【完結】君とカラフル〜推しとクラスメイトになったと思ったらスキンシップ過多でドキドキします〜

星寝むぎ

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秘密をあげる

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「あーあ、帰りたくねえ」
「うん、オレも」

 時計を見ると、もう22時も間近になっていた。さすがに遅すぎる。オレも桃真も分かっているのに、離れがたくて指先を絡ませ合っている。

「はは、嬉しい。……でも、さすがに帰らなきゃな」
「遅くなっちゃったもんね。おうちの人に怒られない?」
「ああ、それなら平気。俺ひとり暮らしだし」
「え……えっ、そうなの!?」

 初めて知った事実に、こんな時間にも関わらず大きな声を出してしまった。慌てて両手で口を塞ぐ。

「高校入ってちょっとしてからな。小学校の頃に親が離婚して、父親と暮らしてたけど中3の時に再婚して。相手の人もいい人だけど、やっぱ気は使うじゃん。それで、ワガママ言って……家賃とかは出してもらってるけど、あんまり甘えたくないからバイトしてる。あ、ちなみに中3の途中からひとり暮らし始めるまでは、みど兄の家に住まわせてもらってた」
「そうだったんだ……」

 全く知らなかった。でも言われてみると、納得がいくこともある。お弁当を持ってきているところは一度も見たことがないし、ずいぶんとたくさんバイトを詰めているなと思っていた。さっきの桃真と翠くんの会話も、合点がいく。 

 桃真はなんでもないことのように、肩をすくめながら教えてくれたけれど。オレには想像もつかないような、つらい思いをしたはずだ。朝や夜はちゃんと食べているのかな。たくさんのことが気になる。 

「そんな顔しなくて平気だからな。俺は気楽にやってるから」

 でも、ほほ笑んだ桃真がオレの髪をぽんと撫でる。こんな時にでもオレを救ってしまうその心がどこまでもかっこよくて、だけどちょっと切ない。

「うん、分かった。あのさ、もしよかったら泊まってく? 本当にもう遅いし……あ、気を使ってるんじゃないよ? 桃真を大切にしたいだけ」

 これは本心だ。桃真がそうやって前を向くのなら、オレは隣で支えたい。

「希色……ありがとな。でも今日は帰るよ。明日もバイトあるし」
「そっか……」
「でも、また今度誘ってくれたら嬉しい」
「っ、もちろん!」
「希色の家の人たちがよかったら、だけど」
「それは絶対平気だよ! すごく喜ぶと思う」
「はは、そうなんだ」

 思いついた提案には、優しさが返ってきてしまった。オレが落ちこまないように、そうしてくれたのが分かる。今夜のところは、オレにできることはなさそうだけれど。今度は、ううん、この先ずっと。大切な人を、大切にしてくれる人を、包みこめるような男にオレもなりたい。 

「じゃあ、またな」
「うん、また。おうちに着いたら連絡してね」
「はは、希色の過保護」
「だって心配だもん」
「ん、さんきゅ」
「うん……あ! ペンギンくん、ストラップにしてもらうの忘れてた……」
「あっ、うわマジだ……」
「話すことたくさんあって忘れてたね」
「だな。今度学校でやろ」
「うん、ありがとう」

 少しずつ後ずさり始めた桃真に手を振る。ああ、もうさみしい。もう会いたい。まだ目の前に桃真はいるのに不思議だ。両想いは幸せだけれど、なんだかさみしさの輪郭も濃くしている気がする。

「希色! おやすみ!」
「おやすみー!」

 大きく振ってくれる手に、オレも懸命に振り返す。もしも桃真も同じようにさみしいなら、少しでもそれがほどけるように。

「あ、帰りながらラインしていいー?」
「はは、うん!」

 夜の道に、桃真が溶けていく。見えなくなってしまった、とため息をついたら、すぐにラインが送られてきた。さすが桃真だ。さっそく返事を返して、オレも家までの道を進む。

 初めて友だちと夕飯を共にして、桃真と翠くんの関係を知って、それから――恋人になった。たくさんのことがあったから、今夜は眠れないかもしれない。だけどそれもいい。明日は今と繋がっていても、桃真がくれた今日の心に、まだまだ触れていたいから。
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