23 / 82
冒険者への道
第23話 破壊の夢
しおりを挟む
悲鳴が聞こえる。
肌を炙る空気が熱い。
遠くで人々が逃げ惑っている。
目茶苦茶に破壊された建物の間を、彷徨うように彼女は歩いていた。
「……レオン……何処……?」
彼女の言葉に答える者はいない。
めきめき、とすぐ傍で何かがへし折れる音がして、彼女は驚いてそちらを振り返った。
建物の壁が、砕かれて瓦礫となって地面に散乱していた。
その瓦礫の下に、小さな赤子を抱えた女性が埋もれている。
割れた頭から血を流したその女性は、とうに事切れている赤子を必死に差し出しながら、彼女に助けを乞うた。
「お願い……この子だけでも……助けて……」
その声が、更に降ってきた瓦礫に飲まれて消える。
地面に血が飛び散る。それを目にしながら、彼女は身震いして先を急いだ。
自分の傍にいてくれると言ってくれた、彼の背中を求めて。
ほどなくして、それは見つかった。
大通りが交差する街の中心。そこに、巨大な箱のような乗り物と対峙する彼がいた。
「レオン──」
「アメル! こっちに来ちゃいけない! 逃げるんだ!」
振り向きもせずに、彼は彼女に叫んだ。
箱のような乗り物が、側面に付いた筒の先端を彼へと向けながら車輪を回して迫ってくる。
レオンが、危ない!
彼女は乗り物をきっと睨んだ。
瞬間。
凄まじい威力の爆発が起きた。それは乗り物を粉々に吹き飛ばし、周囲の建物をも巻き込んで、破壊の力を撒き散らした。
爆発に巻き込まれたレオンが瓦礫にぶつかって、倒れる。
四肢が吹き飛んで血まみれになった彼は、ごろりと地面を転がって彼女の方を向いた。
虚ろな眼差しが、ぼんやりと遠くを見つめている。半開きになった口からどろりと赤黒いものが溢れ出て、彼の顎を濡らした。
「いゃああああ!」
彼女は頭を抱えて叫んだ。
自分が、レオンを殺したのだ──責めるように囁いてくる自分自身の意識に心臓を鷲掴みにされたような気になり、彼女はその場にしゃがみ込んだのだった。
「────!」
アメルは跳ねるように上体を起こした。
彼女の体に掛かっていた毛布が跳ね飛んで、包み込んでいた温もりを外へと逃がしていく。
目の前に広がる、夜の帳──静寂に満ちた世界の中で、心臓の鼓動だけがうるさく体の中で響いている。
……今のは……夢……
何で、あんな夢なんか……
……夢、だよね?
アメルはきゅっと唇を噛んで、ベッドから降りた。
レオンが無事なのか、それを無性に確認したかったのだ。
室内履きも履かずに、裸足のまま寝室を出る。
レオンが寝室にいないということは、まだ彼は起きているということに他ならない。リビングで紅茶を飲んでいるか、風呂に入っているかしているのだろう。
「……レオン……」
レオンの姿を求めて、アメルはリビングの中をそっと覗き込んだ。
肌を炙る空気が熱い。
遠くで人々が逃げ惑っている。
目茶苦茶に破壊された建物の間を、彷徨うように彼女は歩いていた。
「……レオン……何処……?」
彼女の言葉に答える者はいない。
めきめき、とすぐ傍で何かがへし折れる音がして、彼女は驚いてそちらを振り返った。
建物の壁が、砕かれて瓦礫となって地面に散乱していた。
その瓦礫の下に、小さな赤子を抱えた女性が埋もれている。
割れた頭から血を流したその女性は、とうに事切れている赤子を必死に差し出しながら、彼女に助けを乞うた。
「お願い……この子だけでも……助けて……」
その声が、更に降ってきた瓦礫に飲まれて消える。
地面に血が飛び散る。それを目にしながら、彼女は身震いして先を急いだ。
自分の傍にいてくれると言ってくれた、彼の背中を求めて。
ほどなくして、それは見つかった。
大通りが交差する街の中心。そこに、巨大な箱のような乗り物と対峙する彼がいた。
「レオン──」
「アメル! こっちに来ちゃいけない! 逃げるんだ!」
振り向きもせずに、彼は彼女に叫んだ。
箱のような乗り物が、側面に付いた筒の先端を彼へと向けながら車輪を回して迫ってくる。
レオンが、危ない!
彼女は乗り物をきっと睨んだ。
瞬間。
凄まじい威力の爆発が起きた。それは乗り物を粉々に吹き飛ばし、周囲の建物をも巻き込んで、破壊の力を撒き散らした。
爆発に巻き込まれたレオンが瓦礫にぶつかって、倒れる。
四肢が吹き飛んで血まみれになった彼は、ごろりと地面を転がって彼女の方を向いた。
虚ろな眼差しが、ぼんやりと遠くを見つめている。半開きになった口からどろりと赤黒いものが溢れ出て、彼の顎を濡らした。
「いゃああああ!」
彼女は頭を抱えて叫んだ。
自分が、レオンを殺したのだ──責めるように囁いてくる自分自身の意識に心臓を鷲掴みにされたような気になり、彼女はその場にしゃがみ込んだのだった。
「────!」
アメルは跳ねるように上体を起こした。
彼女の体に掛かっていた毛布が跳ね飛んで、包み込んでいた温もりを外へと逃がしていく。
目の前に広がる、夜の帳──静寂に満ちた世界の中で、心臓の鼓動だけがうるさく体の中で響いている。
……今のは……夢……
何で、あんな夢なんか……
……夢、だよね?
アメルはきゅっと唇を噛んで、ベッドから降りた。
レオンが無事なのか、それを無性に確認したかったのだ。
室内履きも履かずに、裸足のまま寝室を出る。
レオンが寝室にいないということは、まだ彼は起きているということに他ならない。リビングで紅茶を飲んでいるか、風呂に入っているかしているのだろう。
「……レオン……」
レオンの姿を求めて、アメルはリビングの中をそっと覗き込んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
19
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる