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80. 運命
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80. 運命
ここは王都ローゼリア。今ここに魔王を討伐するために1人の女性が旅立とうとしていた。
「準備はよろしくてイデア?」
「はい……」
魔王を討伐するために出発した勇者が倒れたとの一報が入り、その勇敢な女性は自ら立ち上がった。彼女の名前はフレデリカ=ローゼリア。この国の第一皇女にして王位継承権も高く次期女王となる人物だ。
そしてフレデリカに付き従うは騎士団最強と呼ばれる女性騎士のイデア=ライオット。長い金髪を赤いリボンで結び腰には剣を携えている。その立ち振る舞いからして只者ではない雰囲気を醸し出していた。
「では他の仲間と合流して出発しますわよ」
「はぁ。はい……」
そして……なぜか乗り気ではない。それもそのはず彼女には理由がある。『魔王を討伐する』こうならないように生きてきたはずだったのだから……。
彼女はこの時こう思っていた。『どうしてこうなった?なんのための2度目なのか』と。
「あら?そんな浮かない顔してどうしましたのイデア?」
「いや……やっぱり簡単には割り切れませんよ、今までこうならないように生きてきたはずなんですから」
「ふふっ運命には逆らえないと言うことですわね?でもこう考えたらどう?あなたは私に出会い、姫騎士になるために産まれて来たのですわって!」
「あはは……」
屈託のない笑顔で話すフレデリカ姫様。本当にそうなのかもしれない。この人の為なら命懸けで戦える。私は心の中でそう思っている。
「それよりも他の仲間って誰なんですか?」
「さぁ?お父様やレイヴンが決めてくれてるでしょ?とにかく馬車が止まっているはずですから、そこへ向かうわよ」
そう言ってフレデリカ姫様は歩き出す。私もそれに続いて歩く。すると前方に馬車が見える。そこには見知った人物がいた。
「お待ちしていました。私はこの度フレデリカ様の旅のお供をさせて頂くことになりました。騎士団のレオニードと申します」
「同じく騎士のアリッサです」
「エレンです。よろしくお願いします」
「なんでみんなが……?」
私が驚いていると、レオニードが説明してくれる。
「お前より最強の剣士になる。だから同行に立候補したんだよイデア」
「借りはきちんと返さないとだから。ボクやアリッサがついていくんだから感謝してよねお姉さん?」
「そんなこと言ってますけど、あたしもエレンもイデアさんともう一度一緒にいたくて立候補したんです!」
「ボクは違うから!その……本当に違うって……」
私は嬉しかった。こんなにも私と一緒にいたいと思ってくれていたなんて。
「あらあら?私ではなくてイデアと一緒が良いなんて妬けちゃいますわね?」
「嫉妬ですかフレデリカ姫様?」
「ふふっどうかしら?でも……あなたの人望があってのことでしょ?主君としては嬉しい限りじゃない?」
そう言って微笑むフレデリカ姫様。本当にこの人には敵わないなと思う。そして馬車に乗り込み、そのまま出発する。まず目指すは勇者の試練の場所。この世界にいる6属性の精霊の加護を得ることが目的。とりあえずこのローゼリアから近いのは炎の精霊の加護。
そして馬車が王都を出ようと西の門を通り抜けようとした時、馬車は急停車する。外を見ると私とフレデリカ姫様の知っている人物たちが立っていた。
「防御魔法や回復魔法はいりませんか?今なら親友価格でタダですよ?」
「ほら。そっち詰めろよイデア。オレの特等席空けておいてくれないと困るだろうが?」
そう言ってオリビアとアルフレッドは馬車に乗り込んでくる。それを自然と受け入れる私とフレデリカ姫様。だってそんなような気がしていたから。それにしても、なんか……なんだかんだ大所帯になってきた気がする。前世と同じパーティーが揃ってしまったのね。更にアリッサとエレンも増えたか。
私はそのまま窓の外を見る。外はとても清々しい青空が広がっていた。結局、私の運命は変わらなかった。でも違うことがひとつだけある。
「ん?なんですの?」
「いえ。なんでもないです。これからよろしくお願いしますねフレデリカ姫様」
「えぇ。よろしく頼むわイデア」
それは私の隣に大切な人がいること……。
「……今度こそは大丈夫ですわ」
「え?」
「……何でもありませんわ。さぁ炎の精霊の加護を手に入れにいきますわよ!」
私はこの運命を決して後悔しない。その道は茨の道であり、困難が待ち受けていることも分かっている。それでも私たちはまた進む。少し変化した自分が信じた未来に向かって。
第一部 完
ここは王都ローゼリア。今ここに魔王を討伐するために1人の女性が旅立とうとしていた。
「準備はよろしくてイデア?」
「はい……」
魔王を討伐するために出発した勇者が倒れたとの一報が入り、その勇敢な女性は自ら立ち上がった。彼女の名前はフレデリカ=ローゼリア。この国の第一皇女にして王位継承権も高く次期女王となる人物だ。
そしてフレデリカに付き従うは騎士団最強と呼ばれる女性騎士のイデア=ライオット。長い金髪を赤いリボンで結び腰には剣を携えている。その立ち振る舞いからして只者ではない雰囲気を醸し出していた。
「では他の仲間と合流して出発しますわよ」
「はぁ。はい……」
そして……なぜか乗り気ではない。それもそのはず彼女には理由がある。『魔王を討伐する』こうならないように生きてきたはずだったのだから……。
彼女はこの時こう思っていた。『どうしてこうなった?なんのための2度目なのか』と。
「あら?そんな浮かない顔してどうしましたのイデア?」
「いや……やっぱり簡単には割り切れませんよ、今までこうならないように生きてきたはずなんですから」
「ふふっ運命には逆らえないと言うことですわね?でもこう考えたらどう?あなたは私に出会い、姫騎士になるために産まれて来たのですわって!」
「あはは……」
屈託のない笑顔で話すフレデリカ姫様。本当にそうなのかもしれない。この人の為なら命懸けで戦える。私は心の中でそう思っている。
「それよりも他の仲間って誰なんですか?」
「さぁ?お父様やレイヴンが決めてくれてるでしょ?とにかく馬車が止まっているはずですから、そこへ向かうわよ」
そう言ってフレデリカ姫様は歩き出す。私もそれに続いて歩く。すると前方に馬車が見える。そこには見知った人物がいた。
「お待ちしていました。私はこの度フレデリカ様の旅のお供をさせて頂くことになりました。騎士団のレオニードと申します」
「同じく騎士のアリッサです」
「エレンです。よろしくお願いします」
「なんでみんなが……?」
私が驚いていると、レオニードが説明してくれる。
「お前より最強の剣士になる。だから同行に立候補したんだよイデア」
「借りはきちんと返さないとだから。ボクやアリッサがついていくんだから感謝してよねお姉さん?」
「そんなこと言ってますけど、あたしもエレンもイデアさんともう一度一緒にいたくて立候補したんです!」
「ボクは違うから!その……本当に違うって……」
私は嬉しかった。こんなにも私と一緒にいたいと思ってくれていたなんて。
「あらあら?私ではなくてイデアと一緒が良いなんて妬けちゃいますわね?」
「嫉妬ですかフレデリカ姫様?」
「ふふっどうかしら?でも……あなたの人望があってのことでしょ?主君としては嬉しい限りじゃない?」
そう言って微笑むフレデリカ姫様。本当にこの人には敵わないなと思う。そして馬車に乗り込み、そのまま出発する。まず目指すは勇者の試練の場所。この世界にいる6属性の精霊の加護を得ることが目的。とりあえずこのローゼリアから近いのは炎の精霊の加護。
そして馬車が王都を出ようと西の門を通り抜けようとした時、馬車は急停車する。外を見ると私とフレデリカ姫様の知っている人物たちが立っていた。
「防御魔法や回復魔法はいりませんか?今なら親友価格でタダですよ?」
「ほら。そっち詰めろよイデア。オレの特等席空けておいてくれないと困るだろうが?」
そう言ってオリビアとアルフレッドは馬車に乗り込んでくる。それを自然と受け入れる私とフレデリカ姫様。だってそんなような気がしていたから。それにしても、なんか……なんだかんだ大所帯になってきた気がする。前世と同じパーティーが揃ってしまったのね。更にアリッサとエレンも増えたか。
私はそのまま窓の外を見る。外はとても清々しい青空が広がっていた。結局、私の運命は変わらなかった。でも違うことがひとつだけある。
「ん?なんですの?」
「いえ。なんでもないです。これからよろしくお願いしますねフレデリカ姫様」
「えぇ。よろしく頼むわイデア」
それは私の隣に大切な人がいること……。
「……今度こそは大丈夫ですわ」
「え?」
「……何でもありませんわ。さぁ炎の精霊の加護を手に入れにいきますわよ!」
私はこの運命を決して後悔しない。その道は茨の道であり、困難が待ち受けていることも分かっている。それでも私たちはまた進む。少し変化した自分が信じた未来に向かって。
第一部 完
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