30 / 38
【本編】五章 examination (2年次11月・the pastより1週間後)
examination -1-
しおりを挟む
11月に入り、急に寒さが増してきた。
寮の部屋にも教室にもばっちりエアコンの暖房は完備されているが、廊下までは行き届きにくいし、
教室も場所によっては隙間風が入ってくる。
寒がりな生徒は、ひざ掛けをかける者や、足元に小さなヒーターを置く者もいた。
姫坂もそのうちのひとりだ。
ヒーターはまだ出番がないが、すでにひざ掛けを使用している。
姫坂の席は綾瀬の席の後ろである。
そのため授業中はもちろん休み時間も席を離れることは少なかった。
休み時間ともなれば、綾瀬がまってましたとばかり椅子を後ろにまたいで姫坂と話を始める。
今もそんな具合だ。
「姫ー、おでん食べに行こー?」
「いいよ。でも―――」
「こっそり車出すからさー暖房入れるし!
駅前から少し外れてるけど、そこ、安いし美味しいんだー。
今季おでんまだでしょ?今日デビューしようよ、食べたいー」
それほどまで行きたいのかと、姫坂は笑みを漏らした。
「いいよ」
「やた!」
この後の授業、伊織は放課後のおでんツアーで頭がいっぱいだった。
正確に言うと、おでん食べたさではなく、“仕事”だ。
(姫、騙すような事してごめん……)
姫坂には見えないところで、伊織の表情は暗かった。
さかのぼる事、一昨日の夜。
組織からのメールが届いた。
先に伊織がそれを受け取って中身を開いた。
「っ……」
仕事内容は、本来の護衛とはかけ離れたものだ。
『Aグループ窃盗班所属 久我正治の審査員要請』
審査―――。
伊織はそろそろ来ると思っていた。
自分たちの審査員も、久我の審査も。
久我が組織に所属した年数は2人より2年ほど浅かった。
姫坂が所属している年数はその1年後あたり。
入学後すぐに伊織も鷹司も審査を受けて、合格している。
話をしてはいないが、姫坂も審査を受けているはずである。
審査の内容は人によって異なるが、所属年数と仕事の経験年数を考慮して行われるのだ。
その内容は審査対象に出来るだけ精神的苦痛を味わせ、耐えることが出るかを見るものだ。
審査の合否は仕事の成功、失敗に関係ない。
審査の大まかな指示は上から出されるが、 審査員の行動は基本審査員同士で連携を取る。
審査員に抜擢されるのは、既に審査を経験済みな者たちだ。
審査から1年以上経過した者で同グループが中心となるが、審査対象の人物の人付き合いにもよる。
審査員の人数は7~8人程度。
審査員も同時上からの審査対象となっている。
下手に甘くすると、今後の仕事内容に関わってくる。
本気で審査対象を、おいこまなければならない。
ただし、相方は審査員に含まれない。
相方が同時審査の対象で無い場合、その審査を悟られないよう動く必要性がある。
審査を受けたものは、審査の存在自体を口外してはならない。
それが、相方であってもだ。
姫坂は感が鋭い。
どう考えても、この場合姫坂を久我から放すのは自分の役目になるだろう。
伊織にとって、姫坂をだますのは気がひける。
しかし、普段の仕事と違ってこの審査員は拒否することが出来ない。
「真ぉ……どうしよう?」
審査員要請には鷹司の名前もある。
「やるしかないだろう、伊織」
「けど…」
「久我なら耐えられるさ」
「うー…」
『審査員要請
審査対象:Aグループ窃盗班所属 久我正治
以上1名。
以下の7名は上の者を審査せよ。
Aグループ 護衛班:綾瀬伊織
Aグループ 護衛班:鷹司真
Aグループ 救護班:春名桜介
Aグループ 医療班:秋元倫
Aグループ 開発班:神楽慎之介
Bグループ 暗殺班:王寺優成
Bグループ 暗殺班:澤邑健
詳細は添付資料にて』
寮の部屋にも教室にもばっちりエアコンの暖房は完備されているが、廊下までは行き届きにくいし、
教室も場所によっては隙間風が入ってくる。
寒がりな生徒は、ひざ掛けをかける者や、足元に小さなヒーターを置く者もいた。
姫坂もそのうちのひとりだ。
ヒーターはまだ出番がないが、すでにひざ掛けを使用している。
姫坂の席は綾瀬の席の後ろである。
そのため授業中はもちろん休み時間も席を離れることは少なかった。
休み時間ともなれば、綾瀬がまってましたとばかり椅子を後ろにまたいで姫坂と話を始める。
今もそんな具合だ。
「姫ー、おでん食べに行こー?」
「いいよ。でも―――」
「こっそり車出すからさー暖房入れるし!
