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780. 姫は『恥ずかしすぎる』そうです
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780. 姫は『恥ずかしすぎる』そうです
ということで、オレは桃姉さんと共に『ルート47の特別版』の収録をすることにする。
「神崎先輩、チーフマネージャー、なんでここにいるの?みたいな反応でオープニング撮りをお願いします」
「分かったよ……」
オレはもう一度ため息をついた。ドッキリ自体は想定内だった。ライバーとして活動している以上、こういう企画はつきものだ。でもまさか相手が桃姉さんとは。そして『姫宮ましろ』として、目の前で桃姉さんと絡むのは、想像以上にハードルが高い。恥ずかしすぎる。
「えぇ……本当に私出演するの?高坂さん?」
桃姉さんが、まだ信じられないといった顔で高坂さんに確認する。無理もない。桃姉さんはただの素人だ。
「社長直々のご指名なので。でもチーフマネージャーはいつも通りで大丈夫ですから。音声は消しますし、全部テロップになります。気をつけていただくのは弟ではなくて妹ととして接して貰うことくらいですかね」
「はぁ……分かったわ……本当になに考えてるのかしらあの人」
桃姉さんは観念したようにうなだれた。チーフマネージャーとして、社長命令には逆らえないのだろう。しかし、弟であるオレを妹として扱うというのは、桃姉さんにとってもかなりキツいはずだよな……
「じゃあ準備しましょうか!定位置へお願いします!」
スタッフさんの声で、オレたちは促された。駅の片隅、人通りの少ない場所に立つ桃姉さん。オレはカメラを渡され撮影することにする。
オレはまず、一人でいる体で周りを見回し何かを探している仕草をする。そして偶然桃姉さんを見かけた、という体で声をかける。
「おはようございます。ましろです。駅に着きました。今日はルート47の特別版で京都へ2泊3日なんだけど、お相手は誰だろうね?緊張してきたんだけど……ん?あ、あれ?ちょっと待って!?」
全力で『姫宮ましろ』を演じる。オーバーなくらい驚いた表情を作り、桃姉さんを指差す。桃姉さんは、一瞬キョトンとした後、ハッとした表情を作りカメラに向かって軽く会釈した。
……意外に演技派じゃないか桃姉さん
「え、えぇ……?お姉ちゃん!?」
「っふ、ふふ……お、お姉ちゃんて……!」
桃姉さんが、カメラの前で笑い始めた。まずい、完全に素が出てる!
「ちょっと待って! ストップストップ!」
オレは慌ててカメラを止める。もう、ましろのキャラも何もあったもんじゃない。
「なんで笑ってんだよ!」
「ごめんごめん。だってあんたからお姉ちゃんって呼ばれるの懐かしくて。なんか気恥ずかしいし?」
「仕方ないだろ!姫宮ましろはお姉ちゃんって言ってんだから!こっちだって恥ずかしいんだよ!」
そうは言っても、目の前の桃姉さんは実の姉である。その姉に向かって、ライバーのキャラ設定とはいえ「お姉ちゃん」と呼ぶのはやはり照れくさくて仕方がない。
そして、その照れが変な形で出てしまい何回かオープニングを撮り直すことになった。長かった……たった数十秒のシーンなのに、精神的にかなり疲弊した。
「ふぅ……終わった……」
「お疲れ様、颯太」
「ああ。桃姉さんもお疲れ様。まさかあんなにてこずるとは思わなかったけどな……」
「ええ。でも、なんとか撮れたみたいで良かったわ」
「神崎先輩、チーフマネージャーお疲れ様でした! 早速、新幹線で京都に向かいましょう!この後の撮影について簡単に説明しますね。まずは、新幹線内の撮影はやりません。京都駅についたら駅周辺でいくつかのスポットを巡りながら、今回の旅の目的などを紹介していきましょう」
高坂さんの説明を聞きながら、オレは改めて今回の旅のスケジュールを確認する。観光がメインの一見楽しそうな企画だ。しかし、明日の夜には『ぶっちゃけトーク』が待ち受けている。
しかも相手は桃姉さんだ。何をどこまでぶっちゃけるのか。身内中の身内だからこそ、ぶっちゃけられないこともある。いや、ぶっちゃけたくないことの方が多い。
「ぶっちゃけトークか……」
思わず口から漏れてしまった声に、隣に座っていた桃姉さんが気づいた。
「そんなに心配?」
「心配っていうか……何を話すんだよ、桃姉さんと」
「そうね……私も何を話せばいいのか、正直分からないわ」
とりあえず、まずは撮影を頑張るか。オープニングで早速ドタバタしたことだし、この旅、最後まで何が起こるか分からないかもな。
こうして、オレと桃姉さんの『ルート47特別版~京の都でぶっちゃけ姉妹旅~』が、正式に始まったのだった。
ということで、オレは桃姉さんと共に『ルート47の特別版』の収録をすることにする。
「神崎先輩、チーフマネージャー、なんでここにいるの?みたいな反応でオープニング撮りをお願いします」
「分かったよ……」
オレはもう一度ため息をついた。ドッキリ自体は想定内だった。ライバーとして活動している以上、こういう企画はつきものだ。でもまさか相手が桃姉さんとは。そして『姫宮ましろ』として、目の前で桃姉さんと絡むのは、想像以上にハードルが高い。恥ずかしすぎる。
「えぇ……本当に私出演するの?高坂さん?」
桃姉さんが、まだ信じられないといった顔で高坂さんに確認する。無理もない。桃姉さんはただの素人だ。
「社長直々のご指名なので。でもチーフマネージャーはいつも通りで大丈夫ですから。音声は消しますし、全部テロップになります。気をつけていただくのは弟ではなくて妹ととして接して貰うことくらいですかね」
「はぁ……分かったわ……本当になに考えてるのかしらあの人」
桃姉さんは観念したようにうなだれた。チーフマネージャーとして、社長命令には逆らえないのだろう。しかし、弟であるオレを妹として扱うというのは、桃姉さんにとってもかなりキツいはずだよな……
「じゃあ準備しましょうか!定位置へお願いします!」
スタッフさんの声で、オレたちは促された。駅の片隅、人通りの少ない場所に立つ桃姉さん。オレはカメラを渡され撮影することにする。
オレはまず、一人でいる体で周りを見回し何かを探している仕草をする。そして偶然桃姉さんを見かけた、という体で声をかける。
「おはようございます。ましろです。駅に着きました。今日はルート47の特別版で京都へ2泊3日なんだけど、お相手は誰だろうね?緊張してきたんだけど……ん?あ、あれ?ちょっと待って!?」
全力で『姫宮ましろ』を演じる。オーバーなくらい驚いた表情を作り、桃姉さんを指差す。桃姉さんは、一瞬キョトンとした後、ハッとした表情を作りカメラに向かって軽く会釈した。
……意外に演技派じゃないか桃姉さん
「え、えぇ……?お姉ちゃん!?」
「っふ、ふふ……お、お姉ちゃんて……!」
桃姉さんが、カメラの前で笑い始めた。まずい、完全に素が出てる!
「ちょっと待って! ストップストップ!」
オレは慌ててカメラを止める。もう、ましろのキャラも何もあったもんじゃない。
「なんで笑ってんだよ!」
「ごめんごめん。だってあんたからお姉ちゃんって呼ばれるの懐かしくて。なんか気恥ずかしいし?」
「仕方ないだろ!姫宮ましろはお姉ちゃんって言ってんだから!こっちだって恥ずかしいんだよ!」
そうは言っても、目の前の桃姉さんは実の姉である。その姉に向かって、ライバーのキャラ設定とはいえ「お姉ちゃん」と呼ぶのはやはり照れくさくて仕方がない。
そして、その照れが変な形で出てしまい何回かオープニングを撮り直すことになった。長かった……たった数十秒のシーンなのに、精神的にかなり疲弊した。
「ふぅ……終わった……」
「お疲れ様、颯太」
「ああ。桃姉さんもお疲れ様。まさかあんなにてこずるとは思わなかったけどな……」
「ええ。でも、なんとか撮れたみたいで良かったわ」
「神崎先輩、チーフマネージャーお疲れ様でした! 早速、新幹線で京都に向かいましょう!この後の撮影について簡単に説明しますね。まずは、新幹線内の撮影はやりません。京都駅についたら駅周辺でいくつかのスポットを巡りながら、今回の旅の目的などを紹介していきましょう」
高坂さんの説明を聞きながら、オレは改めて今回の旅のスケジュールを確認する。観光がメインの一見楽しそうな企画だ。しかし、明日の夜には『ぶっちゃけトーク』が待ち受けている。
しかも相手は桃姉さんだ。何をどこまでぶっちゃけるのか。身内中の身内だからこそ、ぶっちゃけられないこともある。いや、ぶっちゃけたくないことの方が多い。
「ぶっちゃけトークか……」
思わず口から漏れてしまった声に、隣に座っていた桃姉さんが気づいた。
「そんなに心配?」
「心配っていうか……何を話すんだよ、桃姉さんと」
「そうね……私も何を話せばいいのか、正直分からないわ」
とりあえず、まずは撮影を頑張るか。オープニングで早速ドタバタしたことだし、この旅、最後まで何が起こるか分からないかもな。
こうして、オレと桃姉さんの『ルート47特別版~京の都でぶっちゃけ姉妹旅~』が、正式に始まったのだった。
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