【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!

夕姫

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922. 姫は『心配する』そうです

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922. 姫は『心配する』そうです


 真夏の太陽の下、汗と情熱を注ぎ込んだ大型企画『ひなた組55』。その長時間耐久配信が終わってから、気づけばもう2週間ほどが過ぎていた。体の奥底に残っていた疲労感もようやく抜け、活動の流れは日常へと戻りつつある、そんな9月中旬の昼下がりだ。

 オレは今日、事務所の一室で、今後の秋の配信について詳細を詰める会議に参加していた。窓から差し込む陽射しは、まだ夏の名残を感じさせるものの、ガラス越しに見える街路樹の葉には、確かに秋の気配が色づき始めている。空の色も、あの猛暑日のような鮮烈な青ではなく、少しばかり落ち着いた、柔らかな水色だ。

 会議室には、いつものようにオレの隣には高坂さんが座り、他にも数名のマネージャーさんが顔を揃えている。皆、真剣な表情で手元の資料を覗き込んでいるが、その中心にいるのは、やはり桃姉さんだ。

 桃姉さんは、長い髪をきっちりと一つにまとめ、白いブラウスに黒のタイトスカートという、シャープな装い。資料を指し示しながら、淀みなく企画の概要とスケジュール、そして予算について説明していく。

「……というわけで、企画室からは期生同士のコラボをお願いいたしますと言われてるわ。内容は……キャンプ場でのオフコラボ。当日は貸し切りの予定で、日付をずらして収録、場所も何ヵ所か借りるわ。スタッフも10名ほど同行して、収録だとバレないように配慮するとのことよ。私たちが決めることは、各期生にするか、前回みたいに特定のライバーだけ参加でユニットやカップリングにするか。それを決めてほしいってことだから……若林さんの担当ライバーはどうかしら?」

「ポアレイの熱はありますけど、あまりにも詰めすぎかなと。私は各期生の方が良いと思いますよ。あとチーフマネージャー。ここに神崎マネージャーと高坂マネージャーがいるので、実際に聞いた方が早いかなって思いますw」

「それもそうね。どうなの?」

「どうなの?と言われても……オフコラボか。その、新たなユニットの場合、組み合わせが限られると思いますよ。姫宮ましろが絡むなら尚更」

「私は期生でいいと思います。なかなか期生での配信ってないですし、私としても5期生の皆さんで配信したいと思ってます」

 そう高坂さんは言った。その顔は、わずかに期待に胸を膨らませているようにも見える。

 というか、オフコラボ?まさか泊まりなのか?部屋は別なんだろうな……

 オレの頭の中で、そんな余計な心配がよぎった瞬間、高坂さんが企画の詳細について確認するように桃姉さんに問いかけた。

「チーフマネージャー。これは……収録日をずらすということは、泊まり込みでの企画になるんでしょうか?」

 高坂さんの質問は、オレの心の声そのものだった。他のマネージャーさんたちも、企画の規模感を測るように、桃姉さんの返答を待っている。桃姉さんは、涼しげな表情を崩さず、資料に視線を落としたまま答えた。

「ええ、基本的にはそうなるわ。キャンプ場を貸し切るから、撮影に丸一日使って、バーベキューの様子、夜の焚き火の前でのトーク、出来れば寝るまでの様子を収録したいと。宿泊するロッジがあるから、そこに泊まることになるかしらね?颯太、大丈夫よね?」

「いや、大丈夫じゃないだろ」

「え?間違いとか起こさないわよね?」

「当たり前だろ!そういう話じゃなくて、本当に同じ場所に泊まるのか!?」

「ベッドは別でしょ?問題ないわよね?私だって一緒に住んでるじゃない?」

 部屋は別だろうが。その前に、実の姉なんだよ。どうするんだ?心配なんだが……普通に立花さんが嫌がりそうだし、月城さんと七海はどうなんだろうか?心配しかない……しかもオレが悪いわけじゃないのに……

「ということで、その方向で企画を進めていくから。あ。ライバーに食べれない食材とかアレルギーのある食材とか聞いておくように。集計して9月21日までに報告して」

 桃姉さんは、報告期限を告げると、オレたちの返答を待たずに「解散」と言わんばかりに資料をまとめて、部屋を出て行った。残された会議室には、大型企画特有の熱気と、どこか重苦しい空気が残る

 オレは、肘をついたまま、資料に書かれた『宿泊予定ロッジ』という文字を睨みつけていた。ロッジ。ベッド。立花さん、月城さん、七海……。

 絶対、大丈夫じゃないだろ。桃姉さんは何を呑気に……

 「神崎先輩、お疲れ様です」

 横から、高坂さんが優しく声をかけてきた。彼女は、先ほどまで真剣に会議に参加していた表情から、いつもの柔らかい笑みに戻っている。

 「お疲れ様。キャンプ、本当に同じ部屋に泊まりなのか?オレは男なんだけど……」

「大丈夫ですよ。別に2人きりではないですし、きっと他の1期生も普通に了承すると思いますよ?神崎先輩のこと、男として見てないと言うか、姫宮ましろとして見てると思いますしw」

「それはそれで複雑なんだけどな……」

「それより、神崎先輩。明日の企画なんですけど大丈夫ですか?」

「え?ああ。17時からの?大丈夫だよ。通話でいいんだよね?」

「はい。衣音ちゃん怒りますかねw」

「怒らないと思うよ。文句は言いそうだけどw」

 来月には秋の大型企画が始まる。とりあえず、気持ちを切り替えて明日の企画を頑張るか
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