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15. 小説家さんとお誘い

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15. 小説家さんとお誘い



 そして約束の週末。悠理に書き上げた原稿を読んでもらう。

「どっ……どうだ?」

「うーん……前よりは良くなっているけど……でも、まだちょっと弱いかな。これじゃ通せないわね。」

「そっか……」

 悠理からダメ出しをされる。確かにまだ、オレの妄想の世界観が強すぎるかもしれない。

「悪かった。期待にこたえられないで、もう一度書き直す。」

「ふふっ」

「なんだよ?」

「いや本当に本気なんだなって思ってさ。晴斗の顔、あの時と同じで生き生きしてるわ。なら悠理さんからプレゼントをあげるわ」

 そういうと悠理は鞄から何かを取り出して渡してきた。

「水族館のペアチケット?」

「その小説に足りないのはリアルなデートシーンだと思うわ。管理人さんをまずデートに誘ってみたら?誘うのだって簡単な事じゃないしね」

「デート!?そっそんな……オレが誘うのか?マジ無理!」

「27のおっさんが何言ってんのよ?デートくらいスマートに誘いなさい。また来週来るから、いいもの書き上げときなさいよ?」

 そう言い残して悠理は部屋から出て行った。デートのことを忘れる為に、その後すぐにオレも執筆に取り掛かる。だが全くと言っていいほど筆が進まなかった。今までこんな気持ちになった事はない。胸の奥底から湧き上がるこの感情は何だろう?

「真白さんをデートに誘う……。よし!悠理もオレの為にチケット用意してくれたんだもんな。無駄には出来ない。」

 オレはその足で真白さんの部屋に行く。

「あっ北山さんだ。こんにちは。どうしましたか?」

「その……えっと……」

「?」

 ダメだ……言葉が……くそ!オレは何やってんだよ。物語によくある誘いかたで良いんだ、難しく考えるな。

「あっあのこの前のカレー美味しかったです。」

「本当ですか?それならまた作ろうかな……なんて。きゃっ言っちゃった。」

 可愛いな真白さん。こんな子とデートできたら、きっと楽しいんだろうな。そう考えていたら自然と言葉が出ていた。

「真白さん。カレーのお礼じゃないんですけど、来週お時間ありますか?水族館のペアチケットをもらって、その良かったら一緒に行きませんか?」

「えぇ!?その……それってデートですか!?」

「そう……なりますかね。」

「……はい。お誘いありがとうございます。嬉しいです。ぜひ一緒に水族館デートしましょう」

 そう満面の笑みで答えてくれた真白さん。ああ……オレはこの笑顔の為だけに頑張れる気がする。そして部屋に帰って思う

「すごい心臓がバクバクいってる……。何だよこれ……。これが恋なのか?真白さん可愛いすぎだろ……水族館のことを調べに調べまくって楽しんでもらうぞ!」
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