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<第四章 第3話>
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<第四章 第3話>
サファイア・ゴールドは、ローランド夫人の後継者だ。ローランド夫人の長男の妻で、学生時代にローランド夫人に見出された。次期後継者候補として。
以前から、ルビー・クールは感じていた。彼女も、人を殺したことがある、と。
それも、一人や二人では、ないはずだ。
ふだんから、それだけの禍々しいオーラを放っている。
ルビー・クールだけではない。彼女を恐れているのは。
誰もが、彼女を恐れている。
救出した少女十二名は、店の隅で、肩を寄せ合い、怯えていた。
イザベラと店員たちも、店の隅だ。表情が、青ざめている。彼女たちは、マフィアの大幹部の元愛人だが。
サファイア・ゴールドは、五名の女と、六名の男を引き連れて来た。
女たちは二十歳代から三十歳代で、全員、元か現役の娼婦だ。男たちは全員、ローランド邸の使用人だ。もちろん、ローランド孤児院の出身だ。
サファイア・ゴールドが、口を開いた。ルビー・クールを、無表情で見すえながら。
「あなたに、話があるわ。ルビー・ザ・サード。他人に聞かれては、ならない話が」
初代ルビーの知り合いは、ルビー・クールのことを、「ルビー・ザ・サード」と呼ぶことが多い。三代目ルビー、もしくはルビー三世という意味だ。
「わかったわ。人払いするわ」
ルビー・クールは、イザベラと店員たち、それに十二名の少女たちに、四階の空き部屋の掃除をするように、指示した。不動産屋から渡された部屋の鍵を渡して。それに、午後四時と四時半に、家具と寝具が届くことも、伝えた。
彼女たちが、出て行った。店の掃除道具を持って。
店内の人数が、半分に減った。
サファイア・ゴールドが、口を開いた。
「義母からの命令よ。ルビー・ザ・サードの班は、あたしの指揮下に入り、作戦に参加せよ」
「どんな作戦かしら?」
サファイア・ゴールドが、答えた。顔色一つ変えずに。
「野良犬たちの殺処分よ。エメラルドに噛みついた野良犬は、すべてね。狼の血を、引いていようが、いまいが、かまわないわ」
思わず、反論した。
「ちょっと待ってください。正確な情報を、今から報告します」
ルビー・クールが、言葉を続けた。
「エメラルドを拉致したのは、ハイエナ団というマフィア組織で、帝都最大マフィア銀狼会の下部組織です」
「ええ、エメラルド・グリーンとサファイア・レインから、聞いたわ」
「ハイエナの上司は、銀狼会の大幹部コヨーテです」
「それで?」
「今のところ、ハイエナ団の構成員を、一人も殺していません。つまり、今の状態が最善です。なぜならハイエナは、マフィアとしてのメンツが潰れることを恐れて、上司のコヨーテにも、ほかのマフィアにも、今回の一件を秘密にするからです」
「だから?」
一瞬、言葉に詰まった。
「つまり、これで、一件落着です」
「ルビー・ザ・サード。あなた、わかってないわね。彼らには、相応の報いを受けてもらうわ。なぜなら、エメラルド・グリーンを拉致したんだから」
「エメラルドは、無事に救出できました」
「そういう問題じゃないわ」
「では、どういう問題なんですか?」
「ハイエナ団? でしたっけ」
「はい」
「やつらは、あたしたちの組織にとって、有害な存在よ。だから、これを機会に消滅させるわ。皆殺しにして、ね」
たしかに、有害な組織だ。ハイエナ団は。社会にとっても。
「けれど、ハイエナ団を皆殺しにしたら、コヨーテが激怒して、犯人に高額な懸賞金をかけますよ」
「証拠を残さなければ、いいのよ」
たしかに、そのとおりでは、ある。
ルビー・クールが黙り込むと、サファイア・ゴールドが言葉を続けた。
「ハイエナ団を放置し続ければ、同じ行為を繰り返すわ。少女たちを拉致して性奴隷として売り飛ばす行為を続ければ、第二、第三のエメラルドが発生する。今回は無事に救出できたけれど、次回も救出できる保証はないわ」
たしかに、そのとおりだ。
彼女は、言葉を続けた。
「金持ちに違法な暴利で金を貸し、全財産を奪い取る。それは、あたしたちの顧客を奪う行為よ。放置すれば、あたしたちの組織は資金難に陥り、弱体化する。一方、ハイエナ団は資金力を強化させ、勢力を拡大させる。やつらの勢力は、現在は約五十名だけど、五年後、十年後には、百名、二百名、あるいは四百名になっているかもしれない。そうなってからでは、あたしたちは、太刀打ちできない」
たしかに、そうかもしれない。
「永遠に逃げ続けることは、できないわ。いずれかの時点で、必ず、戦わねばならない。ならば、今、戦うべきよ」
「そのとおりよ」
そう言って、立ち上がった。エメラルド・グリーンが。
意を決した。ルビー・クールも。
「ええ、そうね。それでは、今、戦いましょう。決戦は、今夜よ」
第五章「潜入作戦で絶体絶命」に続く
サファイア・ゴールドは、ローランド夫人の後継者だ。ローランド夫人の長男の妻で、学生時代にローランド夫人に見出された。次期後継者候補として。
以前から、ルビー・クールは感じていた。彼女も、人を殺したことがある、と。
それも、一人や二人では、ないはずだ。
ふだんから、それだけの禍々しいオーラを放っている。
ルビー・クールだけではない。彼女を恐れているのは。
誰もが、彼女を恐れている。
救出した少女十二名は、店の隅で、肩を寄せ合い、怯えていた。
イザベラと店員たちも、店の隅だ。表情が、青ざめている。彼女たちは、マフィアの大幹部の元愛人だが。
サファイア・ゴールドは、五名の女と、六名の男を引き連れて来た。
女たちは二十歳代から三十歳代で、全員、元か現役の娼婦だ。男たちは全員、ローランド邸の使用人だ。もちろん、ローランド孤児院の出身だ。
サファイア・ゴールドが、口を開いた。ルビー・クールを、無表情で見すえながら。
「あなたに、話があるわ。ルビー・ザ・サード。他人に聞かれては、ならない話が」
初代ルビーの知り合いは、ルビー・クールのことを、「ルビー・ザ・サード」と呼ぶことが多い。三代目ルビー、もしくはルビー三世という意味だ。
「わかったわ。人払いするわ」
ルビー・クールは、イザベラと店員たち、それに十二名の少女たちに、四階の空き部屋の掃除をするように、指示した。不動産屋から渡された部屋の鍵を渡して。それに、午後四時と四時半に、家具と寝具が届くことも、伝えた。
彼女たちが、出て行った。店の掃除道具を持って。
店内の人数が、半分に減った。
サファイア・ゴールドが、口を開いた。
「義母からの命令よ。ルビー・ザ・サードの班は、あたしの指揮下に入り、作戦に参加せよ」
「どんな作戦かしら?」
サファイア・ゴールドが、答えた。顔色一つ変えずに。
「野良犬たちの殺処分よ。エメラルドに噛みついた野良犬は、すべてね。狼の血を、引いていようが、いまいが、かまわないわ」
思わず、反論した。
「ちょっと待ってください。正確な情報を、今から報告します」
ルビー・クールが、言葉を続けた。
「エメラルドを拉致したのは、ハイエナ団というマフィア組織で、帝都最大マフィア銀狼会の下部組織です」
「ええ、エメラルド・グリーンとサファイア・レインから、聞いたわ」
「ハイエナの上司は、銀狼会の大幹部コヨーテです」
「それで?」
「今のところ、ハイエナ団の構成員を、一人も殺していません。つまり、今の状態が最善です。なぜならハイエナは、マフィアとしてのメンツが潰れることを恐れて、上司のコヨーテにも、ほかのマフィアにも、今回の一件を秘密にするからです」
「だから?」
一瞬、言葉に詰まった。
「つまり、これで、一件落着です」
「ルビー・ザ・サード。あなた、わかってないわね。彼らには、相応の報いを受けてもらうわ。なぜなら、エメラルド・グリーンを拉致したんだから」
「エメラルドは、無事に救出できました」
「そういう問題じゃないわ」
「では、どういう問題なんですか?」
「ハイエナ団? でしたっけ」
「はい」
「やつらは、あたしたちの組織にとって、有害な存在よ。だから、これを機会に消滅させるわ。皆殺しにして、ね」
たしかに、有害な組織だ。ハイエナ団は。社会にとっても。
「けれど、ハイエナ団を皆殺しにしたら、コヨーテが激怒して、犯人に高額な懸賞金をかけますよ」
「証拠を残さなければ、いいのよ」
たしかに、そのとおりでは、ある。
ルビー・クールが黙り込むと、サファイア・ゴールドが言葉を続けた。
「ハイエナ団を放置し続ければ、同じ行為を繰り返すわ。少女たちを拉致して性奴隷として売り飛ばす行為を続ければ、第二、第三のエメラルドが発生する。今回は無事に救出できたけれど、次回も救出できる保証はないわ」
たしかに、そのとおりだ。
彼女は、言葉を続けた。
「金持ちに違法な暴利で金を貸し、全財産を奪い取る。それは、あたしたちの顧客を奪う行為よ。放置すれば、あたしたちの組織は資金難に陥り、弱体化する。一方、ハイエナ団は資金力を強化させ、勢力を拡大させる。やつらの勢力は、現在は約五十名だけど、五年後、十年後には、百名、二百名、あるいは四百名になっているかもしれない。そうなってからでは、あたしたちは、太刀打ちできない」
たしかに、そうかもしれない。
「永遠に逃げ続けることは、できないわ。いずれかの時点で、必ず、戦わねばならない。ならば、今、戦うべきよ」
「そのとおりよ」
そう言って、立ち上がった。エメラルド・グリーンが。
意を決した。ルビー・クールも。
「ええ、そうね。それでは、今、戦いましょう。決戦は、今夜よ」
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