめんだ。

「シビさん。あの装甲、ミスリル銀ですわ」
ミスリルって、あの有名なミスリル銀かよ。
よりによって、そんなものでゴーレム作るやつがいるかよ。

 その時だった。
ゴーレムの右肩の装甲が、ガコンと大きな音を立てて開いた。
中から、太い腕そのものが、節ごと外れるように前へせり出してくる。
背筋がぞわっと冷たくなる。嫌な予感しかしない。

「こぶしが飛んでくるなんて、聞いてないぞ……!」

 そう言い終わる前に、その腕が火を噴いて飛んできた。
視界の端で赤い軌跡が一直線に伸びる。避ける体勢に入るより早く、鉄塊みたいな拳が胸の真ん中をえぐった。
厚手の革の上着なんて、あってないようなもので、拳の重さがそのまま骨まで突き抜けた。
胸の中身をまとめて握りつぶされたみたいな感覚と一緒に、肺の空気が一気に外へ搾り出された。

 世界がぐるりと反転し、床を何度か転がされてから、背中が岩に叩きつけられる。
息を吸おうとしても胸がうまく動かず、その代わりにあばらのあたりがじくじくと痛みを訴えてきた。

「シビさんっ!」

 遠くでエレナの悲鳴が聞こえる。
顔を上げようとしただけで視界が白く弾けて、喉の奥から情けないうめき声が漏れた。
俺は声の聞こえる方に顔を向ける。
ヤバい。このまま意識を手放したら、本気で終わる。

「シビさん、死んではなりませんわ!」

 エレナの泣き顔がにじんで見える。
やばい、お前だけでも逃げろって言わないといけないのに、喉がうまく動かない。

「に……げ……ろ……」

 かすれた空気が漏れただけで、言葉にならない。

「嫌ですわ。置いてはいきません!」

 エレナが、ほとんど転ぶみたいにして俺のそばまで駆け寄る。
震える手で俺の胸元に触れ、ぎゅっと目を閉じた。

「清らなる癒しの光よ、砕かれた身を包み、今ひとたび立つ力を与え給え――聖癒光《グレイス・ヒール》!」

 次の瞬間、砕けたあばらのあたりから、じんわりと温かいものが広がっていく。
焼けるような痛みが少しずつ引いていき、その代わりに、全身にひどいだるさがのしかかった。
ひとつ息を吸う。さっきみたいに胸がつぶれる感覚はない。
まだ痛いが、動けないほどじゃない。

「シビさん……よかった……」

 耳元で震える声がして、俺はなんとか口の端だけ持ち上げた。

「……ありがと。まだ、やれる」

 自分で言っておきながら、体の中身は鉛みたいに重い。
立ち上がろうとしただけで、あばらのあたりがじくじく文句を言ってくる。
エレナがほっと息を吐いた、その瞬間だった。

「……戻ってますわ」

 エレナの視線の先を追う。
さっき吹っ飛んでいったはずの右腕は、いつの間にか本体にくっついていた。
そして今度は、両肩の装甲が同時にガコンと開く。

「まだ何かあるのかよ……」

 肩の内部から、小さな金属の塊がいくつもせり出してきた。
拳より一回り小さい円筒みたいな形で、先端だけがじわっと赤く光っている。
そいつらは、重力なんて関係ないみたいにふわりと浮かび上がると、俺たちの周りをゆっくり旋回しはじめた。

「シビさん、あれ……」

どう見ても、遠隔操作の攻撃用ドローンだ。
自動で飛び回って、標的を追いかけながら撃ってくる小型の兵器。

「勝手に飛び回って攻撃してくる、小型の魔導兵器ってところだな。こっちを狙ってる」

 口に出した瞬間、嫌な汗が背中を伝う。
こっちは満身創痍、向こうは遊び道具を増やしてきたみたいな顔をしてやがる。
ひとつ、赤い光が強く瞬いた。

「まずい、伏せろ!」

 叫ぶのと同時にエレナを引き寄せて床に転がる。
次の瞬間、頭上を細い光の線が横切り、そのまま後ろの石柱を貫いた。
遅れて、爆ぜるような音。
さっきまで背中を預けていた柱が、上から崩れ落ちて粉々になる。

「きゃっ!」

 砕けた石片が雨みたいに降ってきて、何個かが肩や背中に当たる。
痛いとか言ってる場合じゃない。

「シビさん、今の……さっきの光と同じ……?」

「そうだな。ただ、今度はあいつらがいろんな方向から撃ってくるってだけだ」

 さっき浮かんだ金属の塊が、今度は左右に散開していく。
一つが前方、一つが側面、もう一つが背後の方へ回り込むように動いた。
やばい。これは本気でやばい。

「ちょっと待て、これ……完全にオールレンジ攻撃じゃねえか」

 どの方向から飛んでくるか分からない。
隠れようとしても、そもそも隠れるための柱が一つずつ消されていく。
前方の一機が赤く光る。
ほぼ同時に、右側の一機も赤く瞬いた。

「動きますわよ、シビさん!」

 エレナが手を引いてくれるのと、俺が足に力を込めるのがほぼ同時だった。
床を蹴って横に飛ぶ。数瞬遅れて、さっきまでいた場所を二本の光線が交差してえぐり取った。
石床が溶けて、さっきよりも深く抉れる。
逃げ場がまた一つ消えた。

「普通に考えても詰んでるんじゃないか? 無理ゲーだろうが!」

 思わず本音が口から漏れる。
真正面から削り合うタイプの敵じゃない。
あっちは遠距離兵器を増やし放題で、こっちは一発もらったら即アウトのボロ前衛と僧侶一人。
エレナがきゅっと俺の袖を掴んだ。

「でも、まだ終わっていませんわ。終わらせません」

 その声だけは、さっきの光よりもずっと強くてまっすぐだった。
それが逆にプレッシャーになるのが、なんか悔しい。

「……だったら、何か一発、形勢ひっくり返せる手を考えないとな」

 また別の方向で赤い光が瞬いた。
まだ余裕なんて、ぜんぜんなかった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

処理中です...