駅前から少し外れてるけど、そこ、安いし美味しいんだー。
今季おでんまだでしょ?今日デビューしようよ、食べたいー」
それほどまで行きたいのかと、姫坂は笑みを漏らした。
「いいよ」
「やた!」
この後の授業、伊織は放課後のおでんツアーで頭がいっぱいだった。
正確に言うと、おでん食べたさではなく、“仕事”だ。
(姫、騙すような事してごめん……)
姫坂には見えないところで、伊織の表情は暗かった。
さかのぼる事、一昨日の夜。
組織からのメールが届いた。
先に伊織がそれを受け取って中身を開いた。
「っ……」
仕事内容は、本来の護衛とはかけ離れたものだ。
『Aグループ窃盗班所属 久我正治の審査員要請』
審査―――。
伊織はそろそろ来ると思っていた。
自分たちの審査員も、久我の審査も。
久我が組織に所属した年数は2人より2年ほど浅かった。
姫坂が所属している年数はその1年後あたり。
入学後すぐに伊織も鷹司も審査を受けて、合格している。
話をしてはいないが、姫坂も審査を受けているはずである。
審査の内容は人によって異なるが、所属年数と仕事の経験年数を考慮して行われるのだ。
その内容は審査対象に出来るだけ精神的苦痛を味わせ、耐えることが出るかを見るものだ。
審査の合否は仕事の成功、失敗に関係ない。
審査の大まかな指示は上から出されるが、 審査員の行動は基本審査員同士で連携を取る。
審査員に抜擢されるのは、既に審査を経験済みな者たちだ。
審査から1年以上経過した者で同グループが中心となるが、審査対象の人物の人付き合いにもよる。
審査員の人数は7~8人程度。
審査員も同時上からの審査対象となっている。
下手に甘くすると、今後の仕事内容に関わってくる。
本気で審査対象を、おいこまなければならない。
ただし、相方は審査員に含まれない。
相方が同時審査の対象で無い場合、その審査を悟られないよう動く必要性がある。
審査を受けたものは、審査の存在自体を口外してはならない。
それが、相方であってもだ。
姫坂は感が鋭い。
どう考えても、この場合姫坂を久我から放すのは自分の役目になるだろう。
伊織にとって、姫坂をだますのは気がひける。
しかし、普段の仕事と違ってこの審査員は拒否することが出来ない。
「真ぉ……どうしよう?」
審査員要請には鷹司の名前もある。
「やるしかないだろう、伊織」
「けど…」
「久我なら耐えられるさ」
「うー…」
『審査員要請
審査対象:Aグループ窃盗班所属 久我正治
以上1名。
以下の7名は上の者を審査せよ。
Aグループ 護衛班:綾瀬伊織
Aグループ 護衛班:鷹司真
Aグループ 救護班:春名桜介
Aグループ 医療班:秋元倫
Aグループ 開発班:神楽慎之介
Bグループ 暗殺班:王寺優成
Bグループ 暗殺班:澤邑健
詳細は添付資料にて』
0
あなたにおすすめの小説
キスの仕方がわかりません
慶野るちる
BL
全寮制男子校に入学した市原はクラス委員長になったため書類を提出しに生徒会室に行くと、そこに一人いた、初対面の副会長の近藤に襲われてしまう。
混乱するも相部屋の同級生・松川に助けられて元気を取り戻したある日、生徒会長の桜野から仕事を手伝って欲しいと依頼される。
最初は近藤に無視されていたが手伝う中で近藤から告白され、近藤への印象が少しずつ変わっていく市原だが。
表紙:Photo by Markus Spiske on Unsplash / powered by かんたん表紙メーカー様
消えることのない残像
万里
BL
最愛の兄・大貴の結婚式。高校生の志貴は、兄への想いが「家族愛」ではなく「恋」であったと、失恋と同時に自覚する。血の繋がりという境界線、そして「弟」という役割に縛られ、志貴は想いを封印して祝福の仮面を被る。
しかし数年後、大貴の息子が成長し、かつての兄と瓜二つの姿となったとき、止まっていた志貴の時間は歪な形で動き出す。
志貴(しき):兄・大貴に長年片思いしているが、告げることなく距離を置いていた。
大貴(だいき):志貴の兄。10歳年上。既婚者で律樹の父。無自覚に人を惹きつける性格。志貴の想いには気づいていない。
律樹(りつき):大貴の息子。明るく素直だが、志貴に対して複雑な感情を抱く。
とあるパーティの解散、あるいは結成
深山恐竜
BL
勇者パーティがダンジョンのトラップにかかって「天井が落ちてくる部屋」に閉じ込められた。脱出の術がなく、もはやここで圧死するのを待つのみ……と諦めた時、僧侶が立ち上がった。
「どうせ死ぬなら最期に男と性交してみたいんですが。この中に男が好きな方いらっしゃいませんか?」
死を前にして始まるパーティメンバーたちの性癖の暴露大会。果たして無事に外に出られるのか…?
(ムーンライトノベルズ様にも掲載中)
エスポワールに行かないで
茉莉花 香乃
BL
あの人が好きだった。でも、俺は自分を守るためにあの人から離れた。でも、会いたい。
そんな俺に好意を寄せてくれる人が現れた。
「エスポワールで会いましょう」のスピンオフです。和希のお話になります。
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。
花びらは散らない
美絢
BL
15歳のミコトは貴族の責務を全うするため、翌日に王宮で『祝福』の儀式を受けることになっていた。儀式回避のため親友のリノに逃げようと誘われるが、その現場を王太子であるミカドに目撃されてしまう。儀式後、ミカドから貴族と王族に与えられる「薔薇」を咲かせないと学園から卒業できないことを聞かされる。その条件を満たすため、ミカドはミコトに激しく執着する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる