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第16壊 ファストレア緊急警備局にて①
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話はほんの少しだけ前に遡る。
ここは【ファストレア緊急警備局】、通称“ファッ急“。主にファストレアでの人―人間のトラブルや犯罪行為を取り締まる事が主な仕事の、分かりやすく言うならば異世界のおまわりさんである。
普段は暇なファッ急も、何やら今日はとてつもなく忙しいようである――――
「はい、こちらファストレア緊急警備局。事故ですか? 事件ですか?――――はい、そうですか......はい、今みんな出払っているので、なるべく早く向かわせますね」
魔法通信機の受話器をガチャりと置くその手は酷く重く、そのワイルドフェイスからは疲れを感じさせている。
「普段なんて暇を売れるくらい余らせてるのに、なんで今日に限ってこんなに忙しいんだ......」
ため息と同時に漏れ出た本音は、「普段はすぐ依頼とか言ってギルドに行く癖に、なんで今日に限ってこっちに来るんだよ全く」と言い換える事ができるのだが、そこまでは己の自制心が許さなかったようだ。
「――――うーすガリアさん......死んでる......」
机に突っ伏した状態で動かない局長を見て、後から入ってきた男はそっと扉を閉めようとする。
「まだ死んでないから! 多くの市民の声が急に爆発しただけだから!」
「ガリアさん、遂にオークの血が爆発したんですね......今か今かとは思ってましたけどやっぱりオーク顔でしたもんね」
「耳付いてんのか副長オイ!! ルークは遅番!? ちょっと早く手伝ってよ!!」
ルークと呼ばれた長身痩躯の男は、ファッ急の副局長のようだ。ガリアの焦りように本気味を感じたので、大人しく自分の席に座った。
「――それで? 何があったんですか?」
「......忙しい」
「良かったじゃないですか。これでもう税金泥棒とか言われなくて済みますよ」
「そうなんだけど!!......そうじゃないんだよ」
「回りくどい!! 頼むからはやく言え!! 手伝って欲しいんじゃ無かったんですか!!? 大体、今日はライがいましたよね? それ以外にも人員は十分居た筈なのに! まさか、アイツらがいても対処出来ない程の凄まじい凶悪犯罪が――――」
「ミンナヒマダカラッテカエッチャッタノ......」
ゴツイ男の頬を一筋の涙が伝う。
「は?」
「だからぁ! みんな暇だからって帰っちゃったの! その後で魔法通信機が鳴り止まなくなっちゃったの!」
ここまで聞いて、ルークの脳もやっと状況のヤバさを確認する。と同時に部下への怒りが爆発する。
「アイツらには後でクギ刺しときます......それで、俺は何を担当すれば良いですか?」
「ああ、そこに通報のあった家が5件リストアップされている。ルークはこっちの2件を回って欲し――――」
「――こんばんは~! 夕方時にすまないんだが、ちと自首したいんですけど~!?」
嵐が来た。
ここは【ファストレア緊急警備局】、通称“ファッ急“。主にファストレアでの人―人間のトラブルや犯罪行為を取り締まる事が主な仕事の、分かりやすく言うならば異世界のおまわりさんである。
普段は暇なファッ急も、何やら今日はとてつもなく忙しいようである――――
「はい、こちらファストレア緊急警備局。事故ですか? 事件ですか?――――はい、そうですか......はい、今みんな出払っているので、なるべく早く向かわせますね」
魔法通信機の受話器をガチャりと置くその手は酷く重く、そのワイルドフェイスからは疲れを感じさせている。
「普段なんて暇を売れるくらい余らせてるのに、なんで今日に限ってこんなに忙しいんだ......」
ため息と同時に漏れ出た本音は、「普段はすぐ依頼とか言ってギルドに行く癖に、なんで今日に限ってこっちに来るんだよ全く」と言い換える事ができるのだが、そこまでは己の自制心が許さなかったようだ。
「――――うーすガリアさん......死んでる......」
机に突っ伏した状態で動かない局長を見て、後から入ってきた男はそっと扉を閉めようとする。
「まだ死んでないから! 多くの市民の声が急に爆発しただけだから!」
「ガリアさん、遂にオークの血が爆発したんですね......今か今かとは思ってましたけどやっぱりオーク顔でしたもんね」
「耳付いてんのか副長オイ!! ルークは遅番!? ちょっと早く手伝ってよ!!」
ルークと呼ばれた長身痩躯の男は、ファッ急の副局長のようだ。ガリアの焦りように本気味を感じたので、大人しく自分の席に座った。
「――それで? 何があったんですか?」
「......忙しい」
「良かったじゃないですか。これでもう税金泥棒とか言われなくて済みますよ」
「そうなんだけど!!......そうじゃないんだよ」
「回りくどい!! 頼むからはやく言え!! 手伝って欲しいんじゃ無かったんですか!!? 大体、今日はライがいましたよね? それ以外にも人員は十分居た筈なのに! まさか、アイツらがいても対処出来ない程の凄まじい凶悪犯罪が――――」
「ミンナヒマダカラッテカエッチャッタノ......」
ゴツイ男の頬を一筋の涙が伝う。
「は?」
「だからぁ! みんな暇だからって帰っちゃったの! その後で魔法通信機が鳴り止まなくなっちゃったの!」
ここまで聞いて、ルークの脳もやっと状況のヤバさを確認する。と同時に部下への怒りが爆発する。
「アイツらには後でクギ刺しときます......それで、俺は何を担当すれば良いですか?」
「ああ、そこに通報のあった家が5件リストアップされている。ルークはこっちの2件を回って欲し――――」
「――こんばんは~! 夕方時にすまないんだが、ちと自首したいんですけど~!?」
嵐が来た。
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