異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

文字の大きさ
72 / 218
本編

-72- ピアスとブローチ オリバー視点

しおりを挟む
「まあまあオリバー様、アサヒ、二人ともとてもお似合いですよ」
「ありがとう、ソフィア」

タイラーに手伝ってもらい揃ってスーツを着込みました。
上質な黒地のスーツで、袖口や襟元に水色の刺繍が入っている揃いのものです。
私のクラバットは、黒地に美しく細かい七色に輝く粒子が散りばめられていて、見たことのない生地でした。
黒でもこのような色の生地があるのですね。
アサヒは水色のクラバットで、私の髪色そっくりです。
細めでシンプルなものでしたが、それがかえってブローチにもあうようで、とても良く似合っています。

「アサヒ、少し髪も整えてみましょう」

タイラーが良い笑顔で整髪剤を手にしています。
本来、他人を色々と着飾ったり整えるのが好きなのかもしれませんね。
スーツの時にも思いましたが、タイラーは、とても手慣れています。
私が目立つのを嫌い今まで着飾ることをしなかったので、そういった機会がなかったものですが、これからは少し手を加えてもらい、身なりに気を遣おうと思います。

アサヒと一緒ならば、自分を着飾ることも必要かもしれません。
アサヒの美しさが目立ってしまっては、私は常に嫉妬しなければならないでしょう。
それならば、まだ、自分に向けられる方が幾分マシですから。

「じゃあ、頼もうかな」
「ええ、お任せください」

アサヒの髪はふだんそのままですが、タイラーが前髪と耳のあたりを流すように軽くセットしただけで、ぐっと色気が増しました。
どこぞの御曹司ですか?と言いたくなるような、美しさです。
ああ、これは本当にピアスとブローチがあって良かった。
もしなければ、これは簡単に外に晒していいものではありません。

「少し弄っただけですが、大分印象が変わりましたね。どうです?」
「はは、なんか見た目で人騙せそうだわ」

アサヒはタイラーに鏡を渡されて、自分の姿に笑いを漏らしました。
確かに、騙せそうなほど、魅力的です。

「さて。オリバー様はどうしましょうか?そのままではピアスがあまり目立ちませんね」
「この際、ばっさり切ってしまいましょうか?」
「そうですね……」
「え?切っちまうのか!?」

タイラーが同意しかけたところで、アサヒが悲しそうな顔で私を見てきました。
その恰好でその表情はずるいです。

「最初に長くしていたのは出来るだけ目立ちたくないからだったのですが、今はもうその必要もありませんし、最近は面倒でそのまま長くしていただけですから」
「けど、もったいねえじゃん。せっかく綺麗なんだし。俺はお前のその長い髪、結構気に入ってんだけど」
「なら、切らずにこのままにします」

アサヒが気に入っているなら、切るという選択はないですね。

「前髪だけ少し流してそのまま一つに結ぶのでも印象は変わると思いますが」
「任せるよ」
「あ、じゃあこの辺編み込める?」
「どのようにしましょうか」

アサヒがしてほしい髪型があるようですね。
私はまったくと言っていいほど髪型には頓着ありませんので二人に任せましょう。

「えーと…分け目を少しずらしてこのあたりからとって」
「こうですか?」
「そう。で、少ない方のこっちをこう、こめかみ部分から横に3つに分けて、それぞれ襟足あたりまで編み込んでくの。
で、後ろまできたら、合流させてこっから三つ編み。できる?」
「ああ、なるほど。斬新ですがいいですね、やってみましょう」
「なんか手伝う?」
「オリバー様がじっとしてるよう、目の届くところで相手してあげてください。髪をいじられるのは慣れてませんでしょうから」
「はは、了解」

良い大人ですからじっとしてるくらいできる、と言いたいところでしたが、アサヒが傍にいすぎても、離れすぎても身体が動きそうです。
これは、確かにアサヒの協力が必要ですね。
タイラーを怒らせてはいけません。

「アサヒのいたところでは、こういった髪型のアレンジは多かったのですか?」
「いや、全然。外で働きに出てるやつは髪型の規定があるところが多かったと思うし、一般的ではなかったけどな。
でも、バンドとか…あー音楽家?ちょっと違うか…まあでも、一部の人はアレンジしてたぞ。そもそもあんまり長い髪の男性がいなかったからな。
一昔前は長いのが流行った時期もあったらしいから、流行もあるんだろうけどさ」
「そうですか。ピアスはしっかりと見せておきたいですね」
「毎日やると地肌痛めそうだから、特別な時だけな」
「はい」

「もう、痛くないのか?」
「ええ、だいぶ治まってますよ。そもそもそれほど痛みはなかったですし、数日で馴染むはずです」
「…オリバー様」

あ、タイラーの手が止まってしまいました。
咎めるような私の名を呼ぶ声に、嫌な予感がします。

「オリバー様、ご自身で開けずに互いに開けたのですか?」
「あー、まあ、うん」
「何故そのようなことを?きちんとアサヒに説明されましたか?」

互いに開け合うことは、あまり良い行為とは言われていません。
わざわざ痛みの伴う行為をせずとも安全で安心につけることが出来るのは自分自身にのみ。
相手がつけるというこの行為、安全性もそうですが、束縛すぎるといった点で良しとされていないのです。

ちなみに魔力の全くないものがつける場合には、神殿で先に耳朶に穴をあけてもらい、針のあるピアスをはめ込むことになるようです。
これは本当にごく稀だと聞いています。
魔力の全くないものは珍しいですからね。

「した、はずだよ」
「本当ですか?オリバー様は常日ごろ大切な言葉に限って足りないことがありますから」

そう言われてしまうと、自信を無くしてしまいます。
アサヒには、私しか外すことが出来ないことも伝えましたし、もし私が予期せず亡くなってしまった場合は外すことが出来ないことも伝えました。

「タイラー、普通は自分でつけるってことも聞いたし、付けた奴しか外すことが出来ないってのも、オリバーからちゃんと聞いた。その、万が一事故で亡くなることがあった時でも外せないってのも聞いた」
「自身で開ければ痛みは伴わず、互いに開ければ多かれ少なかれ痛みが伴うこともお聞きしましたか?」
「あー、それは聞いてない。けど、俺はちっとも痛くなかったぞ?」
「少しも?」
「ああ、ちょっとあったかいくらいで、全く痛くなかった」
「……そうですか。なるほど」

何がなるほどなのかはわかりませんが、タイラーの止まっていた手が動き出し、それ以上のお咎めもなかったので、納得してもらえたようですね。
小さくため息を吐くと、アサヒが面白そうに笑い、ため息を吐いた拍子に少し頭が傾いてしまったのでしょう、タイラーからそっと頭の位置を戻されてしまいました。


「眼鏡は邪魔ですね、取りましょう。これほどまでに印象がかわるとは…大分はったりが効きそうですね。アサヒはセンスが良い」

出来上がった髪型を目にし、タイラーが驚きの声を上げました。
目の前で私の相手をしていたアサヒが、私を見て満足げに笑みを浮かべてくれます。
アサヒが気に入ってくれるならば、文句の一つもありません。

「似合いますか?」
「ああ、すげーかっこいい」
「アサヒも…いつも以上に美しく魅力的です。とても似合っていますよ、アサヒ」

ああ、アサヒにそんな風に言われてしまうと、急に照れてしまいますね。
眩しそうな笑顔で見上げるアサヒが、私の言葉で目元と頬を赤く染めました。
本当に綺麗で、たまらないほど可愛らしい。

私の、自慢の伴侶です。




+++++++++++++++++++++

あけましておめでとうございます。
年明け初めの投稿となりました。

本年度もよろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...