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第18話 居場所になる
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「あの子の様子はどうじゃな」
カウンター奥の扉が開き、中からルーブルがゆっくりと顔を出す。
アレクはそちらの方に振り向いて、答えた。
「リルディアが街に連れていきました。一体何を考えているんだか……」
「そうかそうか。街にのう」
ほっほっと笑って、ルーブルはアレクの隣に立った。
「あの子は自分の居場所を懸命に探している最中じゃ。街に連れていったというリルディアの考えは正しかったかもしれんの」
顎鬚を撫でて、フロント全体をぐるりと見回す。
「世界渡りをする者にとっては通り過ぎるだけのこの世界じゃが……あの子にとっては違う。ひょっとしたら、生涯、此処で暮らすことになるかもしれないんじゃ。自分の居場所を見つけるというのは、大切なことなんじゃよ」
ルーブルはゆっくりとアレクを見た。
「アレク。あの子の居場所になってあげなさい」
「僕が……ですか?」
「どうやらあの子は、お前さんのことを慕っているようじゃからのう」
朝に食堂で起きた騒ぎのことは、ルーブルの耳に入っていた。
それだけではない。アレクとミカの間にあった遣り取りのこと。その全てを、ルーブルは知っているのだ。
そして、おそらく。彼は、ミカの胸中にある想いを見抜いている。
それを知った上で、アレクに提案しているのだ。
「お前さんはもう少し、自分のことに興味を持つべきじゃな。仕事熱心なのは旅館としては有難いことじゃが、それだけでは務まらんことも出てくる。感情は、人と接する上で大切なものじゃよ」
「…………」
アレクは自分の胸に視線を落とした。
自分のことに興味を持つ。
それは、一体どういう意味なのだろう? 彼は、そう独りごちた。
「リルディアが付いているのなら、あの子は大丈夫じゃろう。帰ってくるのを楽しみに待つことにしようかの。あの子がどんな経験をして、何を土産に戻ってくるか、楽しみじゃ」
ルーブルは笑いながら扉の奥へと姿を消した。
残されたアレクは、神妙な顔をしながら前を向き、呟いた。
「居場所に、なる……」
彼はミカのことを思った。
彼女のことを考えると胸の奥がざわつくような感覚を覚えるのは、何だろう。
彼女が死にたがり少女だから気になっているだけなのだろうか。
いや、違う。
彼女が笑っているところを見るとほっとするし、嬉しくなる。そういう感情も間違いなく存在することは否定しない。
今も、彼女がリルディアの我儘に振り回されたりしていないか、それが気になっている。
今までは、こんなことなどなかった。
全てのお客様に平等に接し、同様の感情を持ってきた。それなのに。
……僕は、どうしたのだろう。
こんなでは駄目だ。しっかりしろ、アレクサンダー。
アレクは自分の頬をぱしんと両手で叩いて、ホテルマンとしての顔に戻ったのだった。
カウンター奥の扉が開き、中からルーブルがゆっくりと顔を出す。
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「リルディアが街に連れていきました。一体何を考えているんだか……」
「そうかそうか。街にのう」
ほっほっと笑って、ルーブルはアレクの隣に立った。
「あの子は自分の居場所を懸命に探している最中じゃ。街に連れていったというリルディアの考えは正しかったかもしれんの」
顎鬚を撫でて、フロント全体をぐるりと見回す。
「世界渡りをする者にとっては通り過ぎるだけのこの世界じゃが……あの子にとっては違う。ひょっとしたら、生涯、此処で暮らすことになるかもしれないんじゃ。自分の居場所を見つけるというのは、大切なことなんじゃよ」
ルーブルはゆっくりとアレクを見た。
「アレク。あの子の居場所になってあげなさい」
「僕が……ですか?」
「どうやらあの子は、お前さんのことを慕っているようじゃからのう」
朝に食堂で起きた騒ぎのことは、ルーブルの耳に入っていた。
それだけではない。アレクとミカの間にあった遣り取りのこと。その全てを、ルーブルは知っているのだ。
そして、おそらく。彼は、ミカの胸中にある想いを見抜いている。
それを知った上で、アレクに提案しているのだ。
「お前さんはもう少し、自分のことに興味を持つべきじゃな。仕事熱心なのは旅館としては有難いことじゃが、それだけでは務まらんことも出てくる。感情は、人と接する上で大切なものじゃよ」
「…………」
アレクは自分の胸に視線を落とした。
自分のことに興味を持つ。
それは、一体どういう意味なのだろう? 彼は、そう独りごちた。
「リルディアが付いているのなら、あの子は大丈夫じゃろう。帰ってくるのを楽しみに待つことにしようかの。あの子がどんな経験をして、何を土産に戻ってくるか、楽しみじゃ」
ルーブルは笑いながら扉の奥へと姿を消した。
残されたアレクは、神妙な顔をしながら前を向き、呟いた。
「居場所に、なる……」
彼はミカのことを思った。
彼女のことを考えると胸の奥がざわつくような感覚を覚えるのは、何だろう。
彼女が死にたがり少女だから気になっているだけなのだろうか。
いや、違う。
彼女が笑っているところを見るとほっとするし、嬉しくなる。そういう感情も間違いなく存在することは否定しない。
今も、彼女がリルディアの我儘に振り回されたりしていないか、それが気になっている。
今までは、こんなことなどなかった。
全てのお客様に平等に接し、同様の感情を持ってきた。それなのに。
……僕は、どうしたのだろう。
こんなでは駄目だ。しっかりしろ、アレクサンダー。
アレクは自分の頬をぱしんと両手で叩いて、ホテルマンとしての顔に戻ったのだった。
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