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6章 日常へ
エピソード3 日常と変化したこと
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朝日を感じて、私は眠たそうに目をこすりながら、時刻を確認する。カーテンを閉め忘れていた私は、朝日で半覚醒してしまった。まだ眠いけれど、今何時かと思い目覚まし時計を見た。現在時刻は9時40分。うちは一応、10時開店だから起きないといけない。眠い体を起こし、洗面を終えるころには頭は冴えていた。
あの事件から数週間がたち、夏も本格的になってきた。6月のあの事件が嘘みたいに、外からはセミの声が聞こえ始めている。私が一年で一番嫌いな季節が始まる。名古屋の夏は最悪なんだ。体験すればだれでもそう思うだろう。
いつものように冷蔵庫から食パンを取り出し、赤い扉のレンジに入れる。温めたら、蜂蜜をたっぷりとかける。ティファールで湯を沸かし、カップにインスタントコーヒーの粉を入れて湯を注ぐ。朝ごはんを並べ、ニュースを一本だけ流しながら、私は静かにその時間を過ごす。いつも通りの私の朝が、今日も始まった。
身なりを一応整えてから、OPENの札を返す。二十分は過ぎてしまったが、仕方ない。 いつも通りのマイペースで開店準備を始める。どうせお仕事も来ないし。また凛にお仕事がを回してもらおうかなって考えてしまう。
スマホで最高気温を確認して、私はげっそりした。たぶん今日の日中は、道に陽炎が出るくらいになるだろう。読みかけの小説とコーヒーで時間をつぶそうかな。
……そう思っていた矢先のことだった。
急に事務所の重い扉が、きしみながら開く。
私はお客が来たのかと思い、立ち上がって出迎えようとして、そのまま固まった。
中に入ってきたのは、ポニーテール姿のセーラー服を着た少女だったからだ。。
「お久しぶりです」
「あぁ……いらっしゃい」
先月の依頼で助け出した、雑賀舞だった。
「病院とか、警察やらいろいろで、やっと来れました。あの上着、返しに」
「そういえば、そうだった。すっかり忘れてた」
舞の姿を観察すると、健康そうな顔色と足取りだった。私は密かに、心の底から安心した。
ジャケットを受け取ったあとも、彼女はまだ何かを言いたそうに、もじもじとしていた。
事件のことや、安田さんのことは警察から話があったはずだから、私が話すことはもう何もないと思う。私自身、事情聴取では照井さんと玲奈から根掘り葉掘り、しっぽりと聞かれ、ついでに照井さんからは延々と叱られ続けていたのだから。
私から言うべきことはないはずだけど……。
「何か、聞きたいことでもあった?」
こういう時は、年長者の私から話を振らないといけないんだろう。面倒だけれど。
「あの、私……お願いがあって来たんですけど」
「あぁ、構わないよ」
事件の後遺症はなさそうだけど、あんな目に遭って、話し相手もそういないだろう。私自身も玲奈や師匠、いろいろな人と話して助かった面もある。お金にはならないけれど、これも何かの縁だ。
「本当ですか?」
「あぁ、お金貸してとかそういうのじゃなく、私にできることならね」
そんなに念を押さないといけないことなのだろうか。まあ、高校生だし、仕方ないのかもしれない。そんな私の呑気な考えを、彼女の次の言葉が木っ端微塵にした。
「よかったぁ~! 私、綾さんの助手になります!」
「ふ~ん、助手ねぇ。………………は、はぁあああああああああああああ!? じょ、助手ぅ~~~~~~~~~!?」
私は驚いて二度三度舞を見直した。
「無理、高校生なんて雇えないし、そんな給料払えないから」
「でも先ほど、二言はないみたいなこと言ってましたよね」
「そんなことは言ってない」
多分言ってないはずだ。起きたばかりでまだ頭がきちんと動いてないと言っても自分の言動ぐらいは覚えてる。
「構わないと言いました」
「言ったけどさぁ」
「それにお金貸してとかそういうものじゃなくって言いました」
「助手にしたらお金払わないといけないから無理」
お金を貸すのは無理ということはお金がかかることは無理だから。きっと同じ理論で通じるはず。
「そこは安心してください。私お金いりませんから、これならお金が発生しないから大丈夫ですよね」
私の最後の防波堤が、そんな悩んでいたら事務所の外からがやがやと声が聞こえてきた。
「絶対にここだって」
「名刺にはここになってるから、中から声も聞こえてるから絶対にいるって」
「でもかってに来てもいいのかな?」
「でも、名刺渡してくれたから遊びに来てもいいってことじゃねえ」
私と舞が話しかけてるときに。事務所に入ってきたのはあの池田公園で知り合った。4人組の男の子たちだった。
「「こんち~す」」
「千差万客だね」
「どうしたの?」
私がそう少年達に質問をした所だった。
ヒールで階段を猛スピードで上がってくる音が聞こえてきた
「あや~」
本当に今日はこの事務所開いて以来お客がたくさん来る。
