梟の雛鳥~私立渋谷明応学園~

日夏

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【本編】一章 bule drop(2年次10月頃~過去有)

bule drop -1-

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「で、今回のターゲットは?」

お気に入りの高級ソファにだらしなく座りこんだまま、 姫坂愛良ひめさかあいらは、後ろに立つ相方を見上げて問うた。
相方、久我正治くがまさはるは手にしていたタブレットのページをめくり、とある写真を映すと姫坂へ手渡す。

「今回はこれだ、テティス神愛の涙“bule drop”」

渡された写真には、海のように青く美しく光輝く大きな涙形の宝石が1つ。
透明度が高く、手のひらほどもある大きさのアクアマリンである。

「青い涙―――、一昨日日本に渡って来たやつか。へぇ、確かに綺麗だね」

そう一言言うと、姫坂はタブレットをすぐに返してしまう。
写真を目にして口元に弧を描くも、彼は宝石そのものにさほど興味がないようだ。

「報酬は引き受けた時点で500万、成功すれば更に5000万。
―――どうせお前は引き受けるか否かは金額だけで決めるんだろ、このまま受けていいか?」

呆れた口調の久我の言葉。
なんでもないように述べられたその内容は、他人が聞いてはいけない内容だろう。
幸いこの部屋、今彼らのいる、寮部屋の半地下に作られている“ワークルーム”に他に誰もいない。
2人だけである。その心配はなかった。

「勿論。
今までで一番の大仕事になりそうだね」
「だな」

怪盗キッズ。
今最も話題の2人組みの強盗である。
彼らが姿を見せるのは、その影のみ。

様々な専門家たちによって、映し出された影を検証する番組や、 真相を掴むため、今まで彼らの盗みがどのように行われてきたのか、 どういった狙いなのかを放送する特番などがテレビで持切りになっていた。

彼らのバックには大きな組織があるだとか、彼らが盗んだものは、元々の持ち主の盗品であったものが多いだとか、美術品や宝石が対象だと言われている。

隙のない身のこなしと、警察を欺く華麗で大胆なその手口に、中高生の女の子たちにとって彼らは芸能人やアイドルと同じような存在である。

その彼ら“怪盗キッズ”こそ、久我正治と姫坂愛良の2人だった。
彼らは組織、OWL(Oasis Worth Laboratory)通称梟の一員、雛鳥でしかない。
怪盗キッズと騒がれているものの、その名は人々が勝手につけただけであり、 彼らの本当の名称は“OWL グループA・盗窃班”という。

梟は仕事内容によって、暗殺班、盗窃班、護衛班、救護班、開発班の5つに別れ、これら5つは、アルファベットのグループ別に分けられて行動している。
グループにはそれぞれリーダーがおり、そのリーダーは学園の教師の一部が担っている。
ちなみにどこにも属さない上層部も、表向きは教師である。

それぞれの仕事は、グループ別に処理をする。
例えばある人物を殺して欲しいという依頼が来たとする。
上層部にいる人間が、これをもっとも適したグループ、仮にAのリーダーへと持ちかけると、そのAグループのリーダーは殺人依頼を暗殺班へと渡す。

この暗殺において、必要な情報があれば窃盗班が盗み出し、必要な器具や道具、武器があれば開発班から支給を受け、補助が欲しい場合や関わりある人物の保護が必要な場合は護衛班に、怪我を負った場合は救護班がその救護にあたる。

このようにグループで補助しあい、仕事を片付けるのだ。
勿論毎回補助しあう必要はない。
それぞれ単独の仕事もある。

普段なら暗殺班からのデータ収集依頼が多い窃盗班だが、時折、窃盗自体を目的とした仕事依頼が届くのだ。
世に騒がれているのは、こちらの仕事だけである。
成功すればそれだけ報酬が高い。

今回久我と姫坂に来た仕事依頼がそれだった。
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