【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!

夕姫

文字の大きさ
1,109 / 1,119

999. 『冬空に響け!聖なる夜の秘密の歌』~オフパート それ以上にです~

しおりを挟む
999. 『冬空に響け!聖なる夜の秘密の歌』~オフパート それ以上にです~


 クリスマスの大型企画も残りは最後の企画を残すのみとなった。最後の企画が始まるまで、少しだけ時間があるのでリビングにいくと、そこには冷蔵庫から牛乳を取り出している彩芽ちゃんがいた。

「あ……颯太さん。お疲れ様です……」

「うん。お疲れ様」

「コーヒー……飲みますか?」

「お願いできる?」

 オレの言葉に、彩芽ちゃんは「はいっ」と小さく、けれど弾むような声で応えた。

 彩芽ちゃんは慣れた手つきでコーヒーメーカーをセットし、冷蔵庫から取り出したばかりの牛乳を電子レンジで温め始める。

「……颯太さん。最後の企画、何やるんですかね?」

 電子レンジの駆動音だけが、やけに大きく響く静かなキッチン。彩芽ちゃんが、カップの縁を指でなぞりながらポツリと呟いた。

「ライバー全員参加だからね。流れ的にライバーの曲にまつわるクイズだろうけど」

 オレがソファに深く腰を下ろすと、彩芽ちゃんが温めたミルクを丁寧に注いだカフェオレを運んできてくれた。一口飲むと、優しい甘さが体中に染み渡っていく。

 何気ない日常。けれど、特別すぎるほどに心地いい時間。このままここで、二人だけで世界の喧騒から切り離されていたい――そんな甘い思考が頭をもたげる。

 ……いや、今日はクリスマスだ。

 仕事が詰まっているのはいつものことだが、味気ない機材に囲まれて聖夜を終えるなんて、男として少し寂しすぎる。

 ……たまには彩芽ちゃんと、仕事の延長ではない場所へ出掛けたいよな。

「……ねぇ、彩芽ちゃん。この企画が終わったらさ……」

 オレの声に、彩芽ちゃんがピクリと肩を揺らしてこちらを向く。

「少しだけ外に出ない?ずっと家で配信機材と向き合いっぱなしだったし……2人でゆっくり、クリスマスらしいことしたいって思ってさ?」

 オレの提案は、少し唐突だったかもしれない。けれど、彩芽ちゃんの瞳はみるみるうちに輝きを帯びていった。

「それなら……イルミネーション、見たいです……駅前の広場がすごく綺麗だって、リスナーさんが言ってて……えっと、もし迷惑じゃなければ……ですけど……」

「うん。いいよ」

 オレがそう言うと彩芽ちゃんはパァッと嬉しそうな笑顔を見せてくれる。配信という魔法が解けかかった、この曖昧なインターバル。誰にも見られないこの場所でだけ、オレたちは「ましろ」と「かのん」という役割を脱ぎ捨てることができる。

「じゃあ、その帰りに何か食べて帰ろうか。……やっぱり、お寿司かな?」

「お、お寿司……!」

「お寿司」という単語が出た瞬間、彼女のテンションが一段跳ね上がった。

「その……えびたま……えびと、たまご、いっぱい食べても、いいですか……?」

「あはは、もちろん。好きなだけ食べていいよ」

 オレが笑って答えると、彩芽ちゃんは安心したように「ふふっ」と頬を緩める。本当に『えびたま』が好きなんだな彩芽ちゃんは。

「約束ですよ?企画、最後まで頑張れます。……颯太さんと一緒に歩くイルミネーションのために」

「えびたまじゃないの?」

「それも……いえ、それ以上に、颯太さんと一緒なのが、大事です!」

 彼女は手元のカップを両手で包み込み、昇り立つ湯気の向こうで、少しだけ熱を帯びた瞳をこちらに向けた。

 ……そんな顔をされると、こっちの心拍数まで跳ね上がるんだが。

 それから数分。リビングの時計が、無情にも最後の企画開始が近いことを告げた。

「よし、そろそろ行こうか」

「はい」

 名残惜しさを振り払い、各々の配信部屋へと向かう。ドアを閉める直前、彩芽ちゃんがくるりと振り返り、小さく手を振った。

「颯太さん、言ってませんでした……メリークリスマス」

「え?あっうん。メリークリスマス」

 不意打ちの言葉に、間の抜けた返事をしてしまう。数分後にはまた、オレたちは何万人ものリスナーの前で、理想のVtuberを演じ、声を張り上げる。

 けれど、この冬の夜に交わした「イルミネーションとえびたま」の約束だけは、誰にも暴かれないオレと彩芽ちゃんだけの秘密として、胸の奥で温かく灯っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

think
ファンタジー
ざっくり紹介 バトル! いちゃいちゃラブコメ! ちょっとむふふ! 真面目に紹介 召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。 そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。 ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。 皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは リビングメイルだった。 薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが マモリタイ、コンドコソ、オネガイ という言葉が聞こえた。 カイは迷ったが契約をする。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...