しかもお金にならないお客ばかり。
「今千景の情報で少年少女たちが綾の事務所に来たって、貴女何をしようとするの~~~~~~~」
落ち着いた事務所のはずなのに、なぜか騒がしくなってしまった。
この日私は不本意ながら押しかけ助手を得ることになった。
紫微綾の事件簿 case1 鎖の記憶 完
あの事件から数週間がたち、夏も本格的になってきた。6月のあの事件が嘘みたいに、外からはセミの声が聞こえ始めている。私が一年で一番嫌いな季節が始まる。名古屋の夏は最悪なんだ。体験すればだれでもそう思うだろう。
いつものように冷蔵庫から食パンを取り出し、赤い扉のレンジに入れる。温めたら、蜂蜜をたっぷりとかける。ティファールで湯を沸かし、カップにインスタントコーヒーの粉を入れて湯を注ぐ。朝ごはんを並べ、ニュースを一本だけ流しながら、私は静かにその時間を過ごす。いつも通りの私の朝が、今日も始まった。
身なりを一応整えてから、OPENの札を返す。二十分は過ぎてしまったが、仕方ない。 いつも通りのマイペースで開店準備を始める。どうせお仕事も来ないし。また凛にお仕事がを回してもらおうかなって考えてしまう。
スマホで最高気温を確認して、私はげっそりした。たぶん今日の日中は、道に陽炎が出るくらいになるだろう。読みかけの小説とコーヒーで時間をつぶそうかな。
……そう思っていた矢先のことだった。
急に事務所の重い扉が、きしみながら開く。
私はお客が来たのかと思い、立ち上がって出迎えようとして、そのまま固まった。
中に入ってきたのは、ポニーテール姿のセーラー服を着た少女だったからだ。。
「お久しぶりです」
「あぁ……いらっしゃい」
先月の依頼で助け出した、雑賀舞だった。
「病院とか、警察やらいろいろで、やっと来れました。あの上着、返しに」
「そういえば、そうだった。すっかり忘れてた」
舞の姿を観察すると、健康そうな顔色と足取りだった。私は密かに、心の底から安心した。
ジャケットを受け取ったあとも、彼女はまだ何かを言いたそうに、もじもじとしていた。
事件のことや、安田さんのことは警察から話があったはずだから、私が話すことはもう何もないと思う。私自身、事情聴取では照井さんと玲奈から根掘り葉掘り、しっぽりと聞かれ、ついでに照井さんからは延々と叱られ続けていたのだから。
私から言うべきことはないはずだけど……。
「何か、聞きたいことでもあった?」
こういう時は、年長者の私から話を振らないといけないんだろう。面倒だけれど。
「あの、私……お願いがあって来たんですけど」
「あぁ、構わないよ」
事件の後遺症はなさそうだけど、あんな目に遭って、話し相手もそういないだろう。私自身も玲奈や師匠、いろいろな人と話して助かった面もある。お金にはならないけれど、これも何かの縁だ。
「本当ですか?」
「あぁ、お金貸してとかそういうのじゃなく、私にできることならね」
そんなに念を押さないといけないことなのだろうか。まあ、高校生だし、仕方ないのかもしれない。そんな私の呑気な考えを、彼女の次の言葉が木っ端微塵にした。
「よかったぁ~! 私、綾さんの助手になります!」
「ふ~ん、助手ねぇ。………………は、はぁあああああああああああああ!? じょ、助手ぅ~~~~~~~~~!?」
私は驚いて二度三度舞を見直した。
「無理、高校生なんて雇えないし、そんな給料払えないから」
「でも先ほど、二言はないみたいなこと言ってましたよね」
「そんなことは言ってない」
多分言ってないはずだ。起きたばかりでまだ頭がきちんと動いてないと言っても自分の言動ぐらいは覚えてる。
「構わないと言いました」
「言ったけどさぁ」
「それにお金貸してとかそういうものじゃなくって言いました」
「助手にしたらお金払わないといけないから無理」
お金を貸すのは無理ということはお金がかかることは無理だから。きっと同じ理論で通じるはず。
「そこは安心してください。私お金いりませんから、これならお金が発生しないから大丈夫ですよね」
私の最後の防波堤が、そんな悩んでいたら事務所の外からがやがやと声が聞こえてきた。
「絶対にここだって」
「名刺にはここになってるから、中から声も聞こえてるから絶対にいるって」
「でもかってに来てもいいのかな?」
「でも、名刺渡してくれたから遊びに来てもいいってことじゃねえ」
私と舞が話しかけてるときに。事務所に入ってきたのはあの池田公園で知り合った。4人組の男の子たちだった。
「「こんち~す」」
「千差万客だね」
「どうしたの?」
私がそう少年達に質問をした所だった。
ヒールで階段を猛スピードで上がってくる音が聞こえてきた
「あや~」
本当に今日はこの事務所開いて以来お客がたくさん来る。
しかもお金にならないお客ばかり。
「今千景の情報で少年少女たちが綾の事務所に来たって、貴女何をしようとするの~~~~~~~」
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