色々不遇な転生したのでちびっ子魔王を最強に育てる事にしました〜なんでも壊す壊し屋さんとしてついでに異世界壊します〜

ちょっと黒い筆箱

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第17壊 ファストレア緊急警備局にて②

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「――こんばんは~! 夕方時に済まないんだが、ちと自首したいんですけど~!?」

 「このクソ忙しい時にぶっ飛ばしてやろうか」の言葉をルークは深く飲み込み、指示を仰ぐ目でガリアを見る......ガリアも同じ目でルークを見ている。

「あァもう分かりました! 俺が家回ってくるんで、局長は今自首? してきたクソ馬鹿野郎の対応お願いします!」

「さ、流石警備局一仕事のデキる男......ルーク君カッコイイ!」

「ごちゃごちゃ言ってないで早く動いて下さい!!!!」

 その言葉を置いて、ルークは勢い良く飛び出したのだった。


◇◇◇◇


「――ああ、済まない。フサエさん、協力感謝します」

「明日からまた営業はすると思うから、良かったら食べに来てねぇ」

「ええ、」

 ルークは最後に訪れた家屋を後にして、静かに舌打ちをする。

 五軒目に住む老婆、フサエはルークの、ひいてはファッ急の仲間全員がお世話になっている食堂の店主であった。

「全ての通報で“女を背負った壊し屋と名乗る男が壁を壊して侵入”と言う情報は一致。緊急を要す怪我人は0......それ以外の手掛かりはナシか......」

 公私混同はしないタイプのルークだが、【壊し屋】を名乗る二人組が侵入して来た衝撃でフサエがぎっくり腰になってしまったという情報には、静かに怒りを燃やしているのだった。

 局舎へと戻るその足は怒りを燻らせ、地面を蹴る力も自然と強くなっていく。

「思いの外早く終わったし、ガリアさんの手伝いでもするか......」

 局へと戻ったルークは、今まさに取調べが行われているであろう部屋の扉を開けた。

 そこでルークが目にしたものは、グロッキーな顔で燃え尽きたガリアと山のように積まれた丼を前にしてまだ飯をかきこみ続ける容疑者(仮)の姿だった。

「ガリ...局長? 何があったんですか......? これ」

「話しやすいようにって、出前頼んだらさ、すげぇ食うのこの人!」

「俺にしがみつかないで下さいよ! それで、ちゃんとこの人が何なのか聞けたんですか!?」

 泣き顔だったガリアは一瞬で表情を引き締め、局長足るオーラを放ち始めた。ルークもそれに当てられ、自然と背筋が伸びる。

「俺もにわかには信じられんのだが......この男、あのアンバランスの幹部だと名乗っている」

「――なっ......それは確かなんですか!?」

「それおじさんの前で話す事じゃないよね~? だから、ホントなんだって。ホントにアンバランスのメンバーだよ」

「黙れ! 口ではなんとでも言えるだろう!! 俺や局長はそういう偽物を何人も見てきた! 大体本物ならおいそれと捕まるような真似しないだろう! 俺達をおちょくりに来たのか!!」

「信じる信じないは自由だけどさ、君たちをバカにする為に来たんじゃないって事は信じて欲しい。おじさんは、自分の中にあった信念をある男にねじ曲げられ、負けた。だからここへ来たのさ」

 ルークにはこの男が嘘を言っているようには見えなかった。表面的には濁った瞳だが、その奥には確かな真実と決意が込められているような気がしてならなかったのだ。

 それと同時に、心の中にあった情報の紐が、何かと結び付きそうな違和感が襲った。

「――分かった。お前がアンバランスのメンバーだと言う事は信じよう。局長もそれで良いですね?」

「あ、ああ。今医務室に寝かせてあるこの男...サイリスの部下達にも後で話を聞くとしよう」

 今日はもう遅いという事で、サイリスの取調べはまた後日という事になった。


――――


「ふぅ......今日は忙しかったな......ルークもおつかれ」

「ありがとうございます......コーヒーなのに甘い......」

 ガリアは報告書を眺めながら片方のコーヒーをルークへと手渡した。

「五件とも“壊し屋”が犯人とみて間違い無し......だが、どの家の住人も必ず直しに来ると約束されているんだな」

「だが、やった事へのケジメはつけて貰うつもりです。俺は明日、もう一度フサエさんの店へ行ってみます......甘...」

「じゃあ俺は新しく買った女神プリメーラ様の偶像崇拝アイドル活動用想像水着画集でも読んで――」

「テメェも働けやクソオークゴラオィ!」

「ぬわァァァ新作なのに!!? もう破れて見れないィィィ!!!!」

 二人はまた別々の仕事へと戻る。

 ファッ急の夜は、まだまだ長い。

 翌日の朝、自首する前にギルドの広報室へ寄ったサイリスの【アンバランスの幹部自首!】のニュースが世界を駆け巡り、ガリアとルークは更に頭を悩ませる事になるのだが、それはまた別のお話である。
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