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本編
-98- 後悔しない選択
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『アサヒ』
「え?」
急におはぎの声がすぐそばで聞こえてきた。
や、まずいだろ、ここで出てきちゃ駄目だろ。
帝都だと騒ぎになって捕まっちまうかもしれないんだろ?
『今、おはぎの声、アサヒにしか聞こえてない』
「…マジか」
『アサヒ、しゃべらない。アサヒ変に思われる。思ったらおはぎに伝わる』
(マジで?思うだけで?頭ん中で喋れんの?)
『そう。アサヒが思うだけで、おはぎに伝わる。会話できる』
「アサヒ?どうしました?」
「あー…や、大丈夫。これもあとで、家に帰ってから話す」
「そうですか。わかりました」
オリバーは…なんか察してるっぽいな、おはぎが俺と話してるの。
じゃなきゃ、心配が表情に出るもんなあ。
医者とオリバーはそのまま話を進めているが、俺は俺でおはぎと話をしねえと。
『アサヒ、魔力上がるの言っちゃダメ。あの人間たち喋る』
(医者は喋らなくても、あの子の親御さんはなんかの拍子に喋っちまうってことか)
『そう。だから、言っちゃダメ。おはぎが魔法かける』
(ん?)
『おはぎが、あの子に魔法かける』
(どうやって?)
『アサヒの目と声、魔法かけるときだけ借りる』
(そんなんできんの?それって変に思われねえの?)
『このドクター、鑑定得意。アサヒの眷属に、おはぎ見えてる。でも言わない、黙ってる』
(マジか……)
『それに、いい人』
(おはぎが言うのなら、いい人なんだな)
『ん』
(じゃあ、俺がやるって言えばいいんだな。医者もオリバーもそれで察してくれるだろうし)
『ん。アサヒ、暗示はおはぎでも解けない。でも、重ねること出来る』
(了解)
ってことは、俺が暗示をかけることを伝えればいいわけだ。
けど、極力広まるのはまずいわけだから、黙ってくれるよう頼むしかない。
うっかり喋っちまったらそれまでだが、助けられるのに助けないっつー選択肢は俺にはない。
あとは、今後の対策をたてるしかねえだろうなあ。
「先生、オリバー、今回は俺が暗示をかける。
親御さんたちは、俺が暗示をかけたってことは黙っていて欲しい。
それが約束できるならーーー」
「「出来ますっ!」」
ちらりと医者とオリバーを見やると、どちらも複雑そうな顔で俺を見てる。
いや、分かってる。
たぶん、どちらもおはぎを頼るっつー選択肢はなかったはずだ、わかっていても、だ。
俺より全然二人の方が魔法には詳しいだろうし、おはぎが精霊で、色々出来るってこともわかってるだろう。
「アサヒ……」
オリバーが、心配そうな顔をして俺の名前を呼ぶ。
こいつは、苦しんでる赤の他人より俺の小さなリスクを回避する男だ。
他人から見たら薄情な奴だと思われるかもしれない。
けど、俺はそれで構わないと思ってる。
寧ろ、俺を優先するオリバーに満足してる。
愛されてると実感してんだ。
俺も結構頭がイカれてるなって思う。
「だってさあ、助けられるのに助けないってのは、やっぱねえなって思って」
「ですが、今回だけとは限らないでしょう?」
「だから、口止めしたんじゃん」
「同じ状態な人は彼女に限ったことではないんですよ?」
「それは…そうかもしんないけど」
「だったらーーー」
「けど、俺は、目の前に自分が助けられる奴がいて、保身のために黙って何もしない方が絶対後悔するし、後々ずっと引きずる。
だから今回のことは、ただの俺の自己満足だ。
全員何とかしたいとかそんな善意持ち合わせてねえもん」
「ですが……」
オリバーが、ちらりと医者に目を向ける。
あー、そっか、医者への言い訳を考えてんのか。
「先生は、気がついてるらしいから、俺が暗示をかけたって不思議に思わないぞ」
「まあ…そうじゃな。初めから言う気も頼む気もどちらも無かったのは確かじゃ。医者としては失格かもしれん」
「だってよ。それでも駄目か?」
「そ、うですか……わかりました。今回だけですよ?今回だけ、アサヒを頼ります」
オリバーがやっと折れてくれた。
ただ、俺のわがままを通してくれただけっちゃだけなんだが、すげー悔しそうな顔をしてくる。
綺麗な顔が悔しそうに歪んでも綺麗なんだなあ、とか惚けそうになる。
あんま、こう言う顔はさせたくねえんだけど。
「ん。お前がいつも俺を優先してくれるのは、すげー嬉しいし、感謝もしてる。ありがとな」
「っ……はい」
綺麗に笑みをひくオリバーに安心感と優越感を覚えた俺は、早速まだ目を瞑っている少女のそばへと足を進めた。
「え?」
急におはぎの声がすぐそばで聞こえてきた。
や、まずいだろ、ここで出てきちゃ駄目だろ。
帝都だと騒ぎになって捕まっちまうかもしれないんだろ?
