異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

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本編

-69- ピアスとブローチ オリバー視点

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このように研究結果が予定より早くまとまってしまうと、つい、アサヒのことを考えてしまいます。
アサヒが私を虜にしているから、仕方ありませんね。

アサヒがこちらに来てから二週間が経ちました。
アサヒ=クリフォードから、アサヒ=ワグナーになったのはつい先日のことです。
先に入籍届の用紙が父上から届き、あまり間を置かず、昨日のことです、ピアスとブローチが届きました。



「オリバー様、ブローチとピアスが届きましたよ、外出用のスーツもご一緒に。今朝は急いでいらっしゃるようで…いえ、今朝も、でしょうか。仕事が片付いてから、改めてこちらに立ち寄られるようです」
「え、随分早いね?もう少しかかると思っていたよ」
「シャーロット様が一役買ったようですよ」
「ああ、母上が。なら、納得だ」
「早速アサヒを呼んで、スーツも合わせてみましょう」

机に向かっていると、幾分興奮した声でタイラーから声がかかりました。
この朝の時間では、珍しいことでしたが、なるほど、そうでしたか。
相変わらず、父上と兄上は弾丸のごとく……忙しいのは、何よりです。

そろそろアサヒは、おはぎとの鍛錬が終わるころです。
アサヒは午前中をタイラーとおはぎに使い過ぎだと思うのですが、おはぎとの鍛錬もタイラーの仕事も私のためだと思えば辛抱するしかありません。
鍛錬が終わったアサヒは、タイラーの仕事を1時間ほど手伝い、一緒におやつを食べて、またタイラーの仕事を手伝い、そしてお昼を迎えます。
今回は、タイラーのお許しが出たのです。
彼の気が変わらないうちに、10時のおやつの前の時間を私がもらいましょう。


それにしても、本当に早い。
入籍届の書類もそうでした。

互いの名前の他に、双方証明する見届け人のサインが必要になるのですがどちらの名前もしっかりと入った状態で手元に届きました。
大抵の場合は、親が、でない場合は、代理人を立てる必要があるのです。
こちらは、父上が急かすので、私とアサヒがそれぞれ名前を入れて、タイラーが届を出すというなんとも事務的な作業になってしまいました。
アサヒには申し訳なかったのですが、さほど気にしていない様子でした。
それより、『これで正式にオリバーの妻?旦那?どっちでもいっか。改めてよろしくな』と、少し照れながらはにかむ様子がとても可愛らしかった。
あまりにも可愛らしかったのでつい、その後すぐに温室にあるソファで盛ってしまいました。
日の高い、午後のこと。
流石にその時は怒られてしまい、おやつの時間まで口を聞いてくれませんでしたね。


そして、ピアスとブローチが、今私の手の中にあります。
私のピアスとブローチについては、前々から石だけは保有していたのでわかります。
ですが、アサヒの色の黒い宝石については、随分早い対応だと思いました。

養子を受け入れてくれたからといって、ピアスとブローチの準備をしろ、とは言えませんでしたが、
是非、用意させて欲しいとおっしゃったようで、ならばとお言葉に甘えることにしたのです。

しかし、クリフォード子爵は穏やかな方ですが、宝石については明るくないのでは、無理をされていないか…と少し心配していました。
ですが、杞憂だったようですね。
母上は、用意周到といいますか、計画的な考えをする方です。
欲しいものがあれば、周りを味方につけて、あれよあれよと手に入れる方です。
顔にも態度にも出ない上に、穏やかに淑やかに見せていながら、その手腕はいつも舌を巻くほどです。
アサヒを私に送ったと聞いた時点で、色々と水面下で動かれていたのかもしれません。

2人きりで交わしたいとも思いましたが、スーツもとなると、扱いにタイラーがいてくれたほうが助かります。
それに、折角ならソフィアにもそろいのスーツを着たところを見せてあげたい。
私の、というより、アサヒの、ですが。


玄関ロビーの途中で、アサヒとおはぎに出くわしました。
アサヒが幾分驚いた顔をしていますが、私の手の中にある二つの箱を目にしてから、私へと視線を向けてきました。
この箱がなければ、さぼっていることに対してお咎めを言ってくるでしょう。

アサヒは、大雑把に見えて、とても真面目です。
小さいことはあまり気にしない性格ではありますが、仕事は別のようです。
書類も丁寧だし、計算も正確で早いと、タイラーが絶賛していたほどです。
吸収も早いので、教えるのが楽しいのでしょう。
それに、私の仕事への意識が、アサヒへと向かうことも許してはくれません。
仕事は仕事、しっかりやれ、と言ってきます。
自分がいることで、少しも私の仕事が滞ってはいけない、と、思っているようです。

温室で盛って怒られたのは、本来、仕事の時間だったからだと思います。
プライベートの時間であったならば、違ったかもしれません。

温室には、年明けに日が変わるころ、一年に一度咲く花があります。
今年は一緒に見られるでしょうか。
今から楽しみです。


それに、恋愛観に関しても、真面目です。
私がアサヒだけを望むように、彼もまた、私だけを望んでくれました。
神器様という立場でしたら、結婚ではなく、そのまま神器様としても生きられるのです。
それが普通で、自分のタイプの人間を私の夫人にあてることだって、もっと贅沢で楽な暮らしを望むことだってできるのです。
何もせず、ただ、言われるままに魔力を譲渡し、交わり、子をなすことだけをすればいい。
本来、神器様とはそういうものです。
ですが、私も、そしてアサヒ自身も、神器様としてではなく、1人の人間としてを望みました。

こんなに奇麗で可愛いらしいので、きっと元の世界でもとてもモテていたことでしょう。
聞いたことはありませんでしたが…というか、ただ、私が臆病で聞けないだけなのですが、要所要所で慣れを感じました。
快感をすぐに追えるのは、きっと初めてではないからでしょう。

ですが、時折、戸惑いも見せるのです。
私の言葉や愛撫の一つ一つで戸惑いを見せてくれます。
慣れていないことも、それでも私を愛して、受け入れてくれるのが分かります。
そう、アサヒは、愛されなれていない。
行為そのものに慣れていても、愛されることには慣れていない。
それが、とても可愛らしい。


「ピアスとブローチが届きました。スーツも一緒に届いたので合わせてみませんか?」
「わかった」
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