新宿プッシールーム

はなざんまい

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アメリカンカール(1)

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滋はいわゆる『スーパーモデル』の部類に入る

年齢は28歳

マサトの2つ下になる

二人の出会いは中学で、マサトが中3、滋が中1の時、部活棟でいじめられていた滋を、マサトが助けたのがきっかけだ


滋は、当時から首が細くて長いのを『キリン』だの『首長竜』だの言われてからかわれた

その時にはすでに、モデルの端くれみたいな仕事をしていたから、首が長くてきれいであることの必要性はわかっていたが、モデル業界では当たり前にあるべき姿で、誰に褒められるわけでもなかった

自分に必要な【資産】であっても、中学生が、日々の生活の大半を占める学校という場で、毎日のようにいじられ罵られると、自分の価値が地の底まで落ちるように感じる

そんなときに、自分を助けてくれなおかつ「首が長くてきれいだ」と言ってくれたマサトヒトを、誰が好きにならずにいられるだろうか

滋はあっという間に恋に落ち、以来15年以上、マサトに信頼を寄せている


別れる転機は幾度もあった

でもその度に、見えない力に引き戻されてきた

5年前のあの夜もそうだった





滋はショーの後、クラブを貸しきって開かれた打ち上げに参加した

そこにいた、実業家だか経営者の男に色々飲まされて、気づいた時はホテルのベッドの上だった

滋は動揺して、たまたま着信があったマサトからの電話を取ってしまった


『おはよう。体調は大丈夫?』

「マサト…!マサト…!」

滋のただならない様子に、なんとか場所だけ聞き出したマサトは、慌ててホテルに向かった




駆けつけた先にいた滋は、目こそ腫れていたものの、よく見る二日酔い明けの姿だった

「昨日の夜、電話かけたときはマネージーの城田さんが出て、滋が体調崩したからこのホテルに泊まらせますって言ってたぞ。だからそんなに動揺しなくても…」

マサトはベッドの上で震える滋の頭を撫でながら言った

だが、マサトの言葉を聞いた瞬間、滋は誰かに計られたことを確信した

「昨日、城田さんは打ち上げにいなかった…」

滋を撫でるマサトの手が止まった

すぐに婦人科に駆け込んで診てもらったが、膣内はきれいとのことだった

念のためアフターピルを処方してもらった滋は、数日、副反応で辛そうだった




そんな出来事があったにも関わらず、季節はめぐる

マサトと滋は、表面上は前と変わらず仲のいい恋人同士だった

だが、少なくともマサトは、ずっと心に釣り針のようなものが引っ掛かっていて、滋の顔を見るたびにその痛みを飲み込んでいた


それはとても正常な精神状態とは言えなかった

滋を殺して自分も死のう、と何度も思った



3か月くらい経ったある日、久々に外でデートをしていると、滋がふいに立ち止まった

後ろを歩いていた人たちが、怪訝な顔を向けて二人を追い越していった


「滋?」

滋の顔を覗き込むと、夏だというのに氷のように真っ白だった

元から色白ではあるが、血の気がなく、蒼白


一瞬で何かがあったのだと察した



「あの人…」

滋が震える指で前方を指差した

そこにいたのは、高校生くらいの男の子を連れた黒いスーツの中年男性だった
ネクタイが真っ黒だから葬式か何かの帰りかもしれない

「私に、お酒をたくさん勧めて来たひと」


マサトは滋をその場に残し、とっさに男の元に走った

だが、マサトがたどり着くより先に、迎えに来た車が二人の横に止まった

間に合わないと悟ったマサトは、慌ててスマホのカメラを男に向けた

結局男は、マサトに気づかぬまま、車に乗って走り去ってしまった

マサトは立ち止まって、肩で息をした
手元のスマホには、不鮮明な男の横顔が映っていた
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