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<第三章 第7話:魔獣登場>
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<第三章 第7話:魔獣登場>
騎士団長の正面に、不用意に立った。
わざと、だ。
だが、息のあがった騎士団長は、罠だと気づかなかった。
巨大な剣を、振り下ろした。クマートに向かって。
クマートが、長剣で受け止めた。
ように、見えた。
だが実際には、受け流した。長剣の切っ先を、右ななめ下に向けて。
擦るような金属音と共に、火花が飛び散った。両者の鋼鉄の剣と、鋼鉄の剣が擦れて。
騎士団長の体勢が、崩れた。クマートが、彼の剣を受け流したからだ。
次の瞬間、踏み込みながら、叩き込んだ。
右手の長剣を、騎士団長の脳天に。兜の上から。剣の刃の部分ではなく、腹の部分で。
白目をむいた。騎士団長が。
前のめりに、倒れた。騎士団長の巨体が。
脳震盪を起こしたのだ。鋼鉄製の長剣で、脳天を、兜の上から強打されて。
数秒間、沈黙が流れた。
観客席も、静まりかえった。
審判も、石像のように、身動き一つしなかった。
だが、五秒か六秒後、審判が叫んだ。クマートのほうに、左手をななめ上に挙げて。
「勝負あり! 勝者、クマート・オスターラント公!」
大歓声があがった。観客席から。
観客たちが、立ち上がって拍手喝采を始めた。スタンディング・オベーションだ。
貴賓席に向かって、深くお辞儀をした。長剣を持った右手を、心臓にあてて。
極悪伯爵令嬢グレースが、王子に耳打ちするのが見えた。
またなにか、たくらんでいる。
王子が、伝令を二名呼んだ。
十数秒後、二名の伝令が走り始めた。
一人は、クマートの方角に向かって。
伝令が、コロシアムの中央に来た。
司会と審判に、王子の伝言を伝えた。
司会の男が、クマートのもとに、やって来た。
顔色が、悪かった。
尋ねた。クマートが。司会の男に。
「次は、誰と闘うのですか?」
数秒間の沈黙のあと、司会の男が、答えた。声を絞り出すように。
「魔獣です」
平然と、尋ねた。クマートが。
「どんな魔獣ですか?」
「わかりません」
「弓矢を、使っていいですか?」
「いいえ。王子殿下のたっての要望で、剣で闘え、とのことです」
「わかりました。王子殿下のたっての要望ならば、しかたがありません。早く、その魔獣を連れて来てください」
しばらく、待たされた。
騎士団長が、意識を取り戻した。
彼は、衝撃を受けていた。自分が負けたことに。学生に、しかも新入生の少年に負けたことに。
愕然として立ち上がることができず、地面の上で、あぐらをかいて座り込んでいた。
騎士団長に、右手を差し伸べた。
「騎士団長殿、立ってください」
さらに、言葉を続けた。わざと、上から目線で。
「騎士団長殿、貴公が今日、私に負けたのは、貴公が弱かったからではない。私が強すぎたからだ」
騎士団長は、驚いた表情をした。
だが、納得した表情でもあった。
この世界は、身分制社会だ。
騎士団長は、十数年前から、帝国最強剣士とうたわれているものの、身分的には、下級貴族だ。
上級貴族であるクマートに、下級貴族である自分では、到底敵わないほどの特別な能力があると、思ったのだろう。
もっとも、究極真法具の能力は、使っていないのだが。
言葉を続けた。
「貴公は、帝国にとって、重要な戦力だ。帝国のために、日々、励んでもらいたい」
自分でも、言ってから思った。
まるで、王子か、皇帝一族のような物言いだな、と。
辺境の準男爵令息が言うような言葉ではない。
まあ、いいか、と思い、気持ちを切り替えた。
騎士団長が、コロシアムの北側出入り口から、退出した。
その際には、クマートが観客席に呼びかけた。
「偉大なる帝国最強剣士に、万雷の拍手を」と叫んで、自ら拍手をして。
観客たちも、拍手で送ってくれた。
それから、十数分後のことだった。
コロシアムの西側の出入り口から、魔獣が現れた。
観客席が、どよめいた。
悲鳴も、あがった。
「あれって、ドラゴン?」
そんな声も聞こえた。
ドラゴンでは、ない。
十メートル級の魔獣、一角ワニだ。
騎士団長の正面に、不用意に立った。
わざと、だ。
だが、息のあがった騎士団長は、罠だと気づかなかった。
巨大な剣を、振り下ろした。クマートに向かって。
クマートが、長剣で受け止めた。
ように、見えた。
だが実際には、受け流した。長剣の切っ先を、右ななめ下に向けて。
擦るような金属音と共に、火花が飛び散った。両者の鋼鉄の剣と、鋼鉄の剣が擦れて。
騎士団長の体勢が、崩れた。クマートが、彼の剣を受け流したからだ。
次の瞬間、踏み込みながら、叩き込んだ。
右手の長剣を、騎士団長の脳天に。兜の上から。剣の刃の部分ではなく、腹の部分で。
白目をむいた。騎士団長が。
前のめりに、倒れた。騎士団長の巨体が。
脳震盪を起こしたのだ。鋼鉄製の長剣で、脳天を、兜の上から強打されて。
数秒間、沈黙が流れた。
観客席も、静まりかえった。
審判も、石像のように、身動き一つしなかった。
だが、五秒か六秒後、審判が叫んだ。クマートのほうに、左手をななめ上に挙げて。
「勝負あり! 勝者、クマート・オスターラント公!」
大歓声があがった。観客席から。
観客たちが、立ち上がって拍手喝采を始めた。スタンディング・オベーションだ。
貴賓席に向かって、深くお辞儀をした。長剣を持った右手を、心臓にあてて。
極悪伯爵令嬢グレースが、王子に耳打ちするのが見えた。
またなにか、たくらんでいる。
王子が、伝令を二名呼んだ。
十数秒後、二名の伝令が走り始めた。
一人は、クマートの方角に向かって。
伝令が、コロシアムの中央に来た。
司会と審判に、王子の伝言を伝えた。
司会の男が、クマートのもとに、やって来た。
顔色が、悪かった。
尋ねた。クマートが。司会の男に。
「次は、誰と闘うのですか?」
数秒間の沈黙のあと、司会の男が、答えた。声を絞り出すように。
「魔獣です」
平然と、尋ねた。クマートが。
「どんな魔獣ですか?」
「わかりません」
「弓矢を、使っていいですか?」
「いいえ。王子殿下のたっての要望で、剣で闘え、とのことです」
「わかりました。王子殿下のたっての要望ならば、しかたがありません。早く、その魔獣を連れて来てください」
しばらく、待たされた。
騎士団長が、意識を取り戻した。
彼は、衝撃を受けていた。自分が負けたことに。学生に、しかも新入生の少年に負けたことに。
愕然として立ち上がることができず、地面の上で、あぐらをかいて座り込んでいた。
騎士団長に、右手を差し伸べた。
「騎士団長殿、立ってください」
さらに、言葉を続けた。わざと、上から目線で。
「騎士団長殿、貴公が今日、私に負けたのは、貴公が弱かったからではない。私が強すぎたからだ」
騎士団長は、驚いた表情をした。
だが、納得した表情でもあった。
この世界は、身分制社会だ。
騎士団長は、十数年前から、帝国最強剣士とうたわれているものの、身分的には、下級貴族だ。
上級貴族であるクマートに、下級貴族である自分では、到底敵わないほどの特別な能力があると、思ったのだろう。
もっとも、究極真法具の能力は、使っていないのだが。
言葉を続けた。
「貴公は、帝国にとって、重要な戦力だ。帝国のために、日々、励んでもらいたい」
自分でも、言ってから思った。
まるで、王子か、皇帝一族のような物言いだな、と。
辺境の準男爵令息が言うような言葉ではない。
まあ、いいか、と思い、気持ちを切り替えた。
騎士団長が、コロシアムの北側出入り口から、退出した。
その際には、クマートが観客席に呼びかけた。
「偉大なる帝国最強剣士に、万雷の拍手を」と叫んで、自ら拍手をして。
観客たちも、拍手で送ってくれた。
それから、十数分後のことだった。
コロシアムの西側の出入り口から、魔獣が現れた。
観客席が、どよめいた。
悲鳴も、あがった。
「あれって、ドラゴン?」
そんな声も聞こえた。
ドラゴンでは、ない。
十メートル級の魔獣、一角ワニだ。
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