絶体絶命ルビー・クールの逆襲<人身売買編>

蛇崩 通

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<第五章 第2話>

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  <第五章 第2話>
 「顔を殴るな! 商品価値が下がるだろ!」
 ハンスが、ハイエナに視線を向けた。わざと、卑屈ひくつな笑みを浮かべながら。
 「だんなが、ハイエナ様で?」
 「ああ、オレ様が、黄金のハイエナだ。誰から聞いた? オレ様のことを」
 「ギュンターの兄貴でさあ」
 「あいつに、おまえのような弟分がいたとは、初耳だな」
 ハンスが答えた。卑屈な笑みを浮かべたまま。
 「黄金のハイエナ様のもとにい女を連れて行けば、けっこうな金額のカネをもらえると聞いたんですが。この女、良い女でしょ」
 ハイエナは、いやらしい笑みを浮かべた。
 「ああ。イイ女だな」
 「いくらになりますか? この女」
 ハイエナが、ポケットに右手を突っ込んだ。
 その手を出して、放り投げた。硬貨を一枚。
 硬貨は床に落ち、転がった。
 ハンスの足下近くで、止まった。
 青銅貨だった。
 一キャピタ(著者注:日本円で百円相当)だ。
 「どういうことです?」
 ハンスが、怪訝けげんそうな表情を浮かべた。
 ハイエナが、言葉をかけた。ニタニタと、いやらしい笑みを浮かべながら。
 「そのカネを持って、今すぐ出て行け」
 「ちょっと、待ってください。イイ女を連れてくれば、かなりの大金になるのでは?」
 ハイエナが、すごんだ。ふところから、拳銃をきながら。
 「バカか、おまえは。女を置いて、さっさと出て行け。さもないと、ぶっ殺すぞ」
 まずい、まずい、まずい。
 極めて、まずい状況だ。
 このままだと、ハンスが殺されてしまう。
 ルビー・クールは、ハンスの前に立ちふさがった。背中を、ハイエナに向けて。
 「お願い、ヨハンを殺さないで! 愛しているのよ! 何でもするから、彼を殺さないで!」
 そう言いながら、コートのボタンを、はずした。上から三番目のボタンだ。
 ハンスも、気づいた。事前の打ち合わせとは、少し狂ってしまったが。
 ルビー・クールのコートの一番上のボタンを、ハンスが、はずした。
 上から四番目のボタンをルビー・クールがはずした直後、ハンスが、上から二番目のボタンを、はずしてくれた。
 これで、ルビー・クールのコートのボタンは、すべてはずした。 
 ハンスが、二挺の拳銃をいた。ルビー・クールの左右のわきの下のホルスターから。
 ルビー・クールも、二挺の拳銃を抜いた。自分の腰の左右のホルスターから。
 その四挺の拳銃は、すべて、二十二口径の十連発回転式拳銃リボルバーだ。
 ルビー・クールが、振り返った。
 左足を軸に、時計回りに、百八十度。
 右足を、大きく三時の方向に踏み出して。
 次の瞬間、発砲した。
 ルビー・クールとハンスが。両手のリボルバーで。
 乾いた銃声が響いた。連続で。
 パーティーのときのクラッカーのような音だ。二十二口径のリボルバーの発砲音は。
 わずか、五秒ほどだった。
 十七名の男が、ひたいを撃ち抜かれて、絶命した。
 拳銃を、ふところから出そうとした男たちもいた。
 ハイエナの親衛隊だ。
 だが全員、銃口を向ける前に、撃ち殺された。
 五秒強ほどの間に、ハンスは、左右の拳銃で計十発、発砲した。
 「すみません、ルビー様。三発も、はずしました」
 「気にしないで。充分、良い腕よ」
 ルビー・クールは、左右の拳銃で計十二発、発砲した。五秒強の間に。それにより、十名の男の額を、撃ち抜いた。
 絶叫していた。ハイエナが。両膝を床について。
 撃ち抜かれたからだ。右手首と、左手の甲を。
 撃ったのは、ルビー・クールだ。
 ハイエナは、右手に拳銃を握っていた。
 彼が発砲するより早く、撃ち抜いた。ルビー・クールが。彼の右手首を。
 拳銃を落とした。ハイエナが。
 左手で、拾おうとした。
 その左手の甲を、撃ち抜いたのだ。ルビー・クールが。
 絶叫し続けた。ハイエナが。苦悶くもんの表情を、浮かべながら。
 ツカツカと、近づいた。ルビー・クールが。ハイエナに。両手のリボルバーの銃口を、向けながら。
 「うるさい男は、嫌いよ」
 そう言った直後、反時計回りに、クルッと回転した。右足を軸に。
 左足のかかとを、蹴り込んだ。ハイエナのあごに。
 バックスピン・キックだ。
 ジャスト・ミートした。
 その一撃で、失神した。ハイエナが。
 ルビー・クールが、ハンスに声をかけた。
 「次は、待ち伏せ作戦よ」
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