『今、おはぎの声、アサヒにしか聞こえてない』
「…マジか」
『アサヒ、しゃべらない。アサヒ変に思われる。思ったらおはぎに伝わる』
(マジで?思うだけで?頭ん中で喋れんの?)
『そう。アサヒが思うだけで、おはぎに伝わる。会話できる』
「アサヒ?どうしました?」
「あー…や、大丈夫。これもあとで、家に帰ってから話す」
「そうですか。わかりました」
オリバーは…なんか察してるっぽいな、おはぎが俺と話してるの。
じゃなきゃ、心配が表情に出るもんなあ。
医者とオリバーはそのまま話を進めているが、俺は俺でおはぎと話をしねえと。
『アサヒ、魔力上がるの言っちゃダメ。あの人間たち喋る』
(医者は喋らなくても、あの子の親御さんはなんかの拍子に喋っちまうってことか)
『そう。だから、言っちゃダメ。おはぎが魔法かける』
(ん?)
『おはぎが、あの子に魔法かける』
(どうやって?)
『アサヒの目と声、魔法かけるときだけ借りる』
(そんなんできんの?それって変に思われねえの?)
『このドクター、鑑定得意。アサヒの眷属に、おはぎ見えてる。でも言わない、黙ってる』
(マジか……)
『それに、いい人』
(おはぎが言うのなら、いい人なんだな)
『ん』
(じゃあ、俺がやるって言えばいいんだな。医者もオリバーもそれで察してくれるだろうし)
『ん。アサヒ、暗示はおはぎでも解けない。でも、重ねること出来る』
(了解)
ってことは、俺が暗示をかけることを伝えればいいわけだ。
けど、極力広まるのはまずいわけだから、黙ってくれるよう頼むしかない。
うっかり喋っちまったらそれまでだが、助けられるのに助けないっつー選択肢は俺にはない。
あとは、今後の対策をたてるしかねえだろうなあ。
「先生、オリバー、今回は俺が暗示をかける。
親御さんたちは、俺が暗示をかけたってことは黙っていて欲しい。
それが約束できるならーーー」
「「出来ますっ!」」
ちらりと医者とオリバーを見やると、どちらも複雑そうな顔で俺を見てる。
いや、分かってる。
たぶん、どちらもおはぎを頼るっつー選択肢はなかったはずだ、わかっていても、だ。
俺より全然二人の方が魔法には詳しいだろうし、おはぎが精霊で、色々出来るってこともわかってるだろう。
「アサヒ……」
オリバーが、心配そうな顔をして俺の名前を呼ぶ。
こいつは、苦しんでる赤の他人より俺の小さなリスクを回避する男だ。
他人から見たら薄情な奴だと思われるかもしれない。
けど、俺はそれで構わないと思ってる。
寧ろ、俺を優先するオリバーに満足してる。
愛されてると実感してんだ。
俺も結構頭がイカれてるなって思う。
「だってさあ、助けられるのに助けないってのは、やっぱねえなって思って」
「ですが、今回だけとは限らないでしょう?」
「だから、口止めしたんじゃん」
「同じ状態な人は彼女に限ったことではないんですよ?」
「それは…そうかもしんないけど」
「だったらーーー」
「けど、俺は、目の前に自分が助けられる奴がいて、保身のために黙って何もしない方が絶対後悔するし、後々ずっと引きずる。
だから今回のことは、ただの俺の自己満足だ。
全員何とかしたいとかそんな善意持ち合わせてねえもん」
「ですが……」
オリバーが、ちらりと医者に目を向ける。
あー、そっか、医者への言い訳を考えてんのか。
「先生は、気がついてるらしいから、俺が暗示をかけたって不思議に思わないぞ」
「まあ…そうじゃな。初めから言う気も頼む気もどちらも無かったのは確かじゃ。医者としては失格かもしれん」
「だってよ。それでも駄目か?」
「そ、うですか……わかりました。今回だけですよ?今回だけ、アサヒを頼ります」
オリバーがやっと折れてくれた。
ただ、俺のわがままを通してくれただけっちゃだけなんだが、すげー悔しそうな顔をしてくる。
綺麗な顔が悔しそうに歪んでも綺麗なんだなあ、とか惚けそうになる。
あんま、こう言う顔はさせたくねえんだけど。
「ん。お前がいつも俺を優先してくれるのは、すげー嬉しいし、感謝もしてる。ありがとな」
「っ……はい」
綺麗に笑みをひくオリバーに安心感と優越感を覚えた俺は、早速まだ目を瞑っている少女のそばへと足を進めた。
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