【週末の白雪姫】~憧れのあの子と始めるナイショの関係~

夕姫

文字の大きさ
3 / 30

3. 『レンタル彼女』

しおりを挟む
3. 『レンタル彼女』


 衝撃的なあまりにも予想外の告白に、ボクの頭は完全にキャパオーバーを起こしてグラグラと大きく揺れた。

 いや……別に、同性愛に対して偏見があるとかそういうわけじゃなくてね?ただただ、ずっと憧れていた手の届かない存在だと思っていた葵ちゃんが、まさか女の子が好きかもしれないという事実に心底驚いてしまっただけなんだ……

 今は多様性の時代だって言うし、誰が誰を好きになろうと、それはその人の自由だと思う。だから葵ちゃんが女の子を好きになるのだとしても全然ありだと思う。

 ちなみに、ボクは別に男の子が好きなわけじゃない。むしろ、普通の男の子と同じように、可愛い女の子が好きだ。ただ、それとは別に、こうして可愛い女の子の格好をすること自体がすごく好きなだけなんだ。この気持ちは、きっと誰にも理解してもらえないだろうけど……

「実はね。私、結構学校では男子から人気あるんだよ?でもさ……みんな、私と付き合いたいだけ、ただヤりたいだけの下心が見え見えで、本当にうんざりしちゃって……それで、だんだん男の子のことが、心底どうでもよくなっちゃったの」

「そっ……そうなんだ……」

 まぁ……こんなにも可愛くて、スタイルも良くて、誰からも好かれるような美少女が彼女になったら、そりゃあ、大抵の男子は色々なことを考えると思う。陰キャでオタクのボクだって、正直なところ、少しばかりはそういうことを想像したりするけれど……

「それで……それからずっと、どうしても男の子のことを好きになれなくなって、もしかして私って……本当に女の子が好きなのかもしれないって思うようになって……でもさすがに友達にはそんなこと言えないしさ?今日、思い切って試しにレンタル彼女サービスを使ってみたんだ。そしたら、まさかの相手がドタキャンっていうオチだったんだけどね。あはは……」

 つまり、葵ちゃんは『レンタル彼女』を利用して、自分が本当に女の子を好きなのかどうか、確かめようとしていたってことか。なんだ……別に、本当に女の子が好きだと確信しているわけではないんだ。でも……自分の気持ちと、真剣に向き合おうとしているんだ……そんなところも……なんだか、すごく可愛いと思ってしまった。

「ごめんね、初めて会ったばかりなのに、こんな変な話しちゃって。でも……私、本気だから。本当に、ちゃんと恋愛がしたいの……自分の本当の気持ちを、ちゃんと確かめたいって、真剣に思ってるんだ」

「……なんで、それを私に?今日、初めて会ったばかりだし、別にそんなこと隠していても良かったのに……」

 戸惑いを隠せないボクが、そう問いかけると、葵ちゃんは少し考えて、ポツリと呟いた。

「うん。なんか不思議と話しちゃったんだ。雪姫ちゃんはなんだか話しやすいし、それに……雪姫ちゃんなら、私の気持ちを、少しは理解してくれるんじゃないかなって……思ったんだ」

「え……?」

 ……葵ちゃんは、これから、レンタル彼女のサービスを、引き続き利用するつもりなんだろうか……もしそうだとしたら、どんな女の子と会うんだろう?少し、胸の奥がざわついた。

 確かにボクも、今日初めて話したのに、葵ちゃんとはなんだか不思議と話しやすかった。それに、憧れの彼女のことについて、もっと色々知りたい、という気持ちが心の奥底から湧き上がってくる。

 そんな想いが頭の中を駆け巡る中、ボクは、まるで何かに突き動かされるように、口を開いていた。

「なら……わっ……私と『レンタル彼女』やってみる?」

「え……」

 口に出してしまった後で、自分が何を言ったのか、ようやく理解して、顔がみるみる赤くなっていくのがわかる。葵ちゃんの、驚いた表情が目の前で固まった。

「あっ、いや、その……葵ちゃんが、もし嫌じゃなかったら……その……」

 ボクは、一体何を言っているんだ?こんな突拍子もない提案、彼女に迷惑なだけだ。しかも、ボクは男の子なんだぞ?可愛い女の子の格好をしているだけで、中身は紛れもない男だ。

 でも、一度動き出したボクの口はもう止まらなかった。ただただ……彼女のことをもっと知りたいという、抑えきれない気持ちだけがどんどん大きくなっていた。

「雪姫ちゃんも……女の子が、好きなの?」

「あっ、いや、違くて!そういう訳じゃないんだけど!私……あの……友達がいなくて……その……葵ちゃんと、仲良くなりたいって……すごく思って。それに週末だけ!週末だけの秘密の約束。それなら、葵ちゃんも余計なお金がかからないでしょ?それに……まだ、葵ちゃんが本当に女の子を好きかどうか、分からないんだし、私は葵ちゃんと友達になれるし……その……一石二鳥かなって……」

 我ながら、なんて言い訳がましいんだろう……でも、必死だったんだ。

「そっ……そうだね。雪姫ちゃんは、私のこと友達として、私は雪姫ちゃんを。……でも、本当にいいの?私と友達になるなんて迷惑じゃない?それに……私のこと変な子だと思わないの?」

「変だなんて、全然思わない!むしろ、自分の気持ちと、真剣に向き合おうとしているんだなって!それに……私も……また葵ちゃんに会いたいし……」

 本心だった。

 今日、ほんの少しの時間しか一緒にいなかったけれど、葵ちゃんの笑顔は、ボクの心に深く刻まれていた。

「本当に?嬉しい……ありがとう、雪姫ちゃん!」

 葵ちゃんの顔がパっと明るくなった。その笑顔を見て、ボクの胸の奥にも温かい光が灯ったような気がした。

 そして別れる時、ボクたちはぎこちなく連絡先を交換し次の週末にまた会う約束をした。

 こうして、ボクは週末だけ『白井雪姫』として、憧れの葵ちゃんの友達兼期間限定の『レンタル彼女』になったのだ。まさかこんな展開になるなんて夢にも思わなかった……

 これから、一体どうなってしまうんだろう?ドキドキと、少しの不安と、そして何よりも大きな期待が、ボクの胸の中で渦巻いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...