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<第二章 第4話>
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<第二章 第4話>
透明化したまま、警備兵宿舎の中に入った。将兵たちの私物をすべて、魔法の小箱に収納した。
将兵を殺害した現場に戻り、芝生に飛び散った血痕に、左手の手のひらを向けた。
血痕も魔法の小箱に収納した。
すべての血痕を消せたかどうかは、わからない。
だがこれで、大量殺害の証拠は消えた。
これで、グレースとその付き人たちは、屋敷警備隊は集団脱走した、と思うのではないか。無茶な命令のせいで。
上級貴族の屋敷を襲撃して、その令息を暗殺する、というのは、大事件だ。普通の将兵ならば、尻込みするはずだ。
かといって、グレースの命令には、反対できない。
そこで、将兵たちは、私物を持って、集団脱走した。
グレースはすぐに父に連絡し、領国から新しい警備部隊を派遣してもらうはずだ。
しかし、集団脱走だと思わせることができれば、警備兵を使った襲撃事件は、二度と計画しないはずだ。
もっとも、グレースは、執念深い。アニメ版では。
ゆえに今後も、ほかの方法で、クマートの命を狙うはずだ。
用心しなければ。
透明化したまま、十メートルほど上昇した。
帝都の郊外を流れる河川まで飛行した。
十メートル上空から見ても、広い河川だ。
南北大河と呼ばれている。帝国の南北を結ぶ交通と輸送の最重要河川だ。
帝国は、多くの河川と運河で、帝国各地が結ばれている。
南北大河の上空を飛行し、二十キロメートルほど、下流へ移動した。
上空で、飛行を停止した。
水面の近くまで、降りた。
周囲に、灯りの灯った船舶がないことを確認した。
輸送船は、下りの場合、夜間でも航行することが多い。
周囲をよく確認してから、両岸から見て中央付近の水面に、左手の手のひらを向けた。
死体のみの「脱・収納」を念じた。
五十三体の死体が、一気に排出された。
河に落下し、けっこう大きな音を立てた。
だが周囲に、灯りが灯ることはなかった。
岸辺には、停泊している船舶が、いくつも見えたが。
五十三体の死体は、裸だ。服は着ていない。
魔法の小箱の能力だ。念じた物だけを、収納したり取り出したりできる。それにより、本来は分離が難しいものでも、簡単に分離できる。
死体を裸にしたのは、死体の素性を不明にするためだ。
朝になれば、死体のいくつかは、漁船や輸送船に、発見されるだろう。
だが運が良ければ、朝までに、死体の一部は、魚のエサとなる。どのような顔をしていたのかも、わからなくなる。
そうなれば、完全に、身元が不明になる。
帝都から二十キロメートルも離れていれば、帝都で殺害された死体だとは、思わないはずだ。それに、朝になるまでには、さらに下流に流されるはずだ。
魔法の小箱に収納していた血痕も排出し、河に捨てた。
あとは、警備兵たちの服や私物を、どこかに捨てる必要がある。
だが、それは、後日にしよう。
クマートは、透明化したまま、空中を飛行し、自分の屋敷に帰った。
窓から、ベッドルームに入った。
壁の柱時計を見ると、午前一時だった。
明日は、新入生武芸大会だ。
いや、もう今日か。
もう一度寝て、寝不足を防止しなければ。
クマートは、背中に背負った矢筒を置き、ベッドに戻った。
第三章に続く
透明化したまま、警備兵宿舎の中に入った。将兵たちの私物をすべて、魔法の小箱に収納した。
将兵を殺害した現場に戻り、芝生に飛び散った血痕に、左手の手のひらを向けた。
血痕も魔法の小箱に収納した。
すべての血痕を消せたかどうかは、わからない。
だがこれで、大量殺害の証拠は消えた。
これで、グレースとその付き人たちは、屋敷警備隊は集団脱走した、と思うのではないか。無茶な命令のせいで。
上級貴族の屋敷を襲撃して、その令息を暗殺する、というのは、大事件だ。普通の将兵ならば、尻込みするはずだ。
かといって、グレースの命令には、反対できない。
そこで、将兵たちは、私物を持って、集団脱走した。
グレースはすぐに父に連絡し、領国から新しい警備部隊を派遣してもらうはずだ。
しかし、集団脱走だと思わせることができれば、警備兵を使った襲撃事件は、二度と計画しないはずだ。
もっとも、グレースは、執念深い。アニメ版では。
ゆえに今後も、ほかの方法で、クマートの命を狙うはずだ。
用心しなければ。
透明化したまま、十メートルほど上昇した。
帝都の郊外を流れる河川まで飛行した。
十メートル上空から見ても、広い河川だ。
南北大河と呼ばれている。帝国の南北を結ぶ交通と輸送の最重要河川だ。
帝国は、多くの河川と運河で、帝国各地が結ばれている。
南北大河の上空を飛行し、二十キロメートルほど、下流へ移動した。
上空で、飛行を停止した。
水面の近くまで、降りた。
周囲に、灯りの灯った船舶がないことを確認した。
輸送船は、下りの場合、夜間でも航行することが多い。
周囲をよく確認してから、両岸から見て中央付近の水面に、左手の手のひらを向けた。
死体のみの「脱・収納」を念じた。
五十三体の死体が、一気に排出された。
河に落下し、けっこう大きな音を立てた。
だが周囲に、灯りが灯ることはなかった。
岸辺には、停泊している船舶が、いくつも見えたが。
五十三体の死体は、裸だ。服は着ていない。
魔法の小箱の能力だ。念じた物だけを、収納したり取り出したりできる。それにより、本来は分離が難しいものでも、簡単に分離できる。
死体を裸にしたのは、死体の素性を不明にするためだ。
朝になれば、死体のいくつかは、漁船や輸送船に、発見されるだろう。
だが運が良ければ、朝までに、死体の一部は、魚のエサとなる。どのような顔をしていたのかも、わからなくなる。
そうなれば、完全に、身元が不明になる。
帝都から二十キロメートルも離れていれば、帝都で殺害された死体だとは、思わないはずだ。それに、朝になるまでには、さらに下流に流されるはずだ。
魔法の小箱に収納していた血痕も排出し、河に捨てた。
あとは、警備兵たちの服や私物を、どこかに捨てる必要がある。
だが、それは、後日にしよう。
クマートは、透明化したまま、空中を飛行し、自分の屋敷に帰った。
窓から、ベッドルームに入った。
壁の柱時計を見ると、午前一時だった。
明日は、新入生武芸大会だ。
いや、もう今日か。
もう一度寝て、寝不足を防止しなければ。
クマートは、背中に背負った矢筒を置き、ベッドに戻った。
第三章に続く
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