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<第四章 第4話>

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   <第四章 第4話>
 ルビー・クールは、大声で叫んだ。
 「こちらにも、あなたたちの敵がいるわよ!」
 エルザを包囲している男たちが、振り返った。十名前後だが。
 魔法詠唱し、魔法の釘を投げつけた。
 九名の男が、絶叫した。左目に、魔法の釘を刺されて。
 多くの男たちが、振り返った。
 連続で二回、魔法の釘を投げつけた。
 合計三回、投げた。魔法の釘を。
 二十七名の男が、絶叫した。左目を押さえて。
 ルビー・クールが、襲いかかった。男たちに。鉄心の入った杖で。
 最初は左に、次に右に、振り下ろした。杖を、次々に。男たちの脳天に。
 一撃で、失神昏倒させた。男たちを。
 左右に分かれて、男たちが後退を始めた。恐怖の表情を浮かべながら。
 包囲網に、穴が開いた。
 「エルザ! 脱出して!」
 そう、叫んだ。
 エルザが、飛び出した。包囲網の穴から。叫びながら。
 「ルビー!」
 包囲網から、脱出した。エルザが。
 目があった。エルザと。
 エルザは、半分泣いているような、もう半分は高揚しているような、不思議な表情だった。
 「愛してる! ルビー!」
 そう、叫んだ。エルザが。
 なに言ってるのよ。
 ルビー・クールは、内心、腹が立った。表情には、出さなかったが。
 この女は、危険だ。
 今は共闘しており、重要な戦力だ。
 だが半年前、この女に何度も殺されかけた。
 この女にすきを見せたら、殺される。
 無表情のまま、叫んだ。
 「十字架まで、後退するわよ!」
 ルビー・クールは、敵に背を向けずに、バックステップしながら、後退した。
 「女が逃げるぞ!」
 百名近くの敵が、追いかけてきた。ナイフを手に。
 ルビー・クールが、魔法詠唱した。男たちが、足を踏み出す瞬間を狙って。
 石畳の上に、直径三十センチメートルほどの円形の魔法の氷を出現させた。次々に。
 男たちは、転倒した。次々に、足を滑らせて。
 「赤毛! 邪魔だ! オレの射線から出ろ!」
 「今、出るわ!」
 そう叫んで、敵に背を向けた。
 一気に、走り抜けた。自由革命党の戦闘員の脇を。
 フランクたちが、一斉に発砲した。
 大虐殺の始まりだ。
 無産者革命党一個中隊は、銃弾の雨で、蜂の巣だ。
 木製大型十字架に、たどり着いた。
 エルザが、肩で息をした。
 ダリアが、エルザに視線を向けた。
 「あなた、服がボロボロよ」
 たしかに、そのとおりだった。エルザの両腕は、前腕の袖に、いくつもの切れ込みが入っていた。その切れ込みからは、茶色の革製プロテクターが見えた。革製プロテクターは分厚いため、敵の刃物は、貫通していないようだ。
 両手の軍手も切り刻まれ、軍手の下の革製手袋が露出していた。
 その上、左胸や腹にも、いくつもの切れ込みが入っていた。切れ込みからは、茶色の革製プロテクターが露出していた。
 エルザが、奇声をあげながら、叫んだ。なぜか、嬉々として。
 「死ぬかと思った!」
 ルビー・クールは、驚いた。この女でも、そう思うことがあるのか、と。表情には出さなかったが。
 フランクたちの銃撃音が、んだ。
 フランクを含めて四名が、二挺の拳銃、計十二発を撃ち終わった。弾切れとなった拳銃をホルスターに戻し、新たな拳銃を二挺抜いた。
 四名で合計四十八発撃った。銃弾が人体を貫通し、後方の者に当たったケースもある。特に、フランクの四十五口径の弾丸は、この距離ならば、確実に人体を貫通する。よって、六十名以上が、死傷した。
 フランクが、怒鳴った。
 「降伏しろ! 両手を挙げて、両膝を地面につけ!」
 降伏を呼びかけるのは、弾丸の節約のためだ。敵全員を、撃ち殺すだけの弾丸は、ないからだ。
 そのときだった。
 二人の少年が、左の視界に入った。
 広場の南方から、北方に向かって走っている。広場の東側のはしを。
 少年の一人が、叫んだ。
 「伝令! 伝令! 師団参謀からの伝令! 第九中隊と第十中隊は、後方に回り込んで、攻撃せよ!」
 右の視界にも、二人の少年が入った。全速力で、走っている。広場の西側を、南から北へ。
 「師団参謀からの伝令! 第六、第七中隊は、後方に回り込んで攻撃せよ!」
 ルビー・クールは、思った。
 やはり、師団序列第三位の参謀は、この広場にいたか、と。
 師団参謀の指示は、的確だ。優秀な男のようだ。
 後方に回り込まれるのは、まずい状況だ。
 ルビー・クールは、心の中で、舌打ちをした。
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