異世界極悪令嬢と同じクラスになってしまった!

蛇崩 通

文字の大きさ
37 / 41

<第五章 第6話:本当に欲しいもの>

しおりを挟む
  <第五章 第6話:本当に欲しいもの>
 全員が、マリアンヌを注視した。
 数秒間、静寂が流れた。
 「そのとおりです、マリアンヌさん」
 クマートが、言葉を続けた。
 「だから私は、マリアンヌさんが学業を続けられるように、全力を尽くします。学業を続けて、きちんと卒業できれば、人生の選択肢が増えます」
 「クマート、おまえそこまで、この女のことを……」
 シーナが、目もとをぬぐった。涙が少しばかり、こぼれたからだ。
 マリアンヌに、視線を向けた。
 「おまえ、どうすんだよ。クマートのこの思いに、どうこたえる? 愛人になるのか、ならないのか。どうするんだ?」
 そのときだった。
 するどい女の声だった。
 「それを決めるのは、クマート様よ」
 仁王立ちしていた。メイドのメリッサが。レモネードの入った銀製グラスを片手に。
 全員の視線が、集中した。メリッサに。
 彼女が、言葉を続けた。
 「一年前、あたしはクマート様に頼んだ。愛人に、してくださいって。だけど、拒否された」
 「まじかよ! 自分から頼んだのかよ!」
 そのシーナの言葉を無視し、メリッサは話し続けた。能面のような表情で。
 「クマート様は、あたしに尋ねた。なぜ、愛人になりたいのですか、って。あたしは答えたわ。はっきりと。お金が欲しいからです。一万シルバーくださいって」
 「カネ目当てかよ! 拒否されて当然だな!」
 一万シルバーは、帝国共通銀貨一万枚だ。日本円に換算すると、一億円くらいだ。
 「しかも、一万シルバーなんて! 強欲すぎるだろ! 女教師の生涯年収の二倍以上だぞ! あたしの生涯年収も超えてるぞ! あたしは女性初の校長だったのに!」
 オスターラント領国政府で働く公務員は、給料が安い。特に、女性公務員は、男性公務員の四割以下の賃金だ。なぜなら、たとえば女性教師の場合も、大部分の者は、結婚して寿ことぶき退職するまでの間、三年から五年程度の勤務期間だからだ。
 とはいえ、公務員は、全員貴族だ。貴族とその家族には、住居、教育、医療が無償で提供される。その上、小麦粉などの食料品が、現物支給される。
 オスターラント領は辺境のせいか、貨幣経済の発展が不十分なため、貴族に対しては、現物支給があるのだ。もちろん、それが貴族の特権でもある。領国政府は、平民には、教育も医療も提供しない。
 メリッサはシーナの言葉を無視して、話し続けた。
 「クマート様は、あたしに言ったのよ。それなら、私のもとで働いてみませんか、って。努力と能力によっては、一万シルバー稼げますよ、って」
 「メイドで、一万シルバー稼げるのかよ!」
 そこでクマートが、説明を入れた。
 「メリッサさんには、クマート商会の事務職員兼営業員をしてもらっています」
 「クマート商会? そう言えば、噂で聞いたことあるな。クマートが商人のまねごとを始めたって」
 クマートはマリアンヌに視線を向けながら、説明を始めた。
 「クマート商会は、私が一年前に設立した商会で、オスターラント領の特産品を販売するのが、主な仕事です」
 メリッサが、胸を張った。
 「この一年間に、歩合ぶあいだけで五百シルバー稼いだわ。オスターラント市でね。帝都の人口は、オスターラント市の三十倍以上。単純計算すれば、これから一年間で一万五千シルバー稼げる計算になるわ」
 「まじかよ」
 「まあ、どれだけ稼げるかは、メリッサさんの努力にもよりますけど。もちろん、メリッサさんがたくさん稼げるように、私も相談に乗って、協力しますから」
 そのとき、アメリアが尋ねた。
 「事務職員兼営業員なら、なぜ、この屋敷でメイドをしているの?」
 「メリッサさんが、この屋敷に住むためです。お店の売り上げ状況や商品開発、市場調査などについて、私と密に連絡を取るためには、この屋敷に住んでもらったほうが、都合がいい。だけれども、この屋敷は学園の寮なので、住める者は、学園の生徒と、その生徒に仕えるメイドだけだからです」
 いつのまにかソファーに座っていたマリアンヌが、ふたたび立ち上がった。
 「クマート様、あたしを、メイド兼営業員として雇ってください」
 クマートは、微笑ほほえみながら、尋ねた。
 「マリアンヌさんが、本当に欲しいものは、なんですか?」
 「全部です。だから、学業も続けたいです。それに……」
 マリアンヌが、微笑んだ。小悪魔のように、可愛かわいらしく。
 「クマート様のことも、欲しくなっちゃった、かも」

   第六章に続く
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。 彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。 他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。 超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。 そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。 ◆ 「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」 「あらすじってそういうもんだろ?」 「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」 「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」 「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」 「ストレートすぎだろ、それ……」 「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」 ◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...