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<第二章 第2話 封印せしもの>
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<第二章 第2話>
「早く取りに来て。重くて、あたしの腕力がもたないから」
サトルは急いで靴を脱ぐと、本殿の中に入った。
日本刀を、受け取った。
ずっしりと重かった。七キロ、いや八キログラム以上ありそうだ。
ミコは、銀製の鏡を手に取った。円形で、手のひらサイズだ。御神体の手前に、供えられていたものだ。
スカートのポケットから、絹紐を取り出した。銀製鏡の上部の穴に、絹紐を通した。絹紐の両端をきつく結ぶと、鏡を自分の首にかけた。
「この鏡が、あたしの武器。武器と言っても、霊的な攻撃から守るだけ、だけど」
ミコは、スカートのポケットから、さらに二本の絹紐を取り出した。御神体に供えられていた翡翠の勾玉に、絹紐を通し始めた。翡翠の勾玉は、二つある。
サトルが尋ねた。
「君は、この神社の巫女なの?」
「この神社の巫女では、ないわ」
サトルが一瞬、動揺の表情を見せた。
「ダメじゃん! よその神社の御神体を、勝手に持ち出したら」
ミコは、平然と答えた。
「あたしは、黒野神社の特別祭祀巫女よ。だから、問題ないわ」
サトルは、数秒押し黙った。情報を整理するために。
彼女の名字は黒野だったはず。ということは、実家は神社なのか。
サトルが、ふたたび尋ねた。
「黒野神社と、この富士見坂神社は、関係があるの?」
「ええ、そうよ。どこから話したらいいかしら」
「全部、話してよ」
「ええ、いいわ」
ミコが、話し始めた。
「この富士見坂神社は、江戸時代の初期に、建立された。富士山を仰ぎ見ることができるように、人工的に大量の盛り土をして大きな塚を造り、そのうえに本殿を建てた」
「知ってる。境内にある案内板に書いてあった」
「この神社の江戸時代の名称は、フジミ塚神社」
「それも、案内板に書いてある」
「フジミの漢字は、不死の身のほうよ」
ということは、不死身塚か。その情報は、案内板には記されていない。
「霊峰富士が放つ霊力を取り入れるため、不死身塚神社は、関東に十三箇所、建立された」
それも、初耳だ。
「黒野神社の江戸時代の頃の名称は、第十三不死身塚神社」
ミコは、二つの勾玉に絹紐を通し終わった。
彼女が、視線をサトルに向けた。
「不死身塚神社建立の目的は、あるものを安定的に封印すること」
「あるものとは?」
「そのまえに……」
ミコは勾玉の一つを自分の首にかけると、もう一つをサトルの首にかけた。
「これで、あなたに触れていなくても、あたしの霊視を共有できる。距離が離れると、結びつきが低下するけれど」
距離が離れると、霊視を共有できない、ということか。
「その距離は、何メートルくらい?」
「わからないわ。あたしとあなたの霊的な結びつき次第」
「それで、話を戻すと、封印したものとは?」
「それについては、見たほうが早いわ」
そう言うと、ミコは、セーラー服をまくり上げた。胸元の手前まで。
暗黒が、渦巻いていた。彼女の腹の中央に。
禍々しい霊気を放ちながら。
白い肌と、暗黒の渦。
ミコが、ささやいた。あやしげな笑みを浮かべて。
「深淵の底を、覗いてみて」
思わず、のぞき込んだ。暗黒の深淵を。
「あなたには、なにが見える?」
輪郭が、浮かび上がってきた。人の顔のようだ。
その顔は……
「早く取りに来て。重くて、あたしの腕力がもたないから」
サトルは急いで靴を脱ぐと、本殿の中に入った。
日本刀を、受け取った。
ずっしりと重かった。七キロ、いや八キログラム以上ありそうだ。
ミコは、銀製の鏡を手に取った。円形で、手のひらサイズだ。御神体の手前に、供えられていたものだ。
スカートのポケットから、絹紐を取り出した。銀製鏡の上部の穴に、絹紐を通した。絹紐の両端をきつく結ぶと、鏡を自分の首にかけた。
「この鏡が、あたしの武器。武器と言っても、霊的な攻撃から守るだけ、だけど」
ミコは、スカートのポケットから、さらに二本の絹紐を取り出した。御神体に供えられていた翡翠の勾玉に、絹紐を通し始めた。翡翠の勾玉は、二つある。
サトルが尋ねた。
「君は、この神社の巫女なの?」
「この神社の巫女では、ないわ」
サトルが一瞬、動揺の表情を見せた。
「ダメじゃん! よその神社の御神体を、勝手に持ち出したら」
ミコは、平然と答えた。
「あたしは、黒野神社の特別祭祀巫女よ。だから、問題ないわ」
サトルは、数秒押し黙った。情報を整理するために。
彼女の名字は黒野だったはず。ということは、実家は神社なのか。
サトルが、ふたたび尋ねた。
「黒野神社と、この富士見坂神社は、関係があるの?」
「ええ、そうよ。どこから話したらいいかしら」
「全部、話してよ」
「ええ、いいわ」
ミコが、話し始めた。
「この富士見坂神社は、江戸時代の初期に、建立された。富士山を仰ぎ見ることができるように、人工的に大量の盛り土をして大きな塚を造り、そのうえに本殿を建てた」
「知ってる。境内にある案内板に書いてあった」
「この神社の江戸時代の名称は、フジミ塚神社」
「それも、案内板に書いてある」
「フジミの漢字は、不死の身のほうよ」
ということは、不死身塚か。その情報は、案内板には記されていない。
「霊峰富士が放つ霊力を取り入れるため、不死身塚神社は、関東に十三箇所、建立された」
それも、初耳だ。
「黒野神社の江戸時代の頃の名称は、第十三不死身塚神社」
ミコは、二つの勾玉に絹紐を通し終わった。
彼女が、視線をサトルに向けた。
「不死身塚神社建立の目的は、あるものを安定的に封印すること」
「あるものとは?」
「そのまえに……」
ミコは勾玉の一つを自分の首にかけると、もう一つをサトルの首にかけた。
「これで、あなたに触れていなくても、あたしの霊視を共有できる。距離が離れると、結びつきが低下するけれど」
距離が離れると、霊視を共有できない、ということか。
「その距離は、何メートルくらい?」
「わからないわ。あたしとあなたの霊的な結びつき次第」
「それで、話を戻すと、封印したものとは?」
「それについては、見たほうが早いわ」
そう言うと、ミコは、セーラー服をまくり上げた。胸元の手前まで。
暗黒が、渦巻いていた。彼女の腹の中央に。
禍々しい霊気を放ちながら。
白い肌と、暗黒の渦。
ミコが、ささやいた。あやしげな笑みを浮かべて。
「深淵の底を、覗いてみて」
思わず、のぞき込んだ。暗黒の深淵を。
「あなたには、なにが見える?」
輪郭が、浮かび上がってきた。人の顔のようだ。
その顔は……
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