新宿プッシールーム

はなざんまい

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秋のペルシャ(3)

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「はは…そこを指摘するのはマナー違反でしょ」


タキが上半身を起こすと、行き場をなくした緑人のモノがズルッと抜けた

出した時は固かったのに、空気に触れた途端に萎えた


「本気になってなきゃこんなこと言いませんよ。女の子のなかにはイケないコたくさんいますしね。それにタキさんは、仕事のことだってあるじゃないですか」

ふてくされていたタキの顔に不快感がプラスされた

「プッシールームのこと、どこで知ったの?」

「同僚が教えてくれました」

「ああ」

タキには、リークしたのが誰かすぐにわかった
顔はうろ覚えだが、九やヒヤに絡んでいたアイツだろう

緑人はタキの視線を無視して、枕元にあるティッシュボックスを引き寄せ、外れたゴムをくるんで捨てた

タキも同時に後処理をした



プッシールームで仕事を初めてから、恋人を作ることさえ必要ないと思っていた

エチゼンのことを好きになったように、恋するだけなら自由だし、性欲は仕事で処理できる

だが、店では当たり前の後処理も、ガラス一枚ないだけで、こんなに虚しくなるものかと、久しぶりに思い出した




そこへ緑人が事態を一変させる提案を投じた

「イけない理由が仕事にあるなら、いますぐ店を辞めてください」


タキは瞬間的に怒りがわいてきた
だが、まだ冷静でいられる

「君にそんな権利はないよね?」

「あります。恋人になるんですから」

「俺はならない」

「なるつもりだったくせに」

「君がさっきの演技をスルーしてくれさえすればね!」

タキは怒鳴ってベッドを降りると、大股で冷蔵庫のところに行き、ミネラルウォーターを取り出して飲んだ

「…タキさんは、イッたことがあるんですか?」

「オナニーならいくらでも」

「それはどういうことですか?」

「相手がいるセックスじゃイけないの!昔からそうなんだから仕方ないだろ!だから俺にはプッシールームはなくてはならないところなんだよ。簡単には辞められないし、辞めるつもりもない。それに、イク、イカないは俺の自由だよね?それとも諏訪緑人は、恋人はセックスでイかせてなんぼだと思ってるの?」

タキはひと息で捲し立てると、あっという間にミネラルウォーターを飲み干して、空いたペットボトルをゴミ箱に叩きつけた

「独占欲で店を辞めろとかそういうこと言うんなら、俺たちは縁がなかったんだ。さよならバイバイ」

タキはそう言い放ち、散らかった服を拾い集めた



服を着たら帰ってしまう

シャワーも浴びずに

こんなに怒らせたまま

こんなに誤解されたまま




緑人はベッドの上の下着を拾って、タキの元に持っていった

タキは、涙をためた目で緑人をにらみつけ、ひったくるようにして下着を受け取った

緑人はその手を逃がさなかった

意外にも、タキは抵抗しなかった

これは、タキから与えられた最後のチャンスだと緑人は思った




緑人が伝えたいことはたったひとつ




「イかなくても好きです」

「は?」

緑人は、タキの両手をつかんで引き寄せ、耳元でささやいた


「イけなくて辛いかもだけど、俺にグズグズに愛させて」
「なんで…」

タキの手から力が抜けたのがわかった

緑人はタキの手から服をとると、ドレッサーの椅子の上に置いて、タキの両手の指に自分の指を絡ませた


「タキさんが言ったんじゃん。イク、イカないは本人の自由だって」
「そうだけど…」
「過去に何かあったんだろうなって、察しはつくよ。でもそれは俺の想像だから、本当のことを知っておいてもらいたいなら聞くけど…」


タキは緑人から目を反らし、首を横に振った


「じゃあ、さっきの話なんだけど…俺と…」


その時、タキの目から涙がこぼれた


「さっきの俺の態度見てたでしょ?それでもそんなこと言えるなんて、諏訪さんどんだけMなの…」

緑人はポロポロとこぼれ落ちるタキの涙を指で掬い上げた

「初めて会ったときは、上品できれいな人だなとは思ったけど、物静かで正直タイプじゃなかった」


涙をしゃくりあげながら緑人を見つめるタキが、幼い子供のように見えた


「でも、今日みたいな一面があるって知った時に、俺の心は持っていかれたの。だから…」



緑人はタキを抱き締めた


「あなたがいい。あなたの身体も中身もまるごと愛すから、俺とセックスしてよ」
「うん…!」

※※※※※※※※※※※※※

1時間ほどかけてスローセックスをし、緑人が2回イッたところで二人で布団にくるまって話をした



「プッシールームのこと知ってたのって、もしかして、戸田山さんってひと?」

「そうです」

「九のことを知ってたのかな?」

「そうみたいです。ヒヤさん?のことも」

「あの口説き方サイテーだったよね」

「やっぱりみんな聞こえてましたよね?俺もそう思ってました。でもその後エッチまでいったみたいですよ」

「え?!ヒヤくんと戸田山さん、デキてたの?!」

「知らなかったですか?」

タキの反応を見て緑人は眉を潜めた

「だってヒヤくんは…」

エチゼンの顔が浮かんで、心が痛かった

「デキてたって言っても、てんで相手にされてなかったみたいで、こないだいきなり切られたみたいですけど…」


別れ話が浮上した頃だ
ヒヤは、エチゼンのために壮馬を切ったのだろう
それで納得などできないが、エチゼンは知っているのだろうか

自分が伝えたらどうなるのだろう

やましい考えが浮かんだが、タキにはもう、口を出す資格はなかった

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