異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

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本編

-114- コナーからの返事

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「アサヒ、コナーから返事が来ましたよ」
「おう、なんだって?」
「貰いすぎ、だそうです」
「ははっ……」

早朝からおっぱじめたあの日から三日後、つまり手紙を出してから三日後だな。
手紙はすぐに届けられたはずだが、受け取って読んで次の日には返事を出された感じか。
流石商人だ、早い。

俺がコナーに当てた手紙には、商会の受付における現在のデメリットとその改善点だ。

キャンベル商会に来た客が自由に受付を選べるシステムだが、それがまず良くないと思った。
早く来ても列の捌きが遅ければ遅くなり、運任せになる。
受付は新人も多いと聞くし、捌きが悪いとプレッシャーにもつながるだろ?
そんなん仕事の効率的なことだけじゃなく、精神的に悪い。

それと、初めての客に対して些か不親切だったように思う。
広いからこそ、だ。

なので、まず、総合案内の受付を設けることを提案した。
総合案内の受付は、ある程度中堅の者に任せて、スムーズ且つ的確に判断出来る者が対応する。
総合受付で、新規の相談、取引希望、定期納品等、内容の種類ごとに番号札を渡し、各受付は番号順に捌いていく。
───まあ、元の世界の銀行や郵便局と同じやり方だ。
効率がいいだけじゃなく、自分があとどのくらいで呼ばれるのかもおおよそ見当がつくし、安心して順番を待てるだろう。

客が受付を選べる、となると受付と常連客の間で不正に繋がる可能性もあり得る。
このやり方なら、不正を防ぐことも出来るはずだ。
元の世界の様に監視カメラなんてもんはないし、それに客側にも商会員側にも繋いで続く衝立があった。
客の持ち込みを配慮し、スペースを均等に保つための作りだろうが、だからこそ人の目を盗もうと思えばいくらでも盗めちまう。
商品確認が別の人間だとしても、だ。
だから、第二の提案として、商会側の衝立は取り去るか衝立が必要なら木製の物から強化ガラス製のものにすべきだと伝えた。


「早速アサヒの提案を取り入れたら、初日から不正が判明し、2人解雇されたようですね」
「うわ、マジか」

オリバーの隣に座り、横から手紙を覗き込む。
文字は綺麗だが、些か興奮気味なのが伝わってくる文面だ。
語尾に“!”が多いな。


「明後日の夜、都合がつくのなら食事をご馳走してくれるそうですが、受けますか?」
「ああ、勿論。愛斗もつれてくるって書いてあるし、会っておきたい」
「………」
「なんだよ?行きたくねーの?」

食事は勿論俺だけじゃなく、オリバーも一緒に……っつーか、ハンドクリームのお礼も兼ねて是非食事をご馳走させて欲しいから、オリバーが連れてこいって書かれてある。
だから、俺へのお礼だけじゃなく、半分はオリバーへのお礼だ。
けれど、オリバーの表情は微妙に困ったような顔をしている。
なんだ?どうした。
こいつの許容範囲なんて、一緒の時なら結構寛容だったはずだ。
なんかあんのか?

「ええと……まあ、食事は良いんですよ?ありがたいのですが……」
「じゃ、何?」
「その、この店は本店と違ってカジュアルですが味は確かですし、ゆっくりくつろげる空間ですし、店自体はとても評判が良いのですが……」
「で?」
「………」
「何?怒んねえから、はっきり言え」

つーか、すでにはっきりしないこの状況にイラっとしてきちまってる。
怒んねえから───は、言っといてなんだが、保証できない。

「アサヒ、すでに怒ってませんか?」
「お前がはっきりしないから、ちょっとイラついてきてる」
「……それは、すみません。その、現在のチーフが、私の元恋人です」
「は?」

「ですから、この店の今のチーフが、私が昔お付き合いしていた方なんです。
一番長くお付き合いしていたので、コナーは勿論知っています。
本店じゃなくこちらの店を選んだのは態とかと思います」

「へえ……」
「あ、あちらももう結婚していますよ?チーフはその彼ですが、彼の旦那さんは料理長です」

オリバーの元カレか。
どんな奴か全く気にならないと言ったら嘘になる。
それに、一番長くお付き合いしていた、とか言うから余計に、だ。

「お前は未練があんのか?」
「あるわけないでしょう!冗談でもそんなこと言わないでください」
「向こうには?」
「ないはずです。料理長の夫を幸せそうに紹介してくれましたから」

なんだ、なら、知ってて行かなかったわけじゃなくて、行ったら知ったのか。
だったら問題ないどころか、行った方がいいじゃねえか?
コナーだって知ってて選んだっつーんだから、嫌がらせじゃなくて、オリバーのために選んだんだろう。

「なら、俺は全然問題ねえよ?寧ろ、お前も幸せになったって報告してやれ」
「?!───はい、ありがとうございます」
「ぐえっ……重てえっての」

ぎゅっと抱きしめてくるオリバーに悪態をつくが、この重さが俺にとってはすげー心地いい。
それをオリバー自身も知ってるから、重たい、苦しい、暑苦しいなんて言ったとしても、いつも嬉しそうに笑うわらうだけだ。
ほら、今日もそうだ。
そうやって、眩しそうに心底嬉しそうに笑ってくるから、俺はそれだけでまたときめいている。
少女漫画じゃあるまいし、あー……いつまでこんな感情が続くんだろな?
オリバー相手じゃ、一生治まんないかもしんねえな。
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