世界中が殺しに来る

蛇崩 通

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<第一章 第5話 霊視少女>

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   <第一章 第5話>
 少年たちが、襲いかかってきた。ゾンビのように、両腕を前に伸ばして。みつくために、口を開けて。
 意識を奪われているため、本能のままに襲ってくるのだ。
 つかまれると、動きが封じられてしまうかも知れない。
 それに、噛まれるのもいやだ。
 射程距離の長い攻撃のほうが良い。つかまれないためには。
 右前蹴りを繰り出した。
 吹っ飛んだ。正面の少年が、後方に。みぞおちに、右前蹴りが決まったからだ。
 左前の少年が、尻もちをついた。上体を、くの字に折って。右前蹴りを、脇腹に蹴り込んだからだ。蹴り足を地面に下ろさずに、蹴り込んだ。
 右前の少年も、尻もちをついた。蹴り足を地面に下ろさずに、右横蹴りを脇腹に蹴り込んだからだ。
 三名を倒すのに、三秒かからなかった。二秒から二秒半だ。
 三名の後方からも、操られた少年たちが襲いかかってきた。
 次々に、うずくまった。少年たちが。
 連続で、右横蹴りを繰り出したからだ。右の蹴り足を地面に下ろさずに、次々にみぞおちや脇腹に、右横蹴りを蹴り込んだ。
 蹴り足を地面に下ろさずに蹴ったほうが、より素速く連続で蹴りを出せる。その一方で、体重を乗せない蹴り方のため、威力は低下する。
 だが、襲ってきた少年たちは皆、うずくまったまま立ち上がれない。
 鍛えてない者ばかりのようだ。
 横蹴りを選択したのは、前蹴りよりも射程距離が長いからだ。
 次々に、蹴り倒した。ゾンビのように襲ってくる少年たちを。
 三名蹴り倒したところで、右足を下ろした。
 その直後、今度は右足を軸足とし、左足で横蹴りを繰り出した。連続で。
 脇道は、道路の幅が狭い。二メートル半くらいだ。そのため少年たちは、正面から襲ってくる。五月雨式さみだれしきに。
 脇をすり抜けて背後に回る者は、いない。意識を奪われ、本能のまま、獣のように襲ってくるため、頭を使って戦うことができないのだ。
 十五名を蹴り倒した。十秒強の間に。
 立ち上がる者は、まだいない。
 彼らの後方から、新手の少年たちが前進してきた。ゾンビのような表情で。
 新手の少年たちは、うずくまる十五名の身体に、次々につまずいた。足を取られて、転倒した者もいた。
 意識を奪われているせいか、足下が視界に入らないようだ。
 だが、ゾンビのような表情をした少年たちが、続々と脇道に進入してくる。
 通学路の坂道には、登校中の少年少女たちが多数いる。半径五十メートル以内にいる少年の数は、五十名以上いるだろう。
 ミコが、サトルの手をつかんだ。
 「今のうちよ。早く行きましょう」
 サトルは手を引かれて移動しながらも、反論した。
 「この道の奥は、行き止まりだよ」
 「神社に結界を張ってあるの。操り人形は、結界内には入れないわ」
 この脇道の奥は、富士見坂神社の参道に続く。富士見坂神社の出入り口は、一カ所だけだ。
 そのため、神社の境内に入れば、サトルたちにも逃げ道がない。袋のネズミだ。
 それは、まずいのではないか。
 サトルが、そう思ったときだった。
 ミコが、振り返って叫んだ。
 「オートじゃない者がいるわ。それも、多数。こっちに来る!」
 サトルも、振り返った。
 「どれだ?」
 「サトルには、見えないの? 操り糸が」
 「見えない」
 突然、背中に抱きついてきた。ミコが。
 一瞬、あせった。動きを封じられた、と思ったからだ。
 「共有するわ。あたしの霊視を」
 ミコが自分のひたいを、サトルの背中につけた。
 視界が、変わった。
 「今度は、見えるでしょ」
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