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17. 率先するのはクレーム対応の時だけ
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17. 率先するのはクレーム対応の時だけ
私たちは険しい山道を歩き続ける。その山道は険しく、とても人間が通るとは思えない獣道、そして山賊が隠れていそうな崖などがあった。
「リンネ様~もうこんな険しい山道歩けません~お腹空きましたぁ~」
「ピーッピーッ!」
こらこら。あんなにドヤ顔で胸を張って山や森はエルフの庭ですとか言ってたのはどこの誰だ?
「仕方ないわね……じゃあここで休憩にしましょうか」
「やったーっ! さすがリンネ様ですぅ~ついでにおやつも食べさせてほしいです!」
「はいはい」
そう言うと私は鞄をゴソゴソと漁り、中から大きなパンを取り出した。
「はいこれ。朝作ったばかりの焼きたてよ」
「うわぁ~美味しそうです~いただきます~!」
フィーナは大きく口を開けて私の手にあるパンを一口頬張った。
「ん~!やっぱりリンネ様の作るパンは最高ですね~」
「ありがとう」
まぁ……そんなに嬉しそうな顔して私のパンを食べている姿を見ると文句も言えなくなるけどね。
「じゃあそろそろ出発しようかし……!?」
ガサガサという音がした方向を振り向くとそこには一匹の大きな熊がいた。
「グルルル……」
「グ、グリズリー!?どどどどうしたらリンネ様!」
「落ち着きなさいエド。ただの熊でしょ。」
「でもあれは普通じゃないですよ!」
確かに普通の熊よりも一回り大きい。それに目つきも鋭い。おそらくあのグリズリーは狂暴な魔物に違いない。しかし私にはこの程度の相手は脅威ではない。むしろ芋虫の魔物のほうがキツい。
「2人は下がってなさい。えっと……体長3.1メートル、水分量68~71%。かなりの筋肉質ね。よし決めたわカンパーニュにしましょ」
私は目の前にいる巨体の熊に向かって炎魔法を詠唱し始める。外はカリっと中はモチっと焼き上げてあげるわ
「燃え盛る炎よ、我が敵を焼き払え!《フレア・バースト》」
私が魔法を唱えると巨大な火球がグリズリーに向けて放たれた。その威力はすさまじく、着弾と同時に爆音とともに激しい爆風が巻き起こる。そしてそのグリズリーを一瞬で焼き尽くす。
「ふぅ。こんなもんかしらね?」
「ガルーダの時も思いましたけどリンネ様はやっぱり魔力のコントロールがすごいですよね……ボクもいつかそうなれたらいいなぁ」
「エド君ならきっとなれますよ!だって魔女のお孫さんなんですから!」
「ピーッ!」
「ありがとうフィーナさん。ピー助さん。」
ピー助に『さん』はいらないわよエド。それにしても……いつまでもこの程度の魔物を倒せないと何かあった時困るわね。いつまでも店長の私に頼られても困るし。
そんなことを考えながら山道を歩き続けると小さな小屋を見つける。もう辺りも暗くなってきたし、今日はあそこに泊まるしかないかしらね?
私たちは山の中にひっそりとある山小屋の前に着く。中に入ると埃っぽく、長い間使われていないようだった。だけど薪だけは置いてあり、まだ使えそうだ。
「ねぇリンネ様。ここって人がいる気配はないですけど……勝手に使っていいんですか~?」
「大丈夫よ。誰もいないみたいだし、明日の朝になったらすぐ出ればいいだけなんだから」
外で野宿とかは絶対にゴメンだ。魔物も出てくるし、何より虫が嫌だ。
「ほらほら夕食の準備するわよ。フィーナとエドは近くの川に行って水汲んできて」
「はーい!」
「わかりました!」
そして私たちは夕飯を食べ、小屋の中で食休みをしていると、突然大雨が降ってくる。……良かったわ偶然この小屋を見つけて。
「うひゃーっ!急に降り出しちゃいましたねリンネ様!」
「ほんとね……さっきまで晴れてたのに……」
すると外からバシャバシャという音が聞こえてくる。かなりの勢いの雨だ。これはしばらく止みそうにないかもしれない。そんなことを考えていると、微かに雨音に紛れて入り口の扉がノックされたような音が聞こえてくる。
「誰かいるのかしら……?」
「リンネ様開けてみたらどうですか~?」
「なんで私なのよ?」
「それは山賊とか魔物だったら怖いじゃないですか!ボクたちよりリンネ様のほうがいいです。魔女なので」
今さらだけど私も人間のパン屋の女性だから。それに店長が率先して出ていくのはクレーム対応の時だけでしょうに。しても……確かにそうよね。一応念のため警戒しておいたほうがいいかもね。
「わかったわ。ちょっと見てくる」
私はゆっくりとドアを開けるとそこには全身ずぶ濡れの人物が立っていた。
「すみませんにゃ。少し雨宿りさせてもらってもいいかにゃ……?」
にゃ?よく見ると猫耳がある。ということはこの人は獣人のようだ。でも……どうしてこんなところに獣人が一人で……
「あなたは……誰?」
「あぁ失礼しましたにゃ。あたしは猫族のルウっていうにゃん。よろしくにゃ!」
そういうと律儀に自作の名刺らしきものを私に手渡す。……雨で文字が滲んでいるけどさ。
「あぁこちらこそ……えっと、それで……どうしてこんなところに?」
「実は……お恥ずかしながら道に迷ってしまったのですにゃ。この辺りには初めて来たもので……」
どうやら彼女は森を抜けてここまでやってきたらしい。しかし運悪く豪雨に見舞われ、この山小屋を見つけたので雨宿りをさせてほしいというわけである。
「なるほどね。じゃあ私たち同じね。良かったら一緒に朝まで待つ?」
「いいのですかにゃ!?」
「もちろんよ。」
「ありがとうございますにゃ!それではご一緒させていただくですにゃ!」
こうして私は猫族のルウと一夜を共にすることになったのだった。
私たちは険しい山道を歩き続ける。その山道は険しく、とても人間が通るとは思えない獣道、そして山賊が隠れていそうな崖などがあった。
「リンネ様~もうこんな険しい山道歩けません~お腹空きましたぁ~」
「ピーッピーッ!」
こらこら。あんなにドヤ顔で胸を張って山や森はエルフの庭ですとか言ってたのはどこの誰だ?
「仕方ないわね……じゃあここで休憩にしましょうか」
「やったーっ! さすがリンネ様ですぅ~ついでにおやつも食べさせてほしいです!」
「はいはい」
そう言うと私は鞄をゴソゴソと漁り、中から大きなパンを取り出した。
「はいこれ。朝作ったばかりの焼きたてよ」
「うわぁ~美味しそうです~いただきます~!」
フィーナは大きく口を開けて私の手にあるパンを一口頬張った。
「ん~!やっぱりリンネ様の作るパンは最高ですね~」
「ありがとう」
まぁ……そんなに嬉しそうな顔して私のパンを食べている姿を見ると文句も言えなくなるけどね。
「じゃあそろそろ出発しようかし……!?」
ガサガサという音がした方向を振り向くとそこには一匹の大きな熊がいた。
「グルルル……」
「グ、グリズリー!?どどどどうしたらリンネ様!」
「落ち着きなさいエド。ただの熊でしょ。」
「でもあれは普通じゃないですよ!」
確かに普通の熊よりも一回り大きい。それに目つきも鋭い。おそらくあのグリズリーは狂暴な魔物に違いない。しかし私にはこの程度の相手は脅威ではない。むしろ芋虫の魔物のほうがキツい。
「2人は下がってなさい。えっと……体長3.1メートル、水分量68~71%。かなりの筋肉質ね。よし決めたわカンパーニュにしましょ」
私は目の前にいる巨体の熊に向かって炎魔法を詠唱し始める。外はカリっと中はモチっと焼き上げてあげるわ
「燃え盛る炎よ、我が敵を焼き払え!《フレア・バースト》」
私が魔法を唱えると巨大な火球がグリズリーに向けて放たれた。その威力はすさまじく、着弾と同時に爆音とともに激しい爆風が巻き起こる。そしてそのグリズリーを一瞬で焼き尽くす。
「ふぅ。こんなもんかしらね?」
「ガルーダの時も思いましたけどリンネ様はやっぱり魔力のコントロールがすごいですよね……ボクもいつかそうなれたらいいなぁ」
「エド君ならきっとなれますよ!だって魔女のお孫さんなんですから!」
「ピーッ!」
「ありがとうフィーナさん。ピー助さん。」
ピー助に『さん』はいらないわよエド。それにしても……いつまでもこの程度の魔物を倒せないと何かあった時困るわね。いつまでも店長の私に頼られても困るし。
そんなことを考えながら山道を歩き続けると小さな小屋を見つける。もう辺りも暗くなってきたし、今日はあそこに泊まるしかないかしらね?
私たちは山の中にひっそりとある山小屋の前に着く。中に入ると埃っぽく、長い間使われていないようだった。だけど薪だけは置いてあり、まだ使えそうだ。
「ねぇリンネ様。ここって人がいる気配はないですけど……勝手に使っていいんですか~?」
「大丈夫よ。誰もいないみたいだし、明日の朝になったらすぐ出ればいいだけなんだから」
外で野宿とかは絶対にゴメンだ。魔物も出てくるし、何より虫が嫌だ。
「ほらほら夕食の準備するわよ。フィーナとエドは近くの川に行って水汲んできて」
「はーい!」
「わかりました!」
そして私たちは夕飯を食べ、小屋の中で食休みをしていると、突然大雨が降ってくる。……良かったわ偶然この小屋を見つけて。
「うひゃーっ!急に降り出しちゃいましたねリンネ様!」
「ほんとね……さっきまで晴れてたのに……」
すると外からバシャバシャという音が聞こえてくる。かなりの勢いの雨だ。これはしばらく止みそうにないかもしれない。そんなことを考えていると、微かに雨音に紛れて入り口の扉がノックされたような音が聞こえてくる。
「誰かいるのかしら……?」
「リンネ様開けてみたらどうですか~?」
「なんで私なのよ?」
「それは山賊とか魔物だったら怖いじゃないですか!ボクたちよりリンネ様のほうがいいです。魔女なので」
今さらだけど私も人間のパン屋の女性だから。それに店長が率先して出ていくのはクレーム対応の時だけでしょうに。しても……確かにそうよね。一応念のため警戒しておいたほうがいいかもね。
「わかったわ。ちょっと見てくる」
私はゆっくりとドアを開けるとそこには全身ずぶ濡れの人物が立っていた。
「すみませんにゃ。少し雨宿りさせてもらってもいいかにゃ……?」
にゃ?よく見ると猫耳がある。ということはこの人は獣人のようだ。でも……どうしてこんなところに獣人が一人で……
「あなたは……誰?」
「あぁ失礼しましたにゃ。あたしは猫族のルウっていうにゃん。よろしくにゃ!」
そういうと律儀に自作の名刺らしきものを私に手渡す。……雨で文字が滲んでいるけどさ。
「あぁこちらこそ……えっと、それで……どうしてこんなところに?」
「実は……お恥ずかしながら道に迷ってしまったのですにゃ。この辺りには初めて来たもので……」
どうやら彼女は森を抜けてここまでやってきたらしい。しかし運悪く豪雨に見舞われ、この山小屋を見つけたので雨宿りをさせてほしいというわけである。
「なるほどね。じゃあ私たち同じね。良かったら一緒に朝まで待つ?」
「いいのですかにゃ!?」
「もちろんよ。」
「ありがとうございますにゃ!それではご一緒させていただくですにゃ!」
こうして私は猫族のルウと一夜を共にすることになったのだった。
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