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【本編】一章 bule drop(2年次10月頃~過去有)
bule drop -13-
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「これは偽物の“bule drop”だということを組織は知ってんの?」
リーダーの立川へと手渡すと同時、いつも何も言わない姫坂は、つい言葉にしてしまう。
立川の目が幾分見開いた。
言葉の内容でなく、彼は姫坂が口を利いたのに驚いたのだ。
「これは本物の“bule drop”さ。
表に出るのがこれ1つである限り、こちらが本物の“bule drop”だ」
「………」
やはりもう1つの“bule drop”が存在することを、組織は知っていたのである。
上層部は何をたくらんでいるのか、姫坂にはわからない。
「やっぱり、知ってるんだ。
もう1つ、“bule drop”が存在すること」
「今回怪盗キッズが盗みに入ったことで、美術館に元々あった本来の盗品が明るみに出た。
あの美術館は閉鎖だ。
沢城大我は、小林誠司の養子となるようだね。
ーーーこの一件で一番得をしたのは、誰か……。
もっとも、沢城光太郎は持病で亡くなっているというのが定説だが」
「っ……」
この一件で得をしたのは秘書の小林誠司だろう。
沢城大我が小林の養子となるならば、沢城光太郎の財産は大我のものだが、小林のものといってもいい。
それも本物の“bule drop”付きである。
大我は小林を慕っているし、財産管理を任されているのも小林だ。
光太郎死後会社を表立って動かしているのも小林である。
今回、盗窃班へと直に来た仕事ではあった。
が、実際は護衛班とのつながりがあったのだ。
個々にきた仕事であれば、お互い必要でなければ出来るだけ関与しない方向をとっている。
報酬の持分をわざわざ減らすことを誰が好むか。
開発班と救護班はともかくとして。
残る暗殺班。
もし彼らが先にこの一件に関わっているとしたら?
3ヶ月前、沢城光太郎は本当に病死だったのだろうか……。
持病に見せかけて殺すことくらい、暗殺班には出来る。
「お前はこの“bule drop”がどこへ行くのかも、それから本当の“bule drop”が今後どう影響するのかも知らなくていいことだ。
以前からと同様、真実を知る必要もない」
「………」
「組織を甘く見るな、そして裏切るな。
お前は単なる駒にしかすぎない。
ロンドンでの妹の捜索は、ちゃんと続いてるぞ?まだまだ働いてもらうことになるだろう」
「…わかってます」
姫坂は誰にも見せることない苦渋な表情を浮かべて立川に述べた。
自分でも十分わかっていることだった。
改めて言われなくとも、十分なほどに。
「今回の報酬は、既に捜索費を差し引いて振り込んである。
後で確認するが良い」
立川の言葉に姫坂は何も言わなかった。
(愛良………っ)
せめて愛良だけでも無事でいてほしい。
未だ見つからない唯一の家族、妹の愛良。
愛良の名前を名乗ってるのは、もしかしたらこの日本でも手がかりが見つかるかもしれないから。
時間があればいたるところに潜り込み、ハッキングを繰り返してるがいまだ何の手がかりもない。
姫坂愛良の本名は、天央という。
それを知るのは組織でもほんの一部の人間だけだった。
久我も、親友である伊織すらもちろん知らない。
自分に出来ることは、こんな方法でしかない。
姫坂は思うのだ。
今いる場所は、一番暗く一番下にある場所だと。
それでも、抜け出すことは出来ない。
姫坂は重い足どりで寮を目指した。
今在るべき場所へと帰るためにーーー。
リーダーの立川へと手渡すと同時、いつも何も言わない姫坂は、つい言葉にしてしまう。
立川の目が幾分見開いた。
言葉の内容でなく、彼は姫坂が口を利いたのに驚いたのだ。
「これは本物の“bule drop”さ。
表に出るのがこれ1つである限り、こちらが本物の“bule drop”だ」
「………」
やはりもう1つの“bule drop”が存在することを、組織は知っていたのである。
上層部は何をたくらんでいるのか、姫坂にはわからない。
「やっぱり、知ってるんだ。
もう1つ、“bule drop”が存在すること」
「今回怪盗キッズが盗みに入ったことで、美術館に元々あった本来の盗品が明るみに出た。
あの美術館は閉鎖だ。
沢城大我は、小林誠司の養子となるようだね。
ーーーこの一件で一番得をしたのは、誰か……。
もっとも、沢城光太郎は持病で亡くなっているというのが定説だが」
「っ……」
この一件で得をしたのは秘書の小林誠司だろう。
沢城大我が小林の養子となるならば、沢城光太郎の財産は大我のものだが、小林のものといってもいい。
それも本物の“bule drop”付きである。
大我は小林を慕っているし、財産管理を任されているのも小林だ。
光太郎死後会社を表立って動かしているのも小林である。
今回、盗窃班へと直に来た仕事ではあった。
が、実際は護衛班とのつながりがあったのだ。
個々にきた仕事であれば、お互い必要でなければ出来るだけ関与しない方向をとっている。
報酬の持分をわざわざ減らすことを誰が好むか。
開発班と救護班はともかくとして。
残る暗殺班。
もし彼らが先にこの一件に関わっているとしたら?
3ヶ月前、沢城光太郎は本当に病死だったのだろうか……。
持病に見せかけて殺すことくらい、暗殺班には出来る。
「お前はこの“bule drop”がどこへ行くのかも、それから本当の“bule drop”が今後どう影響するのかも知らなくていいことだ。
以前からと同様、真実を知る必要もない」
「………」
「組織を甘く見るな、そして裏切るな。
お前は単なる駒にしかすぎない。
ロンドンでの妹の捜索は、ちゃんと続いてるぞ?まだまだ働いてもらうことになるだろう」
「…わかってます」
姫坂は誰にも見せることない苦渋な表情を浮かべて立川に述べた。
自分でも十分わかっていることだった。
改めて言われなくとも、十分なほどに。
「今回の報酬は、既に捜索費を差し引いて振り込んである。
後で確認するが良い」
立川の言葉に姫坂は何も言わなかった。
(愛良………っ)
せめて愛良だけでも無事でいてほしい。
未だ見つからない唯一の家族、妹の愛良。
愛良の名前を名乗ってるのは、もしかしたらこの日本でも手がかりが見つかるかもしれないから。
時間があればいたるところに潜り込み、ハッキングを繰り返してるがいまだ何の手がかりもない。
姫坂愛良の本名は、天央という。
それを知るのは組織でもほんの一部の人間だけだった。
久我も、親友である伊織すらもちろん知らない。
自分に出来ることは、こんな方法でしかない。
姫坂は思うのだ。
今いる場所は、一番暗く一番下にある場所だと。
それでも、抜け出すことは出来ない。
姫坂は重い足どりで寮を目指した。
今在るべき場所へと帰るためにーーー。
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