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本編

-162- 魔法のフェラホール*

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真っ白な筒状の魔道具を手に取ってみると、思ったより軽かった。
中央部分だけがガラスで出来ているのか透明になっていて、シリンダーの様に目もりがついてる。

あ、そうそう。
目もりって言ったらさ、帝国で共通した長さの単位がないんだぜ?
物の名前が大雑把だと愛斗が言っていたが、知った後では名前より俺はそっちの方が気になったぞ。

俺の距離の見方は、前の世界と同じメートルで考えたい。
だが、ここの世界は違う。
金と重さの単位は共通であるのに、長さの単位っつーか、基準?
それがバラバラだからすげー不便だ。

感覚としちゃ、店やギルドによってメートルだったりフィートだったりインチだったりヤードだったり尺だったりする感じだ。
長さを測るメジャーはあるが、その規定がバラバラなんだ。
絶対統一したほうが良いと思う。


───は、兎も角。
魔道具に意識を戻そう。
筒状の長さといい、縦に並んだ四つのボタンといい、全体的なフォルムといい、どう見たって電動オナホだ。
や、よく見ると上部の穴の中に突起物が見える。
ってことは、オナホじゃなくて、フェラホールか。
どっちも一緒みたいなもんだな。

「おはぎ……」

急に、おはぎのことが気になった。
おはぎにこういったエログッズを見せていいのだろうか?
見た目や喋り方が幼い上に可愛いにゃんこ型の妖精だ。

「オリバーの。オリバー、ここに隠した」
「だっよなあ」

思っていた返事と違うが、おはぎは誰のものか、どうしてここにあるのかをあっさり暴いた。

まあ、そうだ。
ベッド下にタイラーもソフィアも隠さないだろう。
こんなことするのは、オリバーに違いない。
中学生男子じゃあるまいし、ベッド下なんかに隠すなよな、と思う。
それも、俺の部屋の、だ。

あ、なんかちょっとイラっときちまった。
こっそりこんなところに隠してることに、だ。

や、待て。
いつのもんか分からないよな。
俺が来る前のことかもしれないし……コレ、まさか使われてないよな?
念のため、三回くらい浄化をかける。

「アサヒ、それ、新しいの」
「誰も使っちゃいない、か?」
「ん!」
「そっか……」

おはぎの言葉にほっとする。
てか、受け取るくらい凄いもんなのか?
試しに一番上のボタンを押してみる。

振動もなければ機械音もしない。
なんだ、動かねーじゃん……と思ったが、筒の中を見るとちゃんと動いてるのが見えた。

「うお……っなんだコレ、すげーな」

試しに人差し指を突っ込んでみると、温度や感触がかなり人間の口内と近い。
ここにナイトポーションを入れたら、ほぼ同じになるんじゃないか?

全く電動音がしないところからして、元の世界より優れてるな。
まあ、電気で動いてるわけじゃなく魔法で動いてるわけだから?
こういうのも可能なんだろうけど?
コレ、コナーの拘りと、それに応えた職人の意地を感じてくるな……。



四つのボタン全てを試した。
確かに、フェラフォールの完成度としちゃとても高いものだった。
四つ全ての動きが違うわけで、玄人の動きだ。
娼館なんかにも協力してもらっているかもしれない。
寧ろ、娼館も必要としてるものだろう。
なんせこっちの世界、魔力の相性によっちゃ他人の精液が害になるんだもんよ。
あとは、独りもんの爺さんや、娼館に行く勇気もない男には望まれる魔道具だろうな。

けど、これをオリバーにやること自体間違ってる。
嬉々として貰ったもんじゃないんだろうが……や、そう俺が信じたいだけかもしんねーけどさ。
けどきっと、コナーから押し付けられて上手く断れなかったんだろうなと推測する。
だとしても、だ。
だとしてもっ───受け取ったら同罪だよな。

俺が商会員で、これを売りつけて稼ぐとしたら……やっぱ、足腰弱って介護が必要になっても、性欲強めな爺さんに売りつける。
爺さん本人より、そこん家の家令やメイド長とかが良いか。
世話するメイドが下の世話までしてるとしたら、いくら給金が良くてもあまりに不憫だしな。

あとは、介護職……はないか、こっちの世界じゃ。
入院病棟の患者だな。
病院に入院できるのは、金持ちだけだ。
でかい病院の病棟回るだけで、簡単に何個も売れるだろう。

ま、これは、オリバーには必要ないし、俺も必要としちゃいないな。
しげしげと目にして、箱に戻そうとしたところでノックもなく扉が開いた。

「っアサヒ!」
「あ?」
「───っ!!!」

慌てた様子で扉を開き、俺の名前を呼ぶオリバーに顔だけ振り向いて答える。
すると、オリバーは、声もなく両手で顔を覆ってその場で崩れ落ちた。

俺は思わず、『乙女か!』と、脳内でツッコミを入れちまったぜ